SEVENTEEN、TOMORROW X TOGETHER、LE SSERAFIM、YOASOBI……『Weverse Con Festival』で韓国エンタメのすごさを体感

HYBE発のグローバル・スーパーファン・プラットフォーム「Weverse」が6月15日・16日に、韓国 仁川・永宗島のインスパイアリゾートにてグローバルミュージックフェスティバル『2024 Weverse Con Festival』を開催。同フェスにはTOMORROW X TOGETHERやSEVENTEEN、LE SSERAFIMといったHYBEやその関連事務所のグループのほか、日本からはimaseとYOASOBIらWeverseに参加しているアーティスト総勢24組が出演した。(TOP画像=TOMORROW X TOGETHER)

2度目の開催となる『Weverse Con Festival』は「音楽のジャンルや世代を超えた、新たなファン体験を提供する」をコンセプトに、従来の音楽フェスでは見られないファン向けブースやステージ構成/演出などが目玉。朝から夕方まではディスカバリーパークを使った「Weverse Park」、夜はインスパイアアリーナを使った「Weverse Con」でライブが行われたほか、会場にはWeverseを活用したARフォトブースやグッズ制作ブースが用意されるなど、オンライン・オフラインで“推し活”を心ゆくまで堪能できる空間が広がっていた。

■生演奏ライブで和やかな時間が流れた「Weverse Park」ステージ

「Weverse Park」は、芝生が敷き詰められたディスカバリーパークにステージを配置。会場にはほぼ日陰がないため厳しい日差しが降り注ぐが、時おり吹きこむ海風が心地いい開放感のある環境だった。観客各々がステージ最前からピクニックシートを敷き、着座してライブを鑑賞するスタイルは筆者にとって初めての経験で、それぞれのグループのグッズを手にしたファンの黄色い歓声が飛び交う中、(非公式ではあるが)スマホやカメラでアーティストを熱心に撮影する姿も多く見られ、これが韓国のフェスの楽しみ方なのかと驚きを覚えた。

1日目はBOYNEXTDOOR、&TEAM、クォン・ウンビ、TOMORROW X TOGETHER、イ・ソンギョン、10CM、キム・ジュンス(XIA)、2日目はCHUU、JUST B、Billlie、ENHYPEN、imase、ソ・ウングァン&イム・ヒョンシク、キム・ジェジュンのそれぞれ7組が出演。同ステージでは生バンドが演奏を行い、アーティストがファンとコミュニケーションを取りながら丁寧に歌を届けるパフォーマンスが中心に。いずれのグループも激しく踊りながら歌うイメージが強かったため、バンドアレンジが施された楽曲の数々は新鮮だった。

また、パフォーマンスの合間にはしっかりとしたMCパートが設けられていたほか、幕間には出演グループや音楽プロデューサーをゲストに招いたトーク、観客同士によるダンス対決なども用意されていた。そういったアーティストとファンの距離を近づけるような構成も、Weverse主催フェスならではと言えるのかもしれない。

■豪華ステージ演出でパフォーマンスを堪能した「Weverse Con」ステージ

「Weverse Con」の舞台となったインスパイアアリーナは、2023年11月にソフトオープンした韓国初の最大15,000人収容の多目的アリーナ。ステージ設計で驚いたのは、上中下と三層に分かれた奥行きのある巨大なスクリーンだ。中心部が半円形になっているのだが、上段は真ん中が波のように丸みを帯びた横長スクリーン状になっており、鮮明な映像が左~中央~右とシームレスに映されていた。ライブの定番であるレーザーや特効もリッチに使われていたほか、ステージ自体にも床の一部が迫り上がってくるギミックがあり、より立体的なパフォーマンスを実現。テクノロジーの粋を集めたようなステージは、韓国のライブ演出の凄みを感じさせた。また、会場の使い方にもよるのだろうが、3階席のステージ正面の席に座った感覚としては、アリーナ規模にしてはアーティストとの距離が近く、ライブの臨場感を損なうことなく観ることができた。

「Weverse Con」1日目はILLIT、THE NEW SIX、BOYNEXTDOOR、&TEAM、YOASOBI、J.Y. Park with Special Guest(ILLIT、TWS、BOYNEXTDOOR)、LE SSERAFIM、TOMORROW X TOGETHERの8組、2日目はTWS、JD1、PLAVE、fromis_9、J.Y. Park with Special Guest(ベクホ、fromis_9 ジウォン、パン·シヒョク、ENHYPEN HEESEUNG·JAY、TOMORROW X TOGETHER BEOMGYU)、ENHYPEN、SEVENTEENの7組が出演した。

