『白タク』横行の人気観光地 日本に来る前に「アプリ決済」で摘発も困難 タクシー業界は大打撃

外国人観光客の増加と共に観光地で問題となっているのが、いわゆる「白タク」だ。取材を進めると日本の観光地や産業が受ける打撃と、摘発の難しさが見えた。

■京都・嵐山で「白タク」対象の検問実施

京都府警:白タクの人が多い言うて、チェックしてるんです。

20日、警察や行政が京都を代表する観光地・嵐山で行った検問。

対象になっているのは、営業許可を得ずに乗客を乗せて代金を得る、いわゆる「白タク」とみられる車両。

京都府警:誰を乗せているんですか?
ドライバー:親戚です。

ドライバーは親戚を乗せているというが、車の後部座席には、観光客を空港などで出迎えるボードのような物が載っていた。

京都府警:白タクの旅客運行は違法であり、危険ですいうことで…。

■観光地を悩ませる「白タク」行為 タクシー業界にとっては死活問題

コロナで落ち込んだ観光客もすっかり戻り、いま日本各地の観光地でこの「白タク」行為は、悩みの種になりつつある。

嵐山の人気スポット「竹林の小径」付近では、「白タク」行為が横行しているそうだ。

嵐山で売店を営む店主:極端に増えましたね。それまでは、ちょこちょこでしたけど、コロナが明けてからばっと増えましたね。多いときは、ここから下まで並ぶ。1台しか通れないので大渋滞ですね。クラクション鳴らしたり、けんかしたりするから、客も増えましたけど、マナーが悪いですよね。

白タクは道路運送法で禁じられている、れっきとした犯罪行為で、違反すると3年以下の懲役や罰金となり、各自治体も利用しないよう呼びかけているが、減る気配は全くない。

タクシードライバーにとっては、売り上げに直結する死活問題だ。

タクシードライバー:私たちは国の定めた正規の料金で営業している。白タクは低料金に設定して、ある意味無法地帯。私たちの売り上げも、貸し切り営業も減る。売り上げが落ちている、深刻な部分もある。

■観光地に横行する「白タク」行為 旅行客は「旅行社の車による送迎」を海外で予約

世界遺産にも登録されている岐阜県・白川郷。

観光協会のスタッフ:運転手さーん、何降ろしてるの?白タク?
運転手:はい。
観光協会のスタッフ:何回も来ているだろあんた、見たことあるぞ。
運転手:僕、初めて…。
観光協会のスタッフ:うそ言うなよ!
運転手:ごめんなさい。もうやりません。

観光協会のスタッフの追及に、白タク行為であることを認めたドライバー。白川郷周辺は連休などになると、常に多くの白タクが停車し、客を待っているという。

さらに日本を代表する観光都市・京都の現状を取材すると、その摘発の難しさが見えてきた。

記者リポート:いま黒い車に乗り込みました。レンタカーなのですが、待ち合わせをして乗り込んでいるように見えます。

車は観光客を乗せ、そのまま走り去った。

ワンボックスタイプのレンタカーや自家用車が観光地の前で停車し、客とみられる団体が次々と乗り降りしていく。すべて白ナンバーの車両だ。

関西テレビが運転手に話を聞いてみると…

記者:乗せているのはどなたですか?白タク行為してませんか?お話しうかがえませんか?白タク行為してますよね?
運転手:嫌だよ!
記者:ツアーのお客さん乗せてますよね?

話しかけるとすぐに走り去り、取材に応じようとはしない。

そこで、別の車から降りてきた客側に話を聞くと…

韓国人観光客:(車は)このサイトで予約しました。僕たちを迎えに来てくれたんです。旅行社が。その旅行社の車です。ワンデーツアーの車です。

乗客は韓国の旅行サイトで日本に来る前に、「旅行社の車による送迎」の予約を済ませてきたという。

このような白タクの予約ができるのは、韓国だけではない。

記者リポート:中国でもスマホのアプリを使って、簡単に白タクの手配ができてしまいます。

中国には、白タクが予約できるアプリが数多くあり、その中の1つとチャットでやりとりしてみた。

例えば京都駅まで迎えに来てもらい、朝から夕方まで嵐山・貴船・三千院などをめぐる場合、小さい車では日本円でおよそ3万2000円、豪華な車では3万5000円と提示された。

