イスラエル、ガザ空爆で戦争関連法に違反の疑い 国連が報告書

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は19日、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの空爆について、民間人や民間インフラの保護を義務づける戦争法に組織的に違反している可能性があるとする報告書を公表した。

国連は、ガザで昨年10月9日~12月2日にあった「象徴的な攻撃」6件について調べていた。住宅、学校、難民キャンプ、市場が空爆の被害を受けたものだった。

その結果、少なくとも218人が殺害され、民間の建物などが破壊されたことを確認したとした。

国連欧州本部(スイス・ジュネーヴ)のイスラエル代表部は、この調査を「事実、法律、方法の面で欠陥がある」として、結果を認めないと主張。イスラエル国防軍(IDF)のガザでの活動は国際法に従ったものだとし、ハマスが民間人の中に不法に紛れ込んでいると非難した。

6件の空爆を検証

国連が調べたのは、ジャバリアの市場(昨年10月9日)、ガザ市の7階建てビル「Taj3タワー」(同10月25日)、ジャバリア難民キャンプ(同10月31日)、ブレイジ難民キャンプ(同11月2日)、ガザ市のアル・ブラク学校(同11月10日)、ガザ市のシュジャイヤ地区(同12月2日)の6件の空爆。

報告書は、各攻撃で15~105人が殺害されたのを確認したとしている。

また、これらの空爆でイスラエル軍は、GBU-31(重量907キロ)、GBU-32(同453キロ)、GBU-39(同110キロ)の各爆弾を使用したとしている。

国連は、これらの爆弾は数階分のコンクリートを貫通させる目的で使われることが多いと報告書で説明。「標的にされた地域の人口密度を考えると、こうした兵器の使用は無差別攻撃になる可能性が高い」、「これら広範囲に影響を及ぼす爆弾は、ガザの人口密集地では特定の軍事対象物だけを狙うことはできず、影響を限定することはできない」とした。

また、6回の空爆のうち5回で、事前に具体的な警告は出ていなかったと指摘。特定の地域に指揮官1人、戦闘員数人、軍事目標数個が存在したとしても、「その地区全体が軍事目標になるわけではない」とした。

フォルカー・トゥルク国連人権高等弁務官は、「民間人への危害を回避するか、少なくとも最小限に抑える戦争手段と方法を選択するという要件が、イスラエルの空爆作戦では一貫して違反されているもようだ」と主張。イスラエルに対し、6件の空爆に関する調査とその結果の公表、責任者の追及、賠償などを求めた。

イスラエルは報告書を批判

国連欧州本部のイスラエル代表部は今回の報告書について、「後知恵と調査方法において偏見が見られ、法的評価の信頼性に影を落としている」と批判。イスラエルだけ非難し、ガザのイスラム組織ハマスのテロリストたちをいっそう守るのが唯一の目的だと反発した。

また、報告書の結論はハマスが公表した情報やデータに基づくものだと主張。イスラエル軍が作戦遂行時にどう配慮しているか考慮せず、ハマスの戦術の問題に言及してもいないとした。

(英語記事 Israeli strikes on Gaza may have violated laws of war - UN report

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