陸上自衛官候補生の訓練に密着 深さ1メートル以上の塹壕を手掘りで「大切な人守れる自衛官に」 福岡県

この春、陸上自衛隊小倉駐屯地に入隊し自衛官を目指す10代、20代の候補生ー。

第一段階の仕上げとなる総合訓練を取材しました。

別府湾を遙かに望む大分県の十文字原演習場。

見渡す限りの原野が広がる演習場で訓練を行っているのは、陸上自衛隊小倉駐屯地の自衛官候補生です。

小倉駐屯地にはこの春、18歳から23歳までの21人の候補生が入隊しました。

◆陸上自衛隊小倉駐屯地 吉田直生候補生(18)
「不安はありますが、今からの教育で人の役に立てる自衛官になれるよう頑張ります」

入隊から2カ月半、集団行動や銃の取扱いなど自衛官としての基礎を学ぶ前期の教育課程が終盤に入り、候補生は仕上げの総合訓練に臨んでいました。

この日、行われていたのは「掩体構築訓練」。

体を隠して防御や警戒に当たるための塹壕を掘る訓練です。

◆陸上自衛隊小倉駐屯地 田伏正幸・副教育隊長
「要は穴を掘ってその中で銃を構えて射撃をする。自分の身を守りながら、射撃もするという形になります。いちばん大事なのはやはり自分たちが生き残れるかどうか。自分の身を守れるかどうかが、いちばん大事ですね」

T字型に掘る掩体壕(えんたいごう)は深さ1メートル以上で、ひと班7人が2つずつ、手掘りで掘り進めます。

高校時代はバレー部で鍛えたという吉田候補生ですが、使う筋肉が全く違います。

◆陸上自衛隊小倉駐屯地 吉田直生候補生
「体力的にはきついですけど精神面で続けています。(掩体構築は)自分の身を守るためにも、仲間を守るためにも、とても大事」
(Q.仲間や命を守ることを考えるようになった?)
「とても命のことについて、考えるようになりました」

掩体構築は壕を掘るのと同時に、周囲からの銃弾を防ぐ土の壁「掩護土層(えんごどそう)」を作らなければなりません。

◆陸上自衛隊小倉駐屯地 野見山剛・区隊長
「実弾が飛んできたらここら辺とかさ、前に全然土無いけどさ、ここら辺も(弾が)飛んでくるわけよ。全くないやん。ここ、ここもさ。区隊長のキックが銃弾だとしたらバーン!キックでこんだけ(土が)飛ぶんぞ。ちゅうことは銃弾だったら?」

◆自衛官候補生
「貫通します」

◆陸上自衛隊小倉駐屯地 野見山剛・区隊長
「ちゅうことは、ここ守ってるヤツは?」

◆自衛官候補生
「死にます」

◆陸上自衛隊小倉駐屯地 野見山剛・区隊長
「頑張れ」

◆自衛官候補生
「頑張ります」

防御用の土壁を踏み固め、相手に見つからないよう草をかぶせて擬装すれば概ね完成です。

現代の若者気質に合わせて教え方は変わったようですが、自分や仲間の命を守りながら国を護るという教育の基本は変わりません。

◆陸上自衛隊小倉駐屯地 吉田直生候補生
「自衛隊の仲間は仕事をする上で、命を預け合う仲間なのでとても大事な存在。自分自身まだまだ未熟ですが、これから全力で頑張って大切な人を守れる自衛官になりたいと思います」

入隊以来、1人も欠けることなく訓練を重ねている21人の自衛官候補生ー。

7月からは現場の部隊に配属され、より実践的な後期の教育課程に進みます。

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