医学的な診断名ではない?!「グレーゾーン」という言葉に惑わされてはいけない間違われがちな言動とは?【心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話】

「グレーゾーン=症状が軽い」は間違い

発達障害の有無や状態について語るとき、よく使われる言葉のひとつに「グレーゾーン」というものがあります。このグレーゾーンとは、発達障害の特性や疑わしい言動はいくつか見られるものの、診断基準を満たしていないために、現時点では確定診断がつけられない状態のことです。

一部には「診断基準を満たしていない」という部分を都合よく解釈し、「つまり、発達障害ではない」、あるいは「症状が軽い(=特性が弱い)」と楽観的に考えてしまう人もいるようですが、それは大きな間違い。そもそも「グレーゾーン」というのは医学的な診断名ではなく、今の段階ではまだ診断名こそつけられないものの、「発達障害の傾向は見られる」という意味で使われるのが一般的です。

最近は発達障害という言葉が広く知られるようになったことで、子どものちょっとした言動や振る舞いから「うちの子、もしかして発達障害かも?」と過剰に反応してしまう親御さんも増えているといいます。よその子と比べて言葉の覚えが遅かったり、感情表現が苦手で喜怒哀楽を表に出すことが少なかったりすると、誰でも「もしかして……?」と不安な気持ちになるものです。このように気になる様子や行動に気づいたときは、それがどういうときに見られるものか普段の生活をよく観察し、きっかけや原因を探ってみましょう。そうして子どもが抱えている問題や困りごとを理解し、悩みを共有することで対処法が見えてくることもあります。

【出典】『心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話』
監修:湯汲英史(ゆくみえいし) 日本文芸社刊

監修者プロフィール
公認心理師・精神保健福祉士・言語聴覚士。早稲田大学第一文学部心理学専攻卒。現在、公益社団法人発達協会常務理事、早稲田大学非常勤講師、練馬区保育園巡回指導員などを務める。 著書に『0歳~6歳 子どもの発達とレジリエンス保育の本―子どもの「立ち直る力」を育てる』(学研プラス)、『子どもが伸びる関わりことば26―発達が気になる子へのことばかけ』(鈴木出版)、『ことばの力を伸ばす考え方・教え方 ―話す前から一・二語文まで― 』(明石書店)など多数。

<この一冊で発達障害の最新事情と正しい知識がわかる!>ここ13年で10倍に増えたとされる「発達障害」。昨今はADHDやアスペルガーといったワードが一般の人たちにも普及したことにより、病院への受診率が増え、自分や子ども、家族に対して発達障害かも、と感じる人たちが増えている印象です。特に近年、「グレーゾーン」や「気になる子」といった発達障害かもしれない人や子どものことをさす用語も一般的に浸透するほど、関心の高いテーマになっています。そんな発達障害について知りたい人に向け、発達障害の正しい知識や最新の情報から、周りのサポート法、対処法を図解とイラストでわかりやすく解説します。本人が気にしている、周りの人も気になるような発達障害の人の言動について、本人はどう考えてそのような行動をとったり、発言したりしているのかなど、物事を考える背景や手順を解説した上で、本人ができる対処法やそれに対する周りのサポート法、心構えを実例も交えて具体的に紹介します。発達障害かもしれないと思っている当事者、知人友人恋人など周囲の人が発達障害かもしれないと思っている人、自分の子どもが発達障害かもしれないと思っている親など、発達障害の知識を広げたい、理解したいと考えている方にぜひ手に取っていただきたい一冊です。

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