フルテックがミュンヘン・ハイエンドで発表した最新・最高峰モデルの実力を聴いた!

今年5月にミュンヘンで開催された世界最大のオーディオショウ、ミュンヘン・ハイエンドで発表されたフルテックの電源ボックス「NCF Power Vault」は、昨年発表の電源ケーブル「Project V1」とペアを組む、同社の新たなフラグシップモデル。そして「Project V1-L」は、同じクラスのRCA/XLRインターコネクトケーブルだ。

今回の新製品は、これまでの製品とは一線を画す「本物のハイエンド」を強く意識して開発され、単に高価な素材を起用した高級品ではなく、最適な素材を厳選して用いる技術と、その結果としての音の再現力を、同社が持てる最新ノウハウを結集して徹底追求した作り込みがなされているという。

世界の著名なハイエンドモデルの実力に引けを取らない、あるいはそれを超えるとも言える、新たな高みを目指した意欲作。都内品川区にあるフルテックビル内のリスニングルームを訪ね、その音を角田郁雄氏がじっくりと比較試聴してご報告する。

フルテックのさらなるエボリューションを体験

フルテック(FURUTECH)は長年“ピュア・トランスミッション”を追求し、電源コンセント、ラインコネクター、伝送ケーブルなど、オーディオの根幹を成すパーツや機器を開発している。その経過の中で、振動と静電気がピュアな伝送に影響を与えると考え、理想の素材開発を進めてきた。

その結果、ついに世界が評価する特殊素材「NCF」の開発に成功した。伝送ケーブルを支え、振動と静電気を低減させる「NCF Boosterシリーズ」は登場するなり、世界の著名なオーディオブランドが自社のリスニングルームやオーディオショウで使用するに至った。

フルテックビル内に常設されたリスニングルーム。試聴機材は、パワーアンプはPASS LABS「XA160.8」、プリアンプはアキュフェーズ「C-2410」、CDプレーヤーはアキュフェーズ「DP-500」、DAコンバーターはティアック「UD-701N」、スピーカーはフォーカル「Maestro Utopia」を使用

ここで、高精度測定器やハイエンド・オーディオを考えてみよう。アナログにしてもデジタルにしても、微弱信号を高精度に高速伝播させるためには、振動、静電気(静電容量)、ノイズを極小にする必要があり、テフロンやセラミックなど、低損失、低誘電率の基板が使われることがある。

ならば当然、オーディオ環境において、電源を含めた伝送ケーブルにも使われるべきと、フルテックは考えた。しかし、テフロンやセラミックでは、成形加工が難しい。そこで開発されたのが、NCFである。

試聴は角田郁雄氏が持参した常用ソフトを中心に用いた

いまでは、「NCF Boosterシリーズ」に留まらず、NCF仕様の電源関連の周辺機器やラインコネクターまでも開発し発売。さらに、これらにふさわしい理想の導体までも開発するに至り、ハイエンドブランドでの採用も多くなった。

そして、2024年の世界最大のミュンヘン・ハイエンドでは、フルテックの集大成となるフラグシップモデルを発表した。ハイエンド・パワー・ディストリビューター「NCF POWER VAULT」、ハイエンド・インターコネクトケーブル「Project V1-L」(RCA及びXLR)、ハイエンド・パワーケーブル「Project V1 Power Cord」だ。

ハイエンド・オーディオは、再生環境に敏感。ならば、ラインケーブルも電源関連機器も、それ引き立てる、同社技術の粋を投入したハイエンド仕様でなければならない。このような考えで、これらのモデルは、静かに開発された。

1. 電源ボックス「NCF POWER VAULT」 生演奏に肉薄する高い解像度を実現

美しいアルミブロック切削筐体に魅せられる。私的にはパワー・コンソールと呼びたくなるほど壮大だ。筐体は3ピース構造で、上部に「NCF Booster-Brace」が組み込まれ、内部に、フラグシップの2連コンセント「GTX-D NCF(R)」を4式、IECインレット「FI-09 NCF(R)」1式を設置したコンセントベースおよびプレートを配置。下部には重厚なボトムケースがあり、電磁波吸収材、GC-303を採用。

