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20年ぶりの新紙幣発行が始まる7月3日まで2週間を切った。鹿児島県内では経費負担の影響でギリギリまで自動販売機や券売機の改修を迷う事業者が多く、作業は6月に入ってから急ピッチで進められている。原材料費や光熱費の高騰が続く中、「痛手だが仕方ない」「補助金があれば」と嘆きの声が漏れる。一部の更新機材は品薄で、発行日に間に合わないものもあり、しばらくは旧紙幣が手放せなさそうだ。
鹿児島市のラーメン店・麺食堂TaRaには18日の閉店後、自動券売機のメンテナンス業者が訪れ、紙幣識別装置を交換した。しばらくは両替で対応するつもりがったが、客と店双方の負担や不便を考慮し、5日前に急きょ依頼した。同店の中馬弘幸代表(53)は「家族3人で切り盛りしているため両替に人手を取られると困る。新型コロナウイルス前より原材料費や光熱費が2割ほど上がり負担は大きいが、間に合ってよかった」と安堵(あんど)した。
姶良市のゴルフ場・蒲生カントリークラブは、人手不足対策として2022年に990万円かけて自動精算機2台を導入したばかりだった。寿福邦人支配人(66)は「出費は痛手。お客さまに迷惑はかけられない」。計30万円かけ部品交換を依頼している。
新紙幣に悩むのは、交通業界も同じだ。コロナ禍で減少した利用者数は戻らず、4月からは残業規制が強化され運転手も足りない。所有台数も多く、機械更新費がさらなる重みとなる。
「サービス低下を回避するためには替えるしかない」とため息をつくのは南国交通(鹿児島市)の担当者。予算の都合で、9月から乗り合いバス約300台で更新を始める。全車両終了の時期は見通せず、当面は運転手が手作業で両替に対応するか検討中だ。担当者は「国の補助も手厚くしてほしい」とこぼした。
県によると、新紙幣対応に特化した補助金制度はない。国の補助金は、事業効率化やIT化が前提で、申請には賃上げや事業計画の作成など複数の要件もあり、ハードルが高い。
自販機・券売機の設置やメンテナンスを手がけるサンキー(同市)は、昨年3月から全国の取引先約千件に更新の必要性を案内したが、これまで交換したのは3〜4割。ただ新紙幣発行1カ月を切ると一気に問い合わせや発注が増え、一部部品は品薄状態になった。
識別装置交換にかかる費用は1台10万〜30万円。交換で対応できない古い販売機は入れ替えるしかない。満博隆社長(47)は「これを機にキャッシュレス対応の自販機を検討する企業は多い。いずれにせよ本格的に動き出すのは新紙幣の流通後だろう」と予測した。
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