【レポート】the superlative degree、初ライヴにロックバンドの決意と予期せぬリアル

▲章人(Vo)
<THE MUSIC - GreeN Music 15th ANNIVERSARY ->と題されたライヴイベントが6月2日(日)、東京・新宿ReNYで開催された。出演はZIGGY、SEX MACHINEGUNS、the superlative degree。メンバーそれぞれに交流を持つ3組だ。同イベントより、本格始動ライヴとなったthe superlative degreeのステージの模様をお届けしたい。

瞬刻に生きながら、向こう見ずなくらいに前のめりな姿勢をみせるロックバンドが、今ここに新しき一歩を踏み出すことになった。

「日本ノ皆サン、初メマシテ。私達ハ、the superlative degreeト言イマス。ドウゾヨロシク!」──章人

今宵、新宿ReNYにて開催された<THE MUSIC - GreeN Music 15th ANNIVERSARY ->において、オープニングアクトのLalaに次いで新人バンドらしく一番手の任を担った彼らは、まず初音源となるEP『導火』から強い衝動が音として具現化された「玉響」を場内へと初投下。そのうえでフロントマン・章人から発されたのが、先ほど記述したナゾの外タレ風MCだったのである。だが、ひと呼吸を置いてからはニュートラルなモードに切り替わり、以下のような言葉が続けられることに。

「今日、ウチは初ライヴです。ここからどこまで行けるか全然わかんないし、別にそんな大層なことをやろうとは思ってないですけど、せっかくまたこの歳で新しいことやり始められたんで、みんなとなるべく長く付き合っていけたらいいなと思います」──章人

▲誠一朗(G)

▲YUJI(G)
あらためての事実確認をしておくと、the superlative degreeとは2023年末に始動したバンドであり、各メンバーともキャリアとスキルは持っている一方で、ヴォーカリストの章人は約14年、ベーシストの宏之は約19年引退状態、ギターのYUJIも10数年表舞台には居なかったところが特筆すべき点となろうか。昨今は中島卓偉をはじめとしたサポートドラマーとしての活動が多かったSHINGOと、W.A.R.P.やMother Gooseの一員として継続的に長年動いてきている誠一朗は別として、客観的にみるとthe superlative degreeの出戻りバンドマン比率はなかなかの高さを誇る、というわけだ。

しかしながら、それだけの長い月日を経ても敢えて今さらステージに立ちたい、音楽を表現したい、と強く志した彼らの中に渇望と切望が渦巻いていることは想像に難くなく、そんな彼らの熱き心情はこの夜ステージ上で発される説得力のこもった音や、躍動感あふれるパフォーマンスにそのまま託されていたと言っていい。

▲宏之(B)

▲SHINGO(Dr)
また、歌詞中の“すべての命に終わりや限りが有るからね”というフレーズがやけに刺さってくるEPのタイトルチューン「導火」では、SHINGOの叩き出す頼もしい律動と、章人の紡ぐ魂のこもった歌声がぴったりとシンクロし、揺るぎない“縦ライン”を生み出していた様子もうかがえ、この点からはthe superlative degreeというバンドの特性と強みを色濃く感じることもできた。

過去を振り返れば、かつてのALL I NEEDでも、2023年に久しぶりに復活したHUSHでも、章人がヴォーカリストをつとめてきたバンドはいずれも彼が万事を牽引する立場であったことを思うと、SHINGOとのタッグを根幹とするthe superlative degreeからはこれまでにないものが生まれてきそうな可能性をひしひしと感じるのだ。

ちなみに、始動から間もないこともあって、まだオリジナル曲が3曲しかない彼らは、今回のライヴで章人がBEAUTY MANIACS時代に作った「fly」や、2008年にacalli名義でリリースした曲をEP『導火』にてリメイクした「UNIVERSE」、そしてHUSHのライヴ定番曲「パズル」もプレイしてみせ、それはそれで“以前からのファンで、章人の復活を待ち望んでいた人々”をおおいに喜ばせていたのも事実である。