電源ボックス「NCF Power Vault」。海外での販売価格は7,889ユーロ前後

内部配線の導体は、α-OCC単結晶無酸素銅(3.37sq.mm)で、インレットから各コンセントまでの配線長は全て同じ。要所にαプロセス処理(超低温/特殊電解処理)も行っている。

非磁性ステンレスの調整可能なスパイクと、特殊グレード二重硬度の防振ゴムを使用し、両面使用可能なスパイク受けキットを付属
「NCF Power Vault」の内部。削り出し加工されたプレミアムグレードのアルミニウムシャーシに、「NCF Booster-Brace」を4個内蔵した贅沢な設計。コンセントはフラグシップの「GTX-D NCF(R)」

その音質特徴は、驚くほどの静寂感を実現し、44.1kHz/16bitのCDを再生しても、生演奏ではないかと思うほどの高解像度再生を実現する。音の立ち上がりが強調されず、ピアノの余韻が美しく自然に減衰する。女性ヴォーカルの歌唱は生々しく、その場で演奏しているかのような感覚になる。明らかにシステム全体がアップグレードされた。

最新・最高峰の「NCF Power Vault」(左)と、現在好評発売中の「GTO-D2 NCF(R)」(右)

この構造は、接続する電源ケーブルが一点アースされ、重厚な筐体は仮想アースの役割を果たし、アースループも発生しない。ゆえにNCFの効果が発揮され、驚くほど音の透明度が高いことが魅力で、コンポーネントのポテンシャルを引き出している。すでに、海外で評価され受注しているそうだ。

2. 電源ケーブル「Project V1 Power Cord」広く深い空間描写や抑揚をリアルに再現

「NCF POWER VAULT」と対を成すハイエンドグレード電源ケーブル「Project V1 Power Cord」は2023年5月ミュンヘン・ハイエンドで発表された。注目されることは、NCFマルチマテリアルハイブリッド構造の電源プラグを採用し、新たな導体を採用したことだ。

電源ケーブル「Project V1」。海外での販売価格は9,980ユーロ前後

その導体は3層同心円構成で、中心に銀コーティングのα-OCCを、中間層と外周層には、三菱マテリアルのD.U.C.C.超結晶化高純度銅(7Nクラス)をα処理して採用し、試聴を重ね、中心導体と外周導体は右撚り、中間導体は左撚りとした。

「Project V1」のケーブル断面図
「Project V1」のケーブル構造図

シールドを徹底し、さらなる振動低減を実現するために、メイン導体を共振減衰素材を使用するアウタースリーブでカバーし、両端にNCFのダンピングリングを装着した。

電源ケーブル「Project V1」と電源ボックス「NCF Power Vault」。ケーブル配置の使いこなしには、「NCF Boosterシリーズ」を活用して立体配線するとより効果的

その大きな特徴は、聴感上のS/Nを上げ、広く深い空間描写を実現することだ。微弱な音を浮かび上げ、解像度を向上するが、導体の固有音がなく、今まで感じていた高域の雑味のような音も排除された。

とにかくダイナミックレンジが広い。倍音を引き立て、響きの余韻は自然な音の階調を見るようだ。録音音源の再生ではなく、生演奏のような感覚になり、音源に内包する楽曲の抑揚をリアルに再現してくれる。まさに、ハイエンドオーディオ・システムにふさわしいケーブルである。

3. インターコネクトケーブル「Project V1-L」(XLR/RCA)弱音や倍音に優れ臨場感鮮明

今までの「Line Flux」を上回る、フラグシップのインターコネクトケーブル「Project V1-L」の登場。特殊な鍛造プロセスで製作された、NCFとリファインド・カーボンファイバー複合材が特徴だ。

RCAインターコネクトケーブル「Project V1-L-RCA」。海外での販売価格は6,814ユーロ前後
XLRインターコネクトケーブル「Project V1-L-XLR」。海外での販売価格は6,993ユーロ前後

