宝塚宙組9カ月ぶり公演再開 開演前に理事長あいさつも急死劇団員への哀悼の言葉なし

 宝塚歌劇団宙組の公演再開の初日を迎え、入場するファンら

 宝塚歌劇団の宙組劇団員が昨年9月に自宅マンション敷地内で亡くなって以来、中止されていた宙組公演が20日、約9カ月ぶりに兵庫県内の本拠地・宝塚大劇場で再開した。開演前には村上浩爾理事長があいさつしたが、事件への言及や哀悼の言葉などはなく、観劇したファンからも不満の声がもれていた。

 上演されたのは、トップスター芹香斗亜、トップ娘役・春乃さくら主演のショーのみの特別公演「Le Grand Escalier -ル・グラン・エスカリエ-」。休演者もなく、60人全員が出演した。歌劇団は「いままでも初日の取材対応はしていない」として取材や撮影は応じなかった。

 舞台に先立ち、村上理事長が「大変ご心配とご迷惑をおかけしたこと、改めて深くおわび申し上げます」と客席に一礼。「今後も引き続き誠心誠意、努めてまいります」と頭を下げると、客席からは拍手が起きた。だが、急死した劇団員への言及はなく、哀悼の言葉なども一切なかった。

 終演後、松風輝組長が「公演の中止や演目変更など、心よりおわびいたします」とあいさつ。芹香も「長きに渡りご心配をおかけし、たくさんのお言葉をかけていただいた」と頭を下げ、ひときわ大きな拍手とスタンディングオベーションが起こっていた。

 観劇に訪れた50代の女性は「理事長のあいさつはあれでいいの?」と事件に触れなかったことに不満。50代の男性も「理事長のあいさつは謝罪やない。アカン」と肩をすくめた。一方、ファン歴60年以上という80代の女性は「生徒はみんな頑張っている。客席の拍手もいつもより温かかった」とファンの中でも賛否が分かれていた。

 劇団員急死問題については、上級生らのパワハラなどを認め、3月に遺族と合意書が締結。だが、パワハラ行為は「悪意をもっていない。厳しい叱責がハラスメントになると気付く教育をしなかったことに、劇団に組織としての責任がある」と上級生ら個人の責任は問われていない。

 宝塚大劇場は30日まで。東京宝塚劇場は7月20日~8月25日。

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