将棋・伊藤新叡王 藤井八冠の独占止め「一つ結果を出せた」 激戦の番勝負に「運が良かった」「勝因はちょっとわからない」

 感想戦を行う伊藤匠新叡王(撮影・西岡正)

 将棋の藤井聡太叡王(21=竜王・名人・王位・王座・棋王・王将・棋聖との八冠)に伊藤匠七段(21)が挑戦した第9期叡王戦5番勝負第5局が20日、山梨県甲府市の「常磐ホテル」で指され、156手で伊藤七段が勝利。藤井叡王は対戦成績2勝3敗でタイトル戦番勝負23戦目にして初の敗北となり、七冠に後退した。

 同学年対決を制して藤井八冠の全冠独占を崩した伊藤七段は終局後、あくまで淡々とした口調で取材に対応。シリーズを振り返って「全体的に苦しい将棋が多かったと思うので、まあ、運が良かったかなと思っています」と話した。

 第5局は振り駒の結果、後手番に。角換わりから右玉に構え、序盤から藤井叡王の猛攻を受け止める展開が続いた。一時は劣勢とみられる局面もあったが、巧みな指し回しで手番を奪うと、鋭い反撃の手順を繰り出し、相手の緩手を誘って逆転した。

 形勢が二転三転する激戦を制し、「途中はこちら側だけ終盤戦のような感じになってしまって、自信はなかったけど、何とか辛抱強く指すことができたかなと思います」とポツリ。「このタイトル戦でずっと苦しい戦いが続いていたので、一つ結果を出せたことはよかったと思います」と安どの息をついた。

 藤井叡王とは同学年で幼少期から対戦経験があるが、プロ入り後は叡王戦第1局まで11連敗を喫しており、大差を付けられた。ようやく一矢報いたことには「藤井八冠戦は苦しい戦いがずっと続いていたので、ひとつ結果を出せたという気持ちです」と心境を吐露。そそれでも「今シリーズもやはり苦しい戦いが多かったので、勝因についてはちょっとわからないというところですね」とあくまで謙虚に語った。

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