オンラインゲームに最適なLANケーブルは最高級品ではない! オーバースペックになるとデメリットも。適切なカテゴリと使い勝手で判断しよう【石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』】

by 石田 賀津男

筆者がストックしているLANケーブルたち

LANケーブルが意外とわからない問題

前回はオンラインゲームのラグについて説明した。ネットワーク上にはラグが発生しうる場所が複数あるため、問題を特定するのはとても難しい。

そして前回の話には上がらなかったが、常に問題になり得るネットワークデバイスがある。それはLANケーブルだ。自宅にインターネット回線を引いていて、LANケーブルを使っていないという人はごく稀なはず(ONU内蔵Wi-Fiルーターで有線機器が1つもない、というパターンはあり得る)。

LANケーブルは今や100円ショップでも販売されており、誰でも簡単に入手できる。そして家庭用のLANケーブルと言えば、端子の形状は「RJ45」と呼ばれる規格でほぼ統一されており、あらゆるLANケーブルはあらゆるLANポートに接続できる。これが厄介ごとの種になっている、というのが今回のお話。

「光回線を導入したのに、速度が90Mbpsくらいしか出ない!」という発言は今も昔もよく見かけるが、それはほぼ確実にLANケーブルやLANカードの仕様が問題である。この一文を読んで「なるほど」と思った方は、今回の内容は読み飛ばしていただいて構わない。なお「昔は同軸ケーブルで」とか「うちはLANも光ファイバーで」とか「PLCで」とかいう話は今回は扱わないので悪しからず。

昔から端子形状が変わっていないLANケーブル

筆者がLAN環境を構築し始めた1990年代後半は、LANは10BASE-Tという最大10Mbpsの規格が主流だった。当時はインターネット接続がまだ数十Kbpsという時代だったので、10Mbpsという速度は超高速だと感じたものだ。

それから30年近く経ち、一般家庭のLAN環境は最大1Gbpsの1000BASE-Tが標準的となり、最近では2.5Gbpsや10Gbpsといったより高速な規格も普及してきている。

ではLANケーブルと端子を見てみよう。30年近く前に使われていた10BASE-Tの端子は、RJ45という規格である。そして現在、家庭用では最速となる10Gbpsの10GBASE-Tも、同じRJ45だ。

つまり、30年前のLANケーブルを最新の10GBASE-Tを搭載したPCに接続すると、物理的にはぴったりはまる。見た目は何の問題もなくケーブルが接続された状態にできる。

しかしこの状態で実際に使用すると、10Gbpsはおろか、100Mbpsも出せない可能性が高い。それはケーブルが古くて劣化しているからではなく、ケーブルの規格あるいは性能が異なるからだ。

覚えておいて欲しいことの1つ目は、LANケーブルは長年、外見が変わっていないということ。物理的に繋がればOK、とはいかないものなのだ。

RJ45の端子形状は昔から変わっていないので、昔のケーブルや製品も物理的には接続できてしまう

カテゴリと性能を理解しよう

ではLANケーブルにはどんなものがあるのか。LANケーブルの規格は、カテゴリ(Cat)という名前で呼ばれている。市販されている製品を見ると、「カテゴリ5(Cat5)」といった形で数字が付いており、この数字でLANケーブルの性能がわかる。

カテゴリの数字は、基本的に大きいほど高性能になると思っていい。主なLANケーブルを解説していこう。

  • カテゴリ3
    10BASE-T(10Mbps)に対応。現在はほぼ使われていない。
  • カテゴリ5
    10BASE-T、100BASE-TX(100Mbps)に対応。4組8芯ケーブルなら1000BASE-T(1Gbps)にも対応する(2組4芯のケーブルも存在する)。かなり長く第一線で使われ、今も残っていることがある。
  • カテゴリ5e
    上記に加え2.5GBASE-T(2.5Gbps)に対応。現在安価に入手できる製品はこれであることが多い。カテゴリ5と並んで長く使われている。
  • カテゴリ6
    上記に加え、5GBASE-T(5Gbps)、10GBASE-T(10Gbps)に対応(10GBASE-Tは伝送距離に制約がある)。以前は高性能ケーブルとしてよく売られていたが、最近は後述するカテゴリ6Aの方が主流。
  • カテゴリ6A
    10GBASE-Tまで対応。現在売られているLANケーブルの主流となっている。
  • カテゴリ7、カテゴリ7A
    10GBASE-Tまで対応。RJ45ではない端子も存在する。
  • カテゴリ8(8.1)
    上記に加え、25GBASE-T(25Gbps)、40GBASE-T(40Gbps)に対応(25/40GBASE-Tは伝送距離が30mまで)。

