音声を多言語表示する「透明ディスプレイ」を都内設置へ デフアスリート・山田真樹が実演

東京都は、音声を多言語で表示する透明ディスプレイの設置を2024年6月14日より開始した。同日、都庁舎総合案内にてデモンストレーションが行われ、小池百合子都知事、デフアスリートの山田真樹選手が参加した。

都は、『東京 2025 世界陸上』及び『東京 2025 デフリンピック』を契機に、ユニバーサルコミュニケーションの取り組みを進めている。その取り組みの一環として、都庁舎をはじめとした38箇所の都有施設に透明ディスプレイが設置されることとなった。

透明ディスプレイは、会話をリアルタイムに文字に変換し、ディスプレイに投影するとともに、32カ国語の多言語表示が可能。さらに、声を発することが難しい聴覚障害者は、付属のタブレットにより文字入力を行い、ディスプレイに表示することができる。

小池都知事は「来年の2025年、世界陸上とデフリンピックという大きな大会をこの東京で催すこととなっております。そして、ユニバーサルな環境の中でこの大会を行っていく、様々なテクノロジーの進化があります。 そこには障害があるなしにかかわらず、また言語の壁を超えるという、いろんな意味がございます。本日は山田選手に来ていただきました。耳が不自由な方でもコミュニケーションが取れる、そんな大会で世界に発信をしていきたいと考えております」と挨拶。続けて、山田選手は通訳を通じて手話で「今日から透明ディスプレイが東京都の様々な施設に納入されるということで、こういったコミュニケーションの選択肢が広がるということはいい機会だなと思っております」と思いを伝えた。山田選手は2017年の『デフリンピック』でも金メダルを獲得するなど、デフ陸上をリードする選手で、来月に台湾で開催される『世界デフ陸上競技選手権』での活躍も期待されている。

透明ディスプレイのデモンストレーションでは、山田選手がタブレットを使い運転免許センターの場所を訪ねたのに続いて、外国人との英語でのデモンストレーションも行われ、どちらも案内担当とのスムーズな会話が成立している。山田選手は、「思った以上にスムーズに字幕が表示されて、こういったコミュニケーションはとても良いなと思いました。ろう者だけではなくて、観光でいらっしゃる外国人の方々にも言語の壁を超えてコミュニケーションが取れるということで、今後使う機会が広がっていけばいいなと思っております」とコメント。小池都知事は「これからますます高齢化が進んでいくということを考えますと、耳が遠くなる場合も、こうしてイノベーション、技術の力によって、社会の中で自由に活動ができるということが確保できていくと思います。これからも技術の進歩は目覚ましいものがあります。インクルーシブな東京を世界へと発信していきたいと思っております」と透明ディスプレイからの手応えを話した。

デモンストレーションの後には、山田選手への囲み取材が行われ、改めて透明ディスプレイを使っての感想に「私は普段からコミュニケーションで壁を感じるということが多いです。透明ディスプレイを利用してみて、筆談だけではなく、こういった機器を使って東京都からサポートいただけるということ。そういった環境に恵まれているなと思いました。今日をきっかけにたくさんの方に使っていただけるといいなと思っています」と答えていた。

(取材/文=渡辺彰浩)

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