夫婦別姓ができないのは日本だけ!?多様なパートナーシップを支える「事実婚」の今を探る。

先進国において、夫婦別姓ができないのは日本だけ、といわれているのはご存じでしょうか?
女性の社会進出が広がり、中長期的なキャリアの構築が求められる昨今、夫婦別姓を求めるカップルは増えつつあります。

そうしたカップルの中には事実婚という選択肢をとる人たちも少なくありません。

そこで、今回は事実婚について、データも交えて紹介していきます。

事実婚って?どんな制度で、どのくらいの人が事実婚を選んでいるの?

事実婚は、法律上の手続きを行わずに、事実上の夫婦関係を築くことを指します。

2022年の内閣府男女共同参画白書によると、事実婚の割合は推定2-3%ということです。これは、人口に換算すると200-300万人に該当します

事実婚のメリットは、冒頭で紹介した夫婦別姓を選べること以外にも、双方、名字を変える必要がないため、名字を変更する手続きや、結婚に伴う届出、費用を省略できることがあります。結婚式や婚姻届の提出などの煩わしさをなくし、費用を抑えることができます。

また、事実婚では法律上の義務や責任が少ないため、自由な生活スタイルを維持することができるという利点もあります。

日本では同性婚が認められていないため、同性同士のカップルで事実婚を選択する人もいます。

一方で、事実婚の場合では、税金の控除、遺産の相続や生命保険の受け取りなど法律婚では使える制度やシステムを使えないというデメリットがあります。また子育てにおいても、親権が夫婦どちらかにしか与えられず、進学などの手続きが複雑になったり、片方しか保護者として登録できなかったりする場合もあります。

夫婦別姓や、同性カップルなど、やむを得ず事実婚を選ばざるを得ないカップルにおいては、安定的な関係を築くために、公正証書などを作成するカップルも少なくなく、この場合は、通常の婚姻のプロセス以上に時間的コストがかかる場合も少なくありません。

広がるパートナーシップ制度

最近では、自治体が独自に、同性のパートナー関係を公的に認める「パートナーシップ制度」を設けている場合もあります。

一部の自治体では、パートナーシップ制度を同性のカップルだけではなく、事実婚をしたいと考える異性のカップルにも適応する動きも広がっています。

日本における共同親権とは?

事実婚を選びながら子どもを持ちたいカップルを悩ませるのが、親権の問題です。現行では私生児として認知はできるもののカップルの片方しか親権を持つことができません。

2024年4月、離婚後の共同親権法案が衆議院法務委員会で可決され、注目を集めました。
日本で進んでいる共同親権の法案は、課題は多いものの、事実婚など、さまざまな家族の形を広げる可能性がある制度です。

事実婚においても共同親権が使えるようになれば、婚姻の有無に関わらず、共同で親権を持つことができれば、進学に伴う保護者登録なども法律婚と同様の手続きで対応することができます。

海外に足並みを合わせる形で進んだこの法案ですが、まだまだ課題も少なくありません。共同親権を導入している他国では、養育費の支払いが厳格にされている場合が多く、一部の国では不払いが生じた場合は、刑罰の対象となることもあります。日本においては、共同親権の導入に伴い、取り決めがなくても同居親が別居親に最低限の養育費を請求できるような制度は検討されていますが、強制力はありません。厚生労働省の2021年の調査によると日本においての養育費の支払い状況は、母子家庭で28.1%、父子家庭で8.7%と低水準となっています。

養育費の問題などもあり、共同親権の導入は、賛否両論を呼んでいます。共同親権の導入は多様なパートナーシップを支える制度ですが、子どもたちの生活に大きく影響のある制度のため、慎重に検討していくことが求められています。

おわりに

日本においては夫婦別姓や同性婚など多様なパートナーシップを法律で支える制度がまだまだ不足している中で、事実婚が広がりつつあります。

自治体などの単位ではパートナーシップ制度が導入されていますが、公的な手続きの場面では、まだまだ困ることも少なくありません。

一人ひとりが自分らしく生きるための制度が、これから整っていくことが望まれています。

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