以上を見比べると、現在主に使われている1000BASE-Tは、カテゴリ5で対応できるのがわかる。また最近広がってきている2.5GBASE-Tでさえ、カテゴリ5eで対応できる。ケーブル長はいずれも最大100mまで使用可能だ。

またカテゴリ6から7Aまでは全て10GBASE-Tに対応するとなっているのも気になる点。違いはケーブル長で、カテゴリ6では基本的に55mまでの接続としている。カテゴリ6Aであれば100mまで使用可能だ。

ケーブルの側面を見ると、カテゴリが何であるか書いてあることが多い。もし書いていない場合、筆者はコネクタ部分に油性ペンで「Cat6」などと書いておく

今はカテゴリ6Aを選べば間違いない

ユーザーが選ぶべきLANケーブルは大抵、PCのLAN端子の性能に合わせたケーブルでいい。現在は多くの家庭で1000BASE-Tが使われ、最近は2.5GBASE-Tに対応したPCが増えてきたという状況を考えると、カテゴリ5eであれば問題ない。

ゲーマーはとかく最高性能を求めるので、今だとカテゴリ8のLANケーブルを求めることと思う。カテゴリ上位のLANケーブルは下位の通信規格にも対応する。しかし残念ながら、通信規格を上回る高性能なLANケーブルを使っても、速度や安定性が向上することはない。むしろトラブルの原因になることすらあり、カテゴリ7以上のケーブルは避けるべきとまで言われる。

以上の話を総合して、「とにかく買って安心なLANケーブルはどれか」と聞かれたら、筆者はカテゴリ6A、またはカテゴリ6のケーブルをおすすめする。将来的に10GBASE-Tを使うとなっても流用できるし、それ以上の通信規格が家庭向けに使われる時期は全く見えていないからだ。

ただしLANケーブルは、カテゴリが上がるごとに価格が上がるだけでなく、ケーブルが太く固くなる傾向がある。最近は各社が苦心して細く柔軟なケーブルを出してきているので、カテゴリ6Aでも取り回しに困ることはないと思うが、使い勝手を優先したい場面では、カテゴリ5eでより細い・柔らかいケーブルを探してみるのも手だ。

さらに注意点をもう1つ。古くなったLANケーブルは、物理的に痛みが出てくる。コネクタ部分のツメが折れたまま使っている方もいるかもしれないが、ケーブルが抜けやすくなっておりトラブルの元だ。また端子部の汚れやサビも接触不良を起こすし、抜き挿しするうちにケーブルが断線することもある。

筆者の場合、何だか通信速度が遅いなと思ってLANの接続状態を確認したら、1000BASE-Tのはずが100Mbpsでリンクしていたことがある。ケーブルを挿し直すと1Gbpsになるが、PCを再起動するとまた100Mbpsになったりした。ケーブルのカテゴリは問題なかったが、端子の汚れか痛みがあったのだろう。ケーブルを交換するとトラブルは解消した。

最後に、冒頭で述べた話の答え合わせをしよう。1Gbpsの光回線で90Mbps程度しか出ない状況は、LANの接続速度が100Mbpsになっているために起こる。LAN端子(チップ)は下位互換性を持っており、LANケーブルのカテゴリが低すぎる場合には、より遅い規格で通信する。これによって「繋がっているけれど遅い」という状況が生まれる。上で述べたように、ケーブルの劣化が原因になる場合もあるので注意が必要だ。

ちなみにこのほかにも、使っているPCが古くて、PCの端子側が100Mbpsまでしか対応していないということもあったりする。そんなPCはOSが古すぎてセキュリティ的に大問題なのだが、さすがにPCゲーマーには関係のない話だと思いたい。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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