福島駅東口再開発、関連予算案を可決 市長「粛々と進めていく」

 福島市のJR福島駅東口の再開発事業を巡り、市議会は20日の6月議会最終本会議で、再開発事業見直し案の関連費用を含む一般会計補正予算案を賛成多数で可決した。事業費の膨張と中核施設の規模縮小、テナント交渉の難航で当初計画よりずれ込み、2029年度の開業を目指す中、県都の玄関口の将来を左右する再開発事業が仕切り直して本格始動する。

 採決は1人が欠席し、議長を除く33人のうち賛成20人、反対13人だった。反対討論で議員からは「説明会の参加人数は約280人で全市民の0.1%ほど。納得性を高めるために一度立ち止まってはどうか」「再開発で40億~50億円の経済効果があるとの試算があったが、楽観的な考えだ。情報公開を徹底してほしい」などの意見が出た。

 補正予算には東口に整備する複合施設のうち、公共エリアの基本設計に助言する「アドバイザー」などの費用が盛り込まれた。市議会は、アドバイザーの選定過程や助言内容を、広く市民に周知することなどを求める付帯決議も可決した。

 木幡浩市長は閉会後「基本設計や運営の企画を粛々と進めていく」と今後の対応を説明し「見直し案に関して理解が進んでいないと感じる。(市のホームページに)特設ページを開設し、市民に伝えていきたい」と述べた。

 福島駅東口地区市街地再開発組合の加藤真司理事長は「本年度中に基本設計を整えたい。同時並行でテナント誘致を進めていく」と見通しを語った。

 再開発事業を巡っては、新型コロナウイルス禍や資材高騰を受け、市と組合が当初計画から規模を縮小。事業費は当初計画比で60億~90億円増の550億~580億円程度を見込む。当初は26年度に新施設が完成予定だった。

 最終本会議では追加を含む35議案を可決した。補正総額は約30億8000万円。

 市民理解へ丁寧な説明を

 【解説】混迷を深めたJR福島駅東口の再開発事業がようやく動き出す。福島市が本格的に事業に関わった2018年から6年。事業見直しの前提となる補正予算の可決で、市役所内からは「リスタート(再出発)」との声が上がる。ただ、市議会で市長に近い与党会派からも反対が出ており、賛否が割れたままだ。市民の十分な理解を得られるよう市には引き続き丁寧な説明が欠かせない。

 再開発事業を巡っては新型コロナウイルス禍、資材高騰、完成の延期、規模縮小、ホテル誘致断念―など基本設計の着手まで紆余(うよ)曲折を経てきた。今回の補正予算はアドバイザー関連費用が計上されただけに過ぎず、施設の具体像を絞り込む基本設計やテナント誘致などの難題が残っている。

 西口のイトーヨーカドー福島店が5月に閉店し、中心市街地の空洞化に懸念の声が高まっている。当初計画の26年度完成からずれ込み、これ以上延期となれば、にぎわい再生への道が一層険しくなる。さらなる完成延期や事業費の増加で市民負担が重くなる事態を避けるため、市と福島駅東口地区市街地再開発組合は実効性のある計画を練り上げる必要がある。

 「箱物」を完成させるだけでなく、施設をどのように有効活用していくかも課題となる。木幡浩市長が繰り返し述べる「身の丈に合った施設」で最大限のにぎわいを創出するために、官民でさらに対話を重ねながら、県都の「顔」にふさわしい魅力ある施設づくりが求められる。(高橋夏実)

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