四季折々の情景、歌に 作曲家と住民、共同制作 高萩・中戸川地区 茨城

高萩市中戸川地区の四季を歌った「多々良場慕情」を作曲した青野良勝さん(左)と作詞に携わった菊地力雄さん=同市中戸川

昔ながらの田園風景や豊かな自然が残る茨城県高萩市中戸川地区を歌で盛り上げようと、同県日立市十王町のアマチュア作曲家、青野良勝さん(82)と地元住民が連携し、ご当地応援ソング「多々良場慕情」を制作した。青野さんが同地区を偶然訪れた際に、住民から作曲依頼を受け実現。同地区の四季折々の情景が印象的な歌詞で、青野さんは「自分の故郷を大切にし、歌い継いでほしい」としている。

歌の制作は3月、40代の頃から本格的に作曲に取り組む青野さんと同地区でコミュニティー広場「いこいの場」を運営する菊地力雄さん(70)の偶然の出会いがきっかけ。めいと山菜採りに高萩市を訪れた青野さんが行き止まりの道路に迷い込んだ際、様子を見ていた菊地さんが2人を同広場に手招きした。

コーヒーを飲みながら談笑する中で、青野さんが作曲家だと知った菊地さんが作曲を依頼。青野さんは同地区の豊かな自然を気に入ったことB加え、同地区がNHK連続テレビ小説「ひよっこ」のロケ地になったことを受け、住民が団結して地域を盛り上げる活動に取り組んでいると知り、歌を作りたいと依頼を快諾した。

その後、青野さんは複数回訪問し、歌の原案を制作。菊地さんを含めた地元住民に同地区の季節ごとの情景や魅力、歴史を聞きながら、一緒に歌詞を修正していった。青野さんは「半分くらいは変わった」と笑みを浮かべながら、「住民の思いが強かった。この地に合った曲にしたかった」と共同制作を振り返る。

こうして合作で完成したのが「多々良場慕情」。同地区を流れ、稲作や野菜作りなど恵みをもたらす多々良場川からタイトルを取った。歌詞は4番構成で、山桜が咲く春、ホタルやセミが舞い飛ぶ夏、紅葉や実った稲が輝く秋といった同地区ならではの豊かな季節の移り変わりを歌っている。また、メロディーは青野さん演奏のギターを含む7種の楽器で奏でられ、のどかな曲調に仕上がった。

CDは6月1日に完成し、地元の17世帯に配布。曲は土日祝日に開かれる同広場(ロケで使われたバス待合所「上賀口(停留所)」から約250メートル)でコーヒーを飲みながら聞ける。希望者にはCDをプレゼントする。

菊地さんは「歌を口ずさむ住民もいる。評判が良い」と反響を語り、「作っていただき感謝している。地域を代表する歌になった」と笑顔を見せた。

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