『Re:リベンジ』の真髄は人間の複雑な内面描写だった 赤楚衛二と錦戸亮の“記憶に残る”熱演

医療界に潜む利権と欲望の闇。表向きは患者のために尽くすと謳いながら、その実、一握りの者たちの私利私欲を満たすためだけに存在する。この根深い悪を打ち砕くには、その根源に迫らねばならない。『Re:リベンジ-欲望の果てに-』(フジテレビ系)の最終話では、病院の陰謀が遂に白日の下にさらされた。

理事長の海斗(赤楚衛二)は、会長である皇一郎(笹野高史)同席のもと、郁弥(錦戸亮)を解任しようとする。その矢先、陽月(芳根京子)と、事件の真相を知る若林(橋本淳)が理事会に乗り込んでくる。

若林は、陽月の妹・美咲(白山乃愛)の死因が医療ミスであり、そのミスが組織ぐるみで隠蔽されていたことを暴露する。さらに、その全ては海斗の指示によるものだったと証言するのだった。会長の皇一郎は激しく動揺しながらも、海斗から事実確認を行い、後日改めて報告するよう命じる。そして、病院で働く人や患者のためにも「この問題をどう扱うべきか検討する時間をいただけますか?」と問いかけ、遺族である陽月もそれを了承する。

しかし、院長の小笠原哲也(古舘寛治)は、このまま曖昧にするのではなく、ここできっちりと白黒つけるべきだと主張。議論が紛糾する中、海斗は意を決したように立ち上がり、今までの過ちを認め、その場で全員に謝罪をする。これまで“闇堕ち”まっしぐらだった海斗だが、自らの責任を明確にし、病院の信頼回復に努める姿勢には、かつての真摯に問題に向き合おうとする彼の面影が感じられたのではないか。

しかしこれに憤慨した皇一郎は、海斗に病院を去るように命じる。ところが、ここでもやはり郁弥の方が一枚上手だった。一連の隠蔽工作が海斗の独断ではないと判断した郁弥は、海斗の口から「レントゲンの削除は会長の指示です」との言葉を引き出すことに成功する。

「あなたが人生をかけて築き上げた天童記念病院、今日がその最後の日です」

最終話にして、対立していた海斗と郁弥がようやく同じ方向を向いた。真実を追究する2人の姿は、多くの視聴者の胸を熱くしたのではないだろうか。

そして最終話では、登場人物たちの真の目的が明らかになり、彼らの複雑な思惑と行動の理由が、まるでパズルのピースがはまるように繋がっていった。

記者の木下紗耶(見上愛)の死の真相も遂に明らかになる。彼女を殺害したのは、なんと皇一郎の秘書である永田(中島亜梨沙)だった。永田は「会長のために自分が手を汚すべきだと判断した」と供述し、自ら警察へ出頭する形となった。しかし、その裏には皇一郎の存在があることは明白だった。

部下や関係者を巧みに操り、自身は表舞台に立つことなく、病院の経営と自身の地位を守り続けてきた皇一郎。しかし、その行いにもいよいよ天罰が下る時が来たのだった。

ドラマは急展開を見せる。突如として心筋梗塞で倒れた皇一郎に対し、大友郁弥が自らバイパス手術を引き受けると申し出たのだ。実は、郁弥は以前から自分の母親の手術に医療過誤があったのではないかと疑問を抱いていた。その真相を突き止めるために、郁弥は天堂記念病院に医師として潜り込んでいたのだった。

そして、母親を手術したのが皇一郎だったことを知った郁弥は、復讐心に燃えていた。皇一郎は、カルテを改竄し、執刀医を智信(光石研)に仕立て上げていたのだ。当時、海斗が生まれたばかりだった智信は、自分の立場を優先させてこの事実を黙認したことを後悔していた。

郁弥の告白により、彼の全ての行動が皇一郎への復讐のためだったことが明らかになる。皇一郎の手術は成功し、彼は一命を取り留めるが、これは海斗の判断だった。皇一郎の命を奪うのではなく、真実を世に知らしめることで、彼を社会的に断罪したのだった。

亡き記者・紗耶の遺志を継いだ海斗が、彼女の未完の記事を完成させ発表するという展開で物語は佳境を迎える。緊迫した記者会見の場で、海斗は長年隠蔽されてきた医療過誤を告白し、自ら理事長の座を降りる決断を下す。この行動により、病院に蔓延していた闇が一気に白日の下に晒される結果となった。

本作の真髄は、単純な勧善懲悪の枠を超えた、人間の複雑な内面の描写にあるように思う。人間の心の奥底に潜む欲望は、誰もが自らの復讐心や野心の炎に焚きつけられる可能性を秘めている。結局のところ、この物語は、「光」と「闇」の境界線が実は曖昧であることを、鮮烈に描き出していたのではないか。その中でも、赤楚衛二が体現した海斗の人物像の変遷は圧巻の一言に尽きる。

物語が進むにつれ、海斗の揺るぎない正義感が徐々に侵食され、時に闇の誘惑に屈する姿は、観る者の心に不安と緊張を走らせた。赤楚の演技は、その変化の過程を丁寧かつ説得力を持って描き出し、表情の機微や身のこなし、そして微妙な声色の変化に至るまで、天堂海斗という人間の脆い部分を見事に表現していた。

一方、郁弥の温厚な笑顔の裏に潜む野心を、巧みに表現し続けた錦戸亮の演技は、物語の最後まで観客の興味を惹きつけた。物語の幕が下りる瞬間、理事長の椅子に座った錦戸亮の意味深な微笑みが、観る者の記憶に鮮明に残る。我々は海斗と共に、どこまで郁弥の緻密な策略に巻き込まれていたのか、あらためて考えさせられる。

今日も世界のどこかで、誰かの「リベンジ」が密かに、あるいは堂々と遂行されているのだろう。それは正義の名の下に行われるかもしれないし、純粋な私利私欲から生まれるかもしれない。確かなことは、その境界線は往々にして曖昧であることだけなのだ。我々も皆、いつか自らの「リベンジ」と向き合う日が来るのだろうか。

(文=すなくじら)

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