XLRとRCAには「Project V1 Power Cord」と同様に、3層同心円構成の銀コーティングα-OCCとα-DUCC銅線が使用され、撚り方向も管理されている。インナーとアウタースリーブで構成され、徹底したシールドと振動低減を実現した。内部絶縁体も静電容量を低減するポロプロピレンやポリエステルファイバーを使用している。

微細振動や静電気は、ピュアな音の伝送を妨げるという設計ポリシーは、「POWER VAULT」や「Project V1 Power Cord」と同じで、インターコネクトケーブルにおいても共通する技術を投入している。

「Project V1-L」のケーブル断面図
「Project V1-L」のケーブル構造図

その音は、前述のモデルと同様に、ワイドレンジで高解像度特性を極め、高い弱音再現性と倍音再現性により、演奏の臨場感を鮮明にすることが特徴だ。

CDプレーヤーとプリアンプ間に、RCAインターコネクトケーブル「Project V1-L」を使用したところ

とりわけ、今回の4モデルを組み合わせた音は、再生した瞬間に録音場所の空気感が部屋に広がり、演奏のライヴ感を鮮明にする。一枚も二枚もベールを剥いだリアルな音場と音像だ。一旦、この音に触れると、後戻りできなくなる。

高価ではあるが、昨夜のコンサートを彷彿とさせる臨場感を体験できることは、実に驚きの体験で、音が心に浸透してくる。導入後、買い換える必要を感じさせず、長く愛用できることは、ハイエンド・オーディオ機器と共通するところがある。予算を考えながら、徐々に増やしていきたいと思うほどだ。

フルテックは、このようにハイエンド・インターフェース・モデルの開発へと進化を遂げた。近々、日本でも披露され、脚光を浴びることであろう。ぜひ一度、この姿と音を体験してみて欲しい。


【NCF POWER VAULT (NCF パワーヴォルト)】●シャーシ:特別グレードのアルミニウム合金、削り出し加工、ヘアラインアノダイズド仕上げ●金属パーツは全てα(Alpha)プロセス(超低温/特殊電磁界)処理●アース接続:シャーシ接地ポスト●IECインレット:FI-09 NCF (R) α (Alpha) 純銅導体ロジウムメッキ●コンセント:GTX-D NCF(R) UL二連式ロジウムメッキコンセント4個●NCF Booster-Brace:4個●定格電流/電圧:15A 125V A.C. 1875VA●内部配線:Alpha-12、α(Alpha)プロセス処理 α(Alpha)-OCC導体撚線/UL-CL3準拠、特級耐熱・難燃性PVC絶縁●外部サイズ:約350W×169H×137Dmm(スパイク部除く)●質量(ネット):約10.5kg

【Project V1】●ケーブル導体:銀コーティングα(Alpha)-OCC+α-DUCC (7N Class)●ケーブル導体サイズ:10AWG/5.267 Sq.mm●ケーブル導体構造:マルチマテリアルハイブリッド導体と特殊3層撚り合わせ●遮音性とDampingを向上させる2重絶縁及び2重シールドと3層シース●二重絶縁/誘電体:内層FEP(Fluoropolymer)と外層ハイグレード高級ポリエチレン●共振減衰材料:シース内のナノセラミック/カーボンパウダーコンパウンド●サイズ:ケーブル外径約 32.0mm●全長:約1.8m

【Project V1-L】●ケーブル導体:銀コーティングα(Alpha)-OCC+α-DUCC (7N Class)●ケーブル導体サイズ:14AWG/2.0 Sq.mm●ケーブル導体構造:特別な3層同心設計のマルチマテリアル ハイブリッド導体●音質を向上させ共振を抑制するダブルスリーブ、3層シールド設計●絶縁体:オーディオグレードのポリプロピレン●RoHS準拠のナノセラミックとカーボンパウダーのダンピング素材●仕上がり外径:14.0mm●長さ:約1.2m●コネクター(Project V1-L version):RCAモデルはCF-102 NCF(R)-P、XLRモデルはCF-601M / 602F NCF(R)-P

(提供:フルテック)

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