決済は出発前にスマホで済ませ、日本では金銭の受け渡しが行われないため、「友達」や「親戚」などと言い逃れされると摘発は困難だ。

警察によると京都府内で白タクが摘発されたのは過去5年で、わずか3件のみだという。

■「正規料金では勝ち目がない」頭を悩ませる観光業界 専門家は「罰則規定が弱い」と指摘

一方で、このような状況に以前から頭を悩ませていたのは、観光業界。

神姫観光 阪田悦規常務取締役:(中国向けに)ワンデーバスツアーを京都でやったりしているが、それも最初売れていたけど、なんか売れなくなって、何でやろうと。スタッフが(中国の)サイトを見ると、『中国語で案内するよ』と、(白タクの)競合商品がいっぱい出てくる。営業ナンバーで正当に日本でやろうとしている会社は、金額的には全く合わない。ずっと続いていることなんで、そこと競合する、商売してる所にはもう立ち入らない。立ち入っても勝ち目がないので。

観光地でのマナーの問題、そして、タクシー業界や旅行業界が受ける打撃。

多くの問題を抱える白タクの現状を変えるすべはないのか、専門家に聞くと…

桜美林大学 戸崎肇教授:(白タクを)見つけたときに厳罰化するというのは、非常に大きな効果があるのでは。今の場合は罰則規定が弱い。いったん白タク現場を押さえたら、それを徹底的にたたいていく。それが一種の抑止効果になるのではないかと思っている。

20日、警察とともに検問を行った近畿運輸局は、「外国人観光客に、日本では白タクは違法だと周知したい」としている。

■白タクの厳罰化が抑止力となるのか

京都・嵐山の現状を取材したが嵐山だけではなく、「白タク」行為の横行は大阪、さらには各観光地で深刻な問題に直面している。現状を見ていく。

そもそも通常のタクシーと、いわゆる「白タク」の違いは、営業許可を得ているタクシーは緑色のナンバープレートを使用している。白タクは営業に必要な許可を受けず、自家用車で人を運んでいる。

許可なく有料で人を運送することは法律で禁止されている。違反すると3年以下の懲役または300万円以下の罰金などが科されることがある。

そしてアプリ・ホームページで事前に決済をしているので、現地で現金の支払いがなく、そのため摘発が困難とされている。

ただ白タクが保険に加入しているかどうかが分からないため、事故などでトラブルになる可能性も大いにある。

日本でお金の受け渡しが行われないため、摘発が難しい状況のようだ。番組コメンテーターの菊地幸夫弁護士は白タクの摘発についてこのように話す。

菊地幸夫弁護士:法律で有償というのが禁じる条件になります。だから、お金のやり取りを押さえるのは、極めて重要なポイントだと思います。ただ客の方から、『すでにアプリで決済して、そこでお金は払ってる』とある程度の供述はとれるかもしれません。だから人数をかけて、時間をかけて、摘発することも、できないではないと思いますが、やっぱりハードルがあります。あと罰則が3年以下の懲役、300万円以下の罰金ですが、例えば白タク違反したら免許を取り上げるというのも、1つ考えられるかなと思います。

インバウンド需要が増えていくにしたがい、この問題はより深刻化してくるかもしれない。

関西テレビ 神崎博報道デスク:逆に外国人側の立場から話をすると、例えば海外ではライドシェアという形で、一般のドライバーがタクシーのような輸送をすることが一般的です。ですので中国の人からすると、自分の国では適法で合法的にやっていることだからの何の後ろめたさもなく予約してしまって、いけないことだということ自体を知らない場合もあります。日本がタクシー業界などを守るために白タクは違法にしているのですが、これを認めてしまうと日本のタクシー業界がかなり苦しくなってしまうと思うので、日本では『ダメですよ』と周知した上で、厳罰化や、白川郷で行われているような止まる車すべてに声をかけるぐらいの厳しい取り締まりをすると、抑止にはなると思います。

啓発活動を進めていくのか、さらに規制強化などを厳しくしていくのか。難しい問題だ。

(関西テレビ「newsランナー」2024年6月20日放送)

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