1日目のトップを飾ったILLITは、足首の怪我によりウォンヒのみ椅子に座っての参加となったが、「Magnetic」「Midnight Fiction」「Lucky Girl Syndrome」の3曲を披露。ピンクを基調とした映像をバックに愛らしいダンス&ボーカルで観客を魅了した。続くTHE NEW SIXはILLITの柔らかな雰囲気から一転、力強いパフォーマンスで会場の空気をガラリと変える。昨年5月にデビューしたBOYNEXTDOORは、ヒット曲「Earth, Wind & Fire」でクールかつアグレッシブなステージで熱気を生み出し、「OUR」では会場が一体となるピースフルな空間を演出した。

1日目のハイライトとしては、&TEAMを挙げたい。総勢9名による大人数グループが生み出す統制のとれたキレのあるダンス、個性豊かなボーカルは圧巻。日本人メンバーを中心としたメンバー構成でありながら、前半出演グループの中でも一際大きな声援が巻き起こり、韓国での人気の高さを感じさせた。複数人のバックダンサーが参加した「Scar to Scar」ではワイルドなフォーメーションダンスでインパクトを残し、「Samidare」ではバックに流れる桜の映像に合わせてピンクの紙吹雪が会場に舞う美しい光景を見せてくれた。

メンバーが横並びとなり、威風堂々とゆっくり歩きながらステージに登場したLE SSERAFIM。ナイル・ロジャースとフィーチャリングした「UNFORGIVEN」で見せる妖艶さ、ポップパンク味を感じさせる「No Celestial」の攻撃性など、彼女たちそれぞれの強い意志が貫かれたパフォーマンスにはガールクラッシュの新時代を担ってきたグループの頼もしさが表れていた。

そして1日目トリで登場したTOMORROW X TOGETHERは、オープニングナンバーの「I'll See You There Tomorrow」から一糸乱れぬダンスで会場の視線を釘付けに。「Magic」「New Rules」「Thursday’s Child Has Far to Go」といったメンバーと観客が一体となって楽しめる楽曲群は、限られたセットリストを披露するフェスにおいて大きな武器となっていた。「Blue spring」「Skipping Stones」のボーカルに軸を置いたセクションでは魅力的な歌声を遺憾無く発揮し、そこから「Good Boy Gone Bad」「Growing Pain」とフィナーレへ向けて再び会場のボルテージを高めていく。パフォーマンスの完成度はさることながら、観客が何を求めているのかを理解し、それを100%で打ち返すエンターテイナーとしてのステージングは、グローバルで戦うグループの貫禄を感じさせた。ラストは「Deja Vu」をファンと共に披露し、1日目の大役を完璧に果たした。

2日目は、2024年1月に「Oh Mymy : 7s」でデビューしたばかりのTWSからスタート。「hey! hey!」で勢いよくスタートダッシュを切り、平均年齢17.8歳らしい可愛らしさはもちろん、新人グループとは思えないダンス&ボーカルには未来への期待が膨らむ。キャスター付きの青いテーブルを駆使して立体的なパフォーマンスを見せた「BFF」では、モダンなR&Bを美しい歌声で表現。TWSの青春感、眩しすぎるほどのフレッシュさにたちまち魅了されてしまった。

ここからは“AI(人工知能)新人アイドル”をコンセプトにしたJD1、バーチャルボーイグループのPLAVEと、次世代のエンタメを感じさせる2組のアーティストが登場。JD1は複数人のダンサーを従えてジャンルレスな楽曲を披露し、続くPLAVEはバーチャルアーティストでありながら、ダンスでもしっかり魅せるパフォーマンスで会場を盛り上げた。

今回の出演女性グループの中で一番長いキャリアを持つfromis_9は、メンバー8名それぞれの個性が光る、煌びやかなステージを展開。都会的なディスコファンク「#menow」や「Feel Good」では、しなやかなダンスで愛らしさと色気を両立するグループの強みを観客にプレゼンする。「WE GO」「DM」(Finale ver)と最後までアップテンポかつファンキーなセットリストで華々しいステージを見せた。

