「映画で地域を元気づけたい」 地元愛媛でSDGsな映画製作に取り組む大森研一監督に思いを聞いた

「廃墟ホテルを舞台にしたミステリー」 映画監督・大森研一さん(愛媛県砥部町出身)が、鈍川温泉で撮影した意欲作が話題だ。閉館したホテルを使い、衣装や小道具もリサイクル品を活用するなど、SDGsの考えを徹底的に取り入れた映画作りに挑戦した。

鈍川が舞台の理由とは?あらすじにも注目

物語の舞台となったのは、愛媛県今治市の鈍川温泉だ。

かつてはにぎわいを見せたものの、近年は客足が遠のいていた。そんな中、老朽化したホテルの解体が決まったことから、大森監督は「廃墟となるホテルを使ってホラー映画が撮影できないか…」とひらめいたという。

当初考えていた脚本を書き換え、ホテルを物語の重要な舞台に据えた。ミステリー仕立ての本作のあらすじは、廃墟と化したホテルを訪れたYouTuberが行方不明となり、仲間たちが次々と不可解な出来事に巻き込まれていく。はたして、彼らを待ち受ける運命とは?

観る者の想像力をかき立てる展開が待っている。

本気のSDGs映画作り、衣装も小道具もリサイクル品

ホテルの再利用だけでなく、SDGsへのこだわりは衣装や小道具にも表れている。

製作にあたっては、リサイクルショップ運営会社の協力を得た。「リサイクルで海外に送られる服や美術品を、思う存分使わせてもらいました」と大森監督は語る。

ヘルメットなどの装備品、登場人物が持つ刀に至るまで、可能な限りリサイクル品を活用した。通常、衣装だけで数十万円はかかるが、今回はほぼゼロ円。まさに「究極のエコ作品」だ。

出演者やスタッフともSDGsの意識を共有し、一丸となって取り組んだ。

iPhoneで撮影、わずか1日半で完走

撮影期間の短さにも度肝を抜かれる。本来なら1週間はかかる内容だったが、大森監督自らiPhoneを手に撮影を行うことで、なんと1日半で撮り終えたのだ。

「いつもだと私は監督としてカメラの前に座って『よーいスタート』で演出をして、カメラマンは別にいるっていうのが当然の現場なんですけども、今回はカメラも私自身が回させていただき、みんなで知恵を出し合い、時間のロスを徹底的になくしました」と撮影方法を話す。

iPhoneでの撮影は、大森監督にとっても初の試みだったが、高い機動力を発揮した形だ。

地元への熱い思いとは?大森監督に直撃

鈍川温泉を舞台にしたのは、偶然ではない。大森監督は愛媛県出身で、コロナ禍をきっかけに、地元に足しげく通うようになった。

「まだまだ魅力的な場所がたくさんあります。それを映画を通じて伝えていきたい」と鈍川温泉への思いを話す。

地元の人々と交流を重ねる中で、企画が生まれたという。「SDGsの考え方も、地域の方々と話し合いながら形にしていきました」地元への熱い思いが、新たな映画表現を切り開いた。

過去に宇和島市や砥部町など愛媛県内を舞台に映画の撮影をしてきたが、「地元を撮りたい」という思いはここ数年でより強まったという。

国内外への発信も、地域活性化への期待高まる

気になる完成作品は映画館でおひろめされる。その後は、DVDや動画配信でのリリースも控えている。英語・中国語の字幕をつけ、海外の映画祭への出品も視野に入れているという。

大森監督:
SDGsの精神は、世界中に広めるべきメッセージ。この映画を通じて、発信していきたい。

「ロケ地巡礼で訪れる人が増えれば、地元の魅力を実感してもらえるはず」と、鈍川が“映画の聖地”として注目を集め、地域活性化の起爆剤となることにも期待がかかる。特にホラー映画はロケ地巡礼の人気が高まる可能性があるという。

大森監督の挑戦が、愛媛県の新たな魅力を引き出す日も近いかもしれない。地域に根差した映画作りは、今後も続いていく。

(テレビ愛媛)

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