地図のゼンリンも「聞いたことがない」 明治から令和まで、地名に五つの元号が集う街 山口市小郡

「昭和通り」と記された踏切看板を見る横山会長

 山口市小郡地区のJR新山口駅北側に本年度中に「小郡昭和町」が誕生し、明治から令和までの五つの元号にちなむ地名が周辺にそろう見通しとなった。各時代に関連する地元の名所を掘り起こし、「元号のまち」をPRしてきた住民は「全国的にも珍しい。活性化の後押しになる」と期待している。

 5月下旬、地域住民や有識者でつくる市住居表示審議会が小郡下郷の一部の住居表示を「小郡昭和町」とする答申書を伊藤和貴市長に提出した。対象は、同駅北を東西に走る県道江崎陶線(昭和通り)の南側エリア約2万平方メートル。周辺には小郡明治、小郡大正町、小郡平成町、小郡令和の地名が既にある。今後、市議会での議決などを経て、来年2月ごろに正式な地名となる。

 国土地理院は「年号の地名に関しては特に調査しておらず、珍しいかどうかの評価もできかねる」とするが、同院ウェブサイトの「地理院地図」の検索では、令和を含む5元号の地名がそろう地区は他に確認できない。地図大手ゼンリン(北九州市)は、5元号がそろう例は「他に聞いたことがない」と説明する。

 小郡地区には元々、明治通り、昭和橋など元号に関係する名称の道路や施設がそろっていた。住民は2007年の小郡平成町の誕生を機に、元号を生かした地域のPRを模索し始めた。11年には住民団体のおごおり地域づくり協議会が明治から平成までの4元号に関係する地元の歴史スポットを紹介するマップを作成した。住民の要望で21年に小郡令和、22年には小郡明治、小郡大正町の住居表示が実現。同年には同協議会が令和の項目などを追加したマップの改訂版を発行し、地区の各世帯に配って街歩きイベントも開いた。

 再開発で駅周辺の街並みが変わり続ける中、同協議会の横山洋之会長(71)は「元号地名は住民が小郡の歴史に興味を持つきっかけになる。昭和だけ地名としては抜けていたので、そろうのは喜ばしい」と声を弾ませる。実は、周辺には小郡維新町やKDDI維新ホールもある。「明治維新を幕開けに、各時代を感じてもらえるような企画があれば面白い。今後も地名を生かした活性化のアイデアを練っていきたい」と張り切っている。

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