空間ビデオを撮れるってどういうこと? XREALの新デバイス「Beam Pro」を体験

By 山本 敦

スマートグラスの「Air」シリーズを展開するXREALが、空間ビデオ・空間写真を撮れるデュアルカメラを内蔵するXRコンテンツプレーヤー「XREAL Beam Pro」を8月6日に発売します。3万円台から買える空間コンピューティング対応の注目ガジェットです。XREALが開催した新製品発表会で実機を体験してきました。

↑XREALの“スマホのようなXRコンテンツプレーヤー”「Beam Pro」を発売前に体験してきました

カメラ・ディスプレイを搭載する空間コンテンツプレーヤー

XREALの代表的な製品といえばスマートグラスのAirシリーズです。USB-C DisplayPort互換のスマホやタブレットなど、USB-Cケーブルで接続したデバイスの映像を透過型OLEDマイクロディスプレイに映して、実風景の前に浮かび上がる映像の視聴を楽しめます。

USB-C DisplayPortと互換性能を持たないデバイスもAirシリーズに接続して楽しめるように、XREALは媒介となる「Beam」というポケットサイズのアダプターを発売しています。その進化形である「Beam Pro」は、Android 14にベースとした“スマホのようなコンテンツプレーヤー”です。背面に搭載するデュアルレンズカメラで、Airシリーズによる立体視が楽しめるビデオや写真を撮り、Beam Proの本体ストレージに記録。USB-Cケーブルで直接つないだAirシリーズが大画面スクリーンになります。

↑背面にデュアルレンズカメラを搭載
↑ディスプレイのサイズは6.5インチ。Android 14を搭載しています。Google Playストアからアプリをダウンロードできます

Beam Proの画面は6.5インチのタッチディスプレイ。また、クアルコムのモバイル向けSoCである「Snapdragon 6 Gen 1」をベースにカスタマイズした「Snapdragon spatial companion processor」が、快適動作を実現しています。

データ通信はWi-Fi専用。スマホのような形をしていますが、eSIMも含めてSIMカードによるモバイル通信には対応しません。

↑ユーザーインターフェースのイメージ。空間にアプリのアイコンや大型スクリーンが浮かび上がるように見えます

スマホと変わらない操作感。ただし立体視のビデオ・写真はコツが必要

XREALが開催した新製品体験会では、Beam Proで撮影した動画・写真のほか、Netflixのビデオ作品、人気コミック「塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い@comic」のキャラクターが登場するXRコンテンツを視聴しました。

最初にカメラで空間ビデオ・空間写真を撮りました。Android 14の上に独自の「NebulaOS」を走らせて、NebulaOSに最適化された専用カメラアプリを使ってビデオと写真を撮影します。

↑NebulaOS上で立ち上がる専用カメラアプリで空間ビデオ・空間写真を撮ります

本機で撮れる空間ビデオ・空間写真は横画面のみで、ビデオの最大解像度はフルHD/60p・30p。3Dビデオの記録方式はAirシリーズが対応するSide by Side(SBS)、ファイルのコンテナ形式はMP4になります。Beam Proで撮影した空間ビデオは、同じファイル形式をサポートするヘッドセットでも視聴ができそうです。

Beam Pro本体のサイズやアプリの操作はまさしくスマホのカメラを構えるような感覚です。ただ、カメラにズーム撮影の機能がないので、カメラを構えたまま被写体に自ら近付いて撮ります。1〜2.5mの範囲で撮影した被写体が最も立体視に適していますが、遠くの風景はあまり立体視に向いていません。

デュアルレンズカメラは超広角14mm、F2.2。ユニットの配置間隔を人間の左右の目の距離に近い50mmとしており、空間ビデオ・空間写真のリアリティを高めています。

続いて撮影した空間ビデオ・空間写真をXREAL Air 2 Ultraで視聴しました。動かない被写体を撮影すると自然な立体感が得られます。一方、カメラの前で次々にポーズを変える人物を被写体にして、Beam Proを構えるユーザー側もゆっくりと動きながらビデオを撮ると、前後の奥行き感が時折崩れて不自然に見えることもありました。

↑カメラにズーム機能がないので、構えたまま被写体に近付いて立体感のあるビデオ・写真を撮影します

2つのカメラの画素数は5000万画素。空間ビデオ・写真は記録されるファイルのサイズが肥大しがちですが、XREALは128GB/256GBの内蔵ストレージのほかに、microSDカードを追加するとストレージを最大1TBまで拡張できます。身の回りのいろんな被写体を空間撮影しながら経験を積めば、XREAL Airシリーズで美しく立体視できるコンテンツを安定して記録できるようになると思います。

↑カメラは横向きが基本。タテ向きの立体コンテンツの撮影には対応していません

XRエンターテインメントを「現実的」に感じさせるデバイス

XREAL Air 2 Ultraのコンテンツプレーヤーとしての評価ですが、Netflixの2D動画コンテンツや、3DCGで制作された“しおあま”のコンテンツについては視聴感が安定していました。XREAL Airシリーズと一緒に、持ち運びも自由自在なコンテンツプレーヤーとしてBeam Proの魅力が実感できました。Netflixのコンテンツなどをストレージにダウンロードして、飛行機の中で快適にオフライン視聴が楽しめると思います。

↑XREAL Airと有線接続は必要になりますが、軽くてスリムなスマートグラスは「現実的」なXR対応デバイスであると言えそうです

さらにBeam ProにBluetoothヘッドホン・イヤホンをペアリングできるので、屋外でも「音もれ」を気にすることなくコンテンツを視聴できます。XREALは、Beam ProにBluetooth対応のキーボードやマウスをペアリングすれば「空間コンピュータ」としてマルチな使い方ができることもうたっています。本機に搭載するプロセッサーが音を上げることなく、どこまで重いタスクをこなせるのか試してみる価値がありそうです。

Beam Proは3万2980円(税込)から気軽に買える価格も現実的です。XREAL Airシリーズを所有するユーザー、またはこれから買うことを検討している方は、Beam Proを買えば自身で撮った空間ビデオ・空間写真のコンテンツも増えて、XRエンターテインメントの身近さに触れられるはずです。

Beam Proの主なスペック

OS:Android 14ベースのNebulaOS

チップセット:Snapdragon spatial companion processor

メモリー:6GB/8GB

ストレージ:128GB/256GB(microSDカードを利用して最大1TBまで拡張可能)

カメラ:50万画素リアカメラ×2、BMPフロントカメラ×1

バッテリー:4300mAh

サイズ:162.84mm×75.55mm×10mm

重量:約208g(バッテリー含む)

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