減らない精神的な過労死 身体的な過労死は減少傾向 「過労死防止法」10年 心も体も健全な働き方改革へ

「過労死等防止対策推進法」が成立して20日で10年。働き方改革が推し進められる中、私たちは働き方を改めることができているのだろうか。

■働き方改革に取り組む食堂「変わってきた空気は感じています」

京都で洋食レストランやテイクアウトの店などを展開する「スター食堂」。この会社は、“週休3日”など働き方の改革に積極的に取り組んでいる。

スター食堂 米原沙織さん(34):自分の希望した働き方で対応してもらっている。

スター食堂もかつては1カ月に5日ほどの休みが当たり前だったという。

スター食堂 瀧上純常務取締役:GWはもうぶっ通しやろみたいな感覚だったんですけど、最近(GWの)5月3、4、5日でも社員は休んだりするので、そういう仕組みを作っておきながら自分でも驚くというか、変わってきたなというような空気は感じています。

■法整備から10年 身体的過労死減ったが、精神的な過労自殺は減らず

今や当たり前になってきた「働き方改革」だが、10年前、2014年6月20日、過労死に関する初めての法律「過労死等防止対策推進法」が成立した。

労働者の健康を損なうことなく仕事を続けられるよう支援する法律で、義務や罰則などを定めるものではない。

法律の制定から10年間で心臓疾患など、身体的不調による過労死は減少傾向になったが、一方で精神的な疾患が原因の過労自殺は減っていない。

■『命よりも大事な仕事ってあるんですか』

法律ができても、世の中の意識がすぐに変わるものではない。

夫を亡くした原田広美さん:ちょっと汚いんですけど、主人が子どもとキャッチボールしてたときに使っていたもの(グローブ)なので、子どもが大切に保管していたみたいです。

原田さんの夫・浩司さんは、8年前、単身赴任中にうつ状態になり、44歳で自ら命を断った。

夫を亡くした原田広美さん:『主人が亡くなりました』って聞いた時点から、何か仕事に原因があるに違いないって。

ゼネコンで現場監督を勤めていた浩司さん。時間外労働が100時間を超える月があったなどとのちに労災認定された。

夫を亡くした原田広美さん:かなり遅い時間だったり、朝早くだったりとかのメールのやり取りとかがあって。会社に申請している労働時間、残業時間よりは、最終的に(弁護士の)先生たちに見ていただいて調べてもらった残業時間は、かなりの乖離があった。
主人に声が掛けられなかった、気付いてあげられなかったのが、一番やっぱり責めちゃうし。本当にもう『あなたには大切な家族がいますよ』って、それは本当に分かってほしいなあって思う。

過労死問題に詳しい弁護士は、「労働時間」に関する現状に警鐘を鳴らす。

岩城穣弁護士:残業時間を減らすために『在社時間』という言い方をしたり、労働時間から外すという形をとったり、『隠れ残業』が増えていってる。根幹の部分はきちんと取り締まらないと、24時間自由に働かせることになってしまう。『命よりも大事な仕事ってあるんですか』と。

■トップが決断「仕事とプライベートが取り合うんじゃない」

トップが働き方にメスを入れ、意識が変わってきた会社もある。

大阪のゼネコン「三和建設」。かつては、昼間は工事に立ち合い、夜になってから事務作業をする毎日だった。

三和建設 横尾英之さん:午前7時には来て、午後10時、11時は普通にありましたね。休みも、土曜仕事、日曜仕事。お客さんに建物引き渡す1、2カ月前は休みなしが普通の状態にあった。

しかし数年前から、パソコンは午後8時に強制的にシャットダウンされるように。

三和建設 横尾英之さん:『そんなん無理やで』って思いましたよ。やってみたらどうにかなるもんで、やっぱり時間だらだら使ってたんかなっていう感覚はありましたね。

さらに…
三和建設 横尾英之さん:土日が完全に休み。2日休めるとだいぶ疲れはとれますよね。私らの時代とはまるきり変わったかなと思いますね。

「持続可能な働き方」を目指して改革に取り組んだ結果、離職率が低下し、社員数もかつてないほどの規模に増えてきているという。

三和建設 森本尚孝社長:仕事とプライベートが取り合うんじゃなくて、それぞれが一体のものとして充実していく。人生の中に仕事が取り込まれていく。決して無理になっていないという姿を求めていきたい。

意欲的に改革に取り組む企業もある中、本当の意味で心も体も健全な働き方ができる社会はやってくるのだろうか。

(関西テレビ「newsランナー」2024年6月20日放送)

© 関西テレビ