“承認欲求”を満たしたい若者へ向けた投資会社役員の訴え。他人ではなく自分の「いいね!」をして行動を選択しよう

少子高齢化や人口減少など、日本の未来には多くの課題がある。

明るい希望を抱けない中でも、生活の安定や豊かになるためには経済力が重要になる。

日本初の独立系直販投資信託会社「さわかみ投信」の取締役・熊谷幹樹さんが考えるお金の増やし方は4つある。「稼ぐ力を伸ばす」「コスト削減」「長く働く」「お金を働かせる」だ。

この中の一つ、「稼ぐ力を伸ばす」ためには、自分で自分のことを認めることも重要だという。

著書『格差社会を生き抜く投資の哲学 君の未来とお金の関係』(幻冬舎)から、他人からの「いいね!」より自分への「いいね!」の大切さについて、一部抜粋・再編集して紹介する。

他人から褒めてもらいたい?

「できたこと日記」などを通して自己肯定感を高める方法を紹介したが、「自己肯定感を高めること=承認欲求を満たすこと」ではないことにはご留意願いたい。

昨今の現代人の承認欲求は、暴走の一途をたどっているように思う。

SNSでは「いいね!」を獲得すべく、アップされる内容は過激になるばかりだし、「自分の力を認めてくれない」との理由での転職も、増えるばかりだ。

私にはこうした人たちは実のところ「できたことが少ない」か、「できたことは多いようでも、実のところは自分の力でなし得てはいない」のだと思う。

つまりは心のどこかに自分を認められない、褒められないところがあるからこそ、他人から褒めてもらうことで「自分はすごい」との確信を得たいのではなかろうか。

自己認識のよりどころを自分自身ではなくて、他人にしてしまっているのだ。自分を一番よく知っているのは他の誰でもない、自分自身であるはずなのに。

多くの人が薄々と認識し始めているように、SNSでの見知らぬ他人の反応や称賛など、気まぐれな上に無責任なことこの上ないものが多い。

他に目立つものが生まれれば、即、そちらに向かうのが常だからだ。

「ダメな人間」は快適で居心地がいい

そうした気まぐれなものからの反応に右往左往していては、自己肯定感を得ることなど、とてもできない。

それよりも自分で自分を褒める(認める)ことができるようになると、成長のプロセスが開始される。

例えば「自分は毎朝、6時に起きることができる」「6時に起きるのなんてわけがなかった」と自分自身を認められるようになると、自信がついて前向きな姿勢が生まれる。

「6時に起きることで生まれた時間をジョギングにあててみようかな」「NHKラジオの英語番組を聴いてみるのもいいかもしれない」などなどだ。

ジョギングを始めるとマラソンに挑戦したくなったり、NHKラジオが物足りなくなり、海外留学を考え出す者もいることだろう。つまりはプロセスそのものが、成長することになるのだ。

表現は異なれど、これとまったく同じことを語っている人がいる。あの大谷翔平選手である。

2023年、彼がMVPを獲得した際、若い人たちに向けて「何か目標を持ってほしい。目標を持てることそのものが、人生の豊かさだと思う」と語っている。

こうした超一流とされている人物も、「朝6時に起きる」のようなきわめてシンプルなことをコツコツと続けて大きなことを成し遂げている事実は、見逃されやすい。

あのイチローさんも、NPB/MLBにおける通算4367安打と通算3604試合出場のギネス世界記録は、毎日毎日、グローブを磨いたその積み重ねや、誰よりも熱心に行ったストレッチあってこその賜物であると答えている。

自分を褒める(認める)という行為は、実はとても勇気を必要とすることでもある。自分を認めることで始まる成長のプロセスでは、失敗もあれば後戻りもある。

出会いによって人生が動く場合もあるが、その出会いで傷つくこともあるからだ。だがまだ見ぬ世界を見たいのならば、こうしたリスクに立ち向かう勇気なくして見ることはできない。

一方、「自分はダメな人間だ」「まだまだダメだ」とする立場は、とても快適で居心地がいい。「ダメな人間」「まだまだダメ」とすることで、居心地のいいその場に止まることができるし、新しい出会いもないが、その出会いで傷つくこともないからである。

厳しい環境でも「諦めない」選択肢を

人生とは選択の連続だ。若い君たちもすでに多くの選択をして、きっと今日という日を迎えているに違いない。あの習い事をしようか、あるいはクラブに入ろうか。

その積み重ねが、今の君をつくっている。突き詰めて考えると、自分が人生でどう振る舞うか、どう生きるかを自分で選択しているといえよう。

「あの人は嫌い」「自分はダメだ」、そう選択しているのは自分である。それと同時に、「私は生まれた環境のせいであれができない」は、親のせいにすることを選択していることと気づくべきだ。

どんな環境であれ、諦めずに前に進む道を選択している若者はたくさんいる。だからこそ伝えたい。

どんなに厳しい環境であっても、困難がやってきても、君たちには常に、「諦めない」という選択肢があるということを。

未来ある君たちには、ぜひとも勇気を出して自分を認め、立ち止まるのではなく、行動を選択してほしいと願っている。

熊谷幹樹
2001年、日本発の独立系投資信託会社であるさわかみ投信株式会社に入社。アナリスト・ファンドマネージャーを経て取締役運用調査部長に就任し、現在同社の戦略立案実行部門を主導。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA®)

© FNNプライムオンライン