昨年夏から今年2月までのワールドツアー、続けて日本ツアーを開催中のENHYPENは、一際大きな歓声の中で登場。「Weverse Park」出演時の和やかな雰囲気とは打って変わり、NI-KIのソロダンスから流れるように「Chaconne」「Still Monster」と繋げ、吸血鬼をモチーフとしたダークな世界観に会場を染め上げる。「One In A Billion」ではスタンドマイクを用意し、メンバーが横並びになって力強い歌声を響かせるが、曲途中からは複数人のダンサーが参加するドラマティックな展開に。そして会場を振動させるほどの重低音とメンバーの色気が体の芯を熱くする「Bite Me」、グルーヴィーなベースリフが癖になる「Sweet Venom」でフィナーレ。短いセットリストにおいてもグループのコンセプトを徹底し、長期ツアーで一回りも二回りも成長したステージを届けた。

そして「Weverse Con」の大トリとなるのは、今年5月に日産スタジアムの2DAYSワンマンで14万人超えの動員を記録したSEVENTEEN。ライブはメンバー13名に加え、15名近いダンサーを引き連れて観客を煽りながら「God of Music」で幕を開ける。大歓声に応えるような、むしろその期待以上のパフォーマンスを見せる姿は、国民的スターグループの煌めきを感じさせた。パフォーマーがステージいっぱいに溢れかえり、「Left & Right (Follow Con. ver)」ではお祭り騒ぎの様相に。時折見せるコミカルな一面は観客を笑顔にしていたが、そんな外にひらかれた親しみやすさと高水準のパフォーマンス力を両立するアイドル性が、SEVENTEENが万人に受け入れられる理由の一つなのだろう。

フェスとしては珍しく、ユニット曲も披露したSEVENTEEN。「Cheers to youth」「Spell」「LALALI」と、入れ替わり立ち替わりでそれぞれのユニットがエンターテインメント性の高いステージを届ける。そこからラストへ向けて「HOT」を披露。会場が真っ赤に染まる中、全身全霊でオーディエンスを盛り上げるメンバーの姿は曲名を体現しており、〈HOT〉と声をあげるパートでは観客から熱狂的な掛け声が飛び交う。それに加えて、煙でステージにモヤがかかるほど幾度にも渡って打ち上げられたド派手な特効が会場の熱気を最高潮にまで持ち上げ、2日目のクライマックスを迎えた。そしてラストは「MAESTRO」。2025年にデビュー10周年、SEVENTEENがこれまでに積み上げてきたスキルフルなダンス&ボーカルを存分に発揮し、大きな歓声と共に「Weverse Con」最終日は幕を閉じた。

■J.Y. Parkによる圧巻のトリビュートステージ

「Weverse Con」の見せ場の一つが、両日出演したJYPエンターテインメントの創業者であるJ.Y. Park(パク・ジニョン)のトリビュートステージ。1日目、J.Y. Parkはギター、ベース、シンセサイザー、ドラム、パーカッション、ブラス、コーラスからなるビックバンドを背負いながら派手に姿を現した。白い豹柄の毛皮のコート、真紅のスーツを身にまとい、ジェームス・ブラウンさながらのリーダーシップでバンドを操りながらステージを闊歩する。その姿はまさに“King of K-POP”の風格。BOYNEXTDOORとコラボした1曲目「You’re the one」で韓国R&Bの真髄を見せつけ、ILLITとは古き良き歌謡テイストの「When We Disco」、TWSとは80'sディスコライクな「Honey」を届ける。J.Y. Park流エンターテイメントの独壇場と化した会場は、驚嘆と歓声、そして笑いが入り混じり、そのカリスマ性に魅了されていた。そしてラストナンバーは「Don't Leave Me」。コラボしたアーティストやダンサーがステージ上に勢揃いし、「Weverse Con」がここで終わるのかと思わせるくらいの豪華なエンディングを迎えた。

1日目よりも尺を伸ばし、全12曲にパワーアップした2日目。J.Y. Parkはベクホ、ジウォン(fromis_9)、HEESEUNG(ENHYPEN)とのスペシャルなステージを次々と見せていくが、観客の度肝を抜いたのがHYBE創設者のパン・シヒョクとのコラボだ。驚きの声が会場いっぱいに響き渡る中、パン・シヒョクによるアコギのアルペジオに乗せて「I have a lover」がスタート。曲が進むごとにどんどんエモーショナルになっていく歌声をJ.Y. Parkが披露したかと思えば、パン・シヒョクがエレキギターに持ち替えて痺れるようなギターソロで応える。両者の間で交わされるリスペクトが音の波に乗って会場中に伝播したかどうかはわからないが、なににせよ韓国の音楽エンターテインメント最重要人物の2人がステージで音楽を楽しんでいる風景は、“伝説のステージ”として今後語り草になるのは間違いない。「I have a lover」を終えた後もパン・シヒョクは退場せずに、気づけばシンセサイザー奏者としてバンドに参加。そこから「Lie」ではJAY(ENHYPEN)、「One Candle」ではBEOMGYU(TOMORROW X TOGETHER)がギター&ボーカルで参加して会場を大きく沸かす。そしてラストナンバーは1日目と同じく、参加者が一同に介した「Don't Leave Me」を披露し、最高の大団円を見せてくれた。