ある意味、章人はアーティストとしての活動を始めてから今に至るまで、一貫した“三つ子の魂”を音楽として体現してきた人物で、時代が変わろうと、ブランクがあろうと、彼の内面にある反骨精神や、鋭い感性は何ひとつ変わってはいない。むしろ、ここ数年においては親しかったhiro(te'のギタリストであった故・黒田洋俊氏。2021年11月30日逝去)や、敬愛していたISSAY(DER ZIBETのヴォーカリスト。2024年8月急逝)の死に接したことで、章人は「命ってこんなにも儚いものなんだ」と現実を知り、そのうえで「もう“いつかまた”みたいなことはしないほうがいいって強く思った」ことを切っ掛けにして、章人の中の音楽に対する衝動は、おおよそ抑え切れないところでブーストされることになった、ということらしい。章人が14年の歳月を経て再び歌い出したのには、明確過ぎる理由があった。今ならまだできることはあると気付いた章人が、意を決し起ち上げたthe superlative degreeが、向こう見ずなくらいに前のめりな姿勢を持っているバンドなのは当然のことなのだろう。

「今日はオープニングアクトにLalaさん、俺らのあとにはSEX MACHINEGUNS、そしてZIGGYさんと素晴らしいイベントになってます。せっかくなので、みなさん最後まで楽しんでいってください!」──章人

なお、今回の<THE MUSIC - GreeN Music 15th ANNIVERSARY ->を仕切っていたのは「14年間、毎月のように電話とかメールで“章人さん、帰ってきてください”ってずっと連絡くれてた」というイベンター・GreeN Music。the superlative degreeの船出を祝うための盛大なる祝宴として、章人とは公私ともに親睦が深いANCHANG率いるSEX MACHINEGUNS、20年前にもタイバンしたことがあったというR&Rスター・ZIGGYをGreeN Music側がキャスティングしてくれていたというのは実に胸熱な逸話ではないか(しかも、トリを飾ったZIGGYの終演後には出演アーティストが揃い踏んでのセッションが行われ、ZIGGYの名曲「GROLIA」を歌うという最高のサプライズまで用意されていた)。

かくして、今回の初ライヴでthe superlative degreeが最後に聴かせてくれたのは“いつか死ぬ前に”という、なぜこのバンドが始まったかを象徴的に表わす歌い出しが耳に灼きつく「アイデンティティコード」。そこから彼らの決心と意思を汲み取ったのは、何も筆者だけではなかったはず。

…ただ。この初ライヴを終えた直後も直後の6月5日に、ギタリスト・誠一朗がバンドから脱退すると公式にインフォメーションがされることになったため、どうやらこの5人でのthe superlative degreeとしてのライヴはこれが最初で最後になってしまったようだ。誠一朗脱退については、様々な面からメンバー当人たちも、“いつかは…”と予感していたそうだが、“今かよ!”というのが正直なところのよう。

さすがにこのタイミングでのソレはないのでは?という疑問や、残念な気持ちもないわけではない。とはいえ、これは酸いも甘いも噛み分けた男たちが総意として決断したことであり、向こう見ずなくらいに前のめりな姿勢をみせるロックバンドの動きとしては、予測不能なくらいがデフォルトとも思える。ここはいっそのこと、the superlative degreeの持つ底力とやらを我々に見せつけてもらうとしよう。瞬刻に生きるロックバンドのリアルタイムショーは、きっとここからが本番だ。9月20日には新宿LOFTでのイベントも決定している。

取材・文◎杉江由紀

■<THE MUSIC -GreeN Music 15th ANNIVERSARY->2024年6月2日(日)@東京・新宿 ReNY セットリスト

▼the superlative degree
1. 玉響
2. fly
3. 導火
4. UNIVERSE
5. パズル
6. アイデンティティコード

■<~新宿LOFT歌舞伎町移転25周年記念公演~ the superlative degree presents「玉響」>

2024年9月20日(金) 東京・新宿LOFT
open17:30 / start18:00
出演:the superlative degree / defspiral / CLOSE / dieS
▼チケット
前売り5,000円 / 当日5,500円(1D別)

■1st EP『導火』

【CD】
2024年6月2日(日)CDリリース
HCCD-0001 ¥2,000+税
※LIVE会場にて販売
【配信】
2024年5月21日(火)配信開始
配信リンク:https://linkco.re/2qZMXv5Y
※Apple Music、Spotifyなどの各種音楽サービスで順次配信開始
発売元:hurt chord
▼収録曲
01. 玉響
02. アイデンティティコード
03. UNIVERSE
04. 導火

関連リンク

◆ the superlative degree オフィシャルサイト
◆ the superlative degree オフィシャルX (旧Twitter)

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