ファンタが5年ぶりのフルリニューアルで目指したこと

by 編集部:湯野康隆

5年ぶりにリニューアルした「ファンタ グレープ」と「ファンタ オレンジ」

日本コカ・コーラは、4月8日にファンタブランドの基幹商品となる「ファンタ グレープ」と「ファンタ オレンジ」の味わいを5年ぶりにリニューアルしている。1958年に日本に上陸したロングセラー商品がどのように進化したのか、ブランドマネジャーの中西瞳氏に話を聞いた。

――まず、今回のリニューアルの背景を教えてください。

中西氏:当社ではさまざまな調査を行なっていますが、グレープとオレンジでそれぞれ飲まれているシーンやニーズが違うことが分かってきました。グレープは、甘さで疲れた自分を癒やしたい、オレンジは柑橘系なので、スポーツの後に飲むなどスッキリしたいというニーズが大きくなっています。

今回のリニューアルでは、こうした消費者の方々の声に耳を傾け、基幹商品のグレープとオレンジの処方をアップグレードしました。今まで以上にグレープやオレンジの風味を感じられる、よりファンタらしい、フルーツ感が感じられる味わいを目指しました。

ブランドマネジャーの中西瞳氏

これにあわせて、パッケージデザインの変更も行ないました。よりポップで、今のトレンドにあった楽しくワクワクするようなデザインになったかと思います。

――こうしたリニューアルはグローバルでの取り組みになるのでしょうか?

中西氏:今回の味のリニューアルについては日本独自となります。日本の消費者の皆さまにおいしく飲んでいただけるように改良しております。

――350mlと700mlのペットボトルに期間限定で採用された「香り付きラベル」も面白いですね。

フルーツのイラストをこすると香りがする

中西氏:フルーツのイラストが描かれた部分を指でこすると、グレープやオレンジの香りが感じられるようになっています。キャップを開けた時や飲んだ時だけでなく、パッケージを手にした時にもファンタの世界観を感じていただきたいと考え、採用することにしました。

――シールタイプのものはたまに見かけますが、ペットボトル商品のラベルとして採用して量産するのは大変だと思うのですが。

中西氏:開発は苦労しました。指定の場所に香りのカプセルを載せて印刷しているのですが、ペットボトルに巻きつけるところから、お店に配送して棚に並べるところまで、全工程にわたって香り移りが発生しないように配慮しなければなりませんので。

――単にグレープやオレンジの香りということでなく、ちゃんとファンタ グレープ、ファンタ オレンジの香りになっているのに驚かされます。コストの問題もあると思いますが、標準仕様にするのは難しいのでしょうか。

中西氏:今後どうするかについては初速の反応を見ながら決めていきたいと考えています。

ファンタ グレープのラインアップ

――ファンタのようなフルーツフレーバーの炭酸飲料の市場にはどんな課題があるのでしょうか。

中西氏:消費者の皆さまの健康意識も高まっている一方で、消費者の方のお声を聞くと「楽しみたいときはおもいっきり楽しみたい」というお声もいただいております。そんな消費者の方のニーズに応えるべく、今年の春からは新しい「#好きにやってよし」というキャンペーンを立ち上げております。また5月27日には「What The Fanta」シリーズ第3弾となる「ファンタ ミステリーレトロ」も発売しました。こちらも味当てをお楽しみいただける製品です。

ファンタ オレンジのラインアップ

――今回はブランドメッセージとして「#好きにやってよし」を掲げていますが、ターゲットはやはり若者になるのでしょうか。

ブランドメッセージは「#好きにやってよし」

中西氏:もちろん若年層をターゲットにしているのですが、実は大人もハッとさせられるメッセージなんです。自社調べではありますが若年層を中心に、本当に自分がやりたいことは後回しに、「やらなきゃいけないこと」を優先している傾向が分かっております。「ファンタ」はSNSが普及する中で、日本人は常にソーシャルプレッシャー下にある状況とも言えるのではないでしょうか。

一方で「ファンタ」を飲む時は自分の欲求を解放できます。それをまじめに「欲を解放せよ」とストレートに言うのではなく、ファンタらしい捻りを入れることで、気が楽になるようなメッセージの届け方をしたいという気持ちを込めました。

「ファンタ」って、ちょっと楽しくて、明るい元気なブランドです。そんなアイデンティティを軸に、常に若い方を応援するブランドでありたいですし、今年で66年目を迎えるブランドですから、あらゆる世代に受け入れられるブランドとして、時代にあわせて変化し続けていきたいですね。

――ありがとうございました。

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