アーティストとはいえ、競合会社のトップが2日間合わせて20曲を披露するのは異例なこと。ただ、J.Y. Parkのプロデュースによって、参加アーティストの普段見られない一面を知ることができたのは確かだ。普段は切磋琢磨しながらも、特別なタイミングでは手を取り合う。こうした大手事務所の良好な関係性が、韓国エンタメシーンのさらなる発展に繋がっていくのではないか。そう思わずにはいられないステージだった。

■YOASOBI、imaseによる日本アクトのパフォーマンス

「Weverse Con」1日目、韓国での人気ぶりを示すには十分すぎるほどの歓声で迎えられたYOASOBIは、デビュー曲「夜に駆ける」「怪物」といったアップテンポナンバーの連続披露で冒頭から観客のボルテージをマックスにまで高める。お馴染みのバンドメンバーを引き連れたギア全開のパフォーマンスはさることながら、無数に飛び交うレーザービーム、縦横無尽に回る照明、ハイテンポで切り替わる映像といった豪華なステージ演出も相まって、会場の空気を一瞬で支配してみせた。そこからメロウなミディアムバラード「たぶん」でブレイクを挟みつつ、ikura(Vo)が手を左右に振りながら観客とコミュニケーションを取る。そしてラストの「アイドル」は待ちに待ったと言わんばかりの歓声が上がり、自然と観客から「オイ!」コールが発生するほどの大盛り上がりだった。

YOASOBIは昨年のアジアツアーにて韓国で初の2DAYSワンマンを開催したばかり。しかし、今回のステージにはチャレンジャーとしての姿は微塵もなく、むしろ観客を先導する堂々としたパフォーマンスを見せてくれた。これからもYOASOBIのグローバルにおける快進撃は続く、そんな期待がますます膨らむひとときであった。

「Weverse Park」2日目のimaseも、アウェイな環境の中で気概を見せてくれた。ENHYPENから幕間のMCタイムを挟んで始まったimaseのステージ。ちょうどお昼ご飯の時間帯、ENHYPENで盛り上がった熱も冷め、落ち着いた空気が流れる中での登場は多少分が悪かったようにも思う。しかし、imaseはそんな場の空気をもろともせずに勢いよく登場。座り込んでいる観客に向けて「Stand Up!」と明るく呼びかけ、夏にピッタリのポップナンバー「Nagisa」で陽気な風を会場に送り込む。そこから「Shine Out」を繋げ、立ち上がった観客も手を振り上げて自由に体を揺らす。これまでのステージにはなかった、フェスらしいハッピーな光景を生み出したのは間違いなく彼だった。

MCではカンペシートを取り出し、慣れない韓国語で挨拶。こうした等身大の姿を見せられるのもimaseらしく、そんな彼の言葉に嬉しそうに応える観客の様子も印象的だった。「でもね、たまには」「Have a nice day」の心地よいビートが会場を包み込んだあとは、韓国でも爆発的なヒットを記録した「NIGHT DANCER」へ。同曲はさすがの人気具合で、観客もサビのダンスをしたり、〈響めき 煌めきと君も“踊ろう”〉というサビを一緒に歌ったりと一体感のあるステージを見せてくれた。

魅力的なアーティスト、優れた楽曲、テクノロジーを駆使したライブ演出と、グローバルを視野に入れたステージはどこをとっても刺激的だった『2024 Weverse Con Festival』。これまで以上にファンの存在がエンタメに大きな影響力を及ぼすようになり、「いかにしてファンの心を捉えて離さないコンテンツを作れるか」が重要なテーマになっている今、こうしたファンファーストの精神を起点としたフェスティバルは今後より広がっていくように思う。

直近ではアリアナ・グランデが「Weverse」の公式コミュニティを設立。今は韓国をはじめとしたアジアのアーティストが中心に参加しているが、これからますます参加者が増えていくだろうし、そうなればフェスのラインナップのバリエーションも広がっていくのではないか。そんな期待に胸を膨らませながら、次回の『Weverse Con Festival』の開催を待ちたい。

(文=泉夏音)

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