阪神 盗塁数減「仕方ない」再開リーグ戦は“虎の足”に注目 近本&中野1、2番コンビ復活で“速攻撃” 糸井嘉男氏が期待

 1、2番に戻った近本(左)と中野

 阪神、オリックス、日本ハムで活躍したデイリースポーツ評論家・糸井嘉男氏(42)の「超人目線」。今回のテーマはリーグ戦再開に向けて。15日・ソフトバンク戦(みずほペイペイ)から近本、中野の1、2番コンビが復活したことで糸井氏は走塁に着目した。通算300盗塁を誇り、オリックス時代の16年には53盗塁でタイトル獲得。盗塁だけでなく、一つ先の塁を狙う意識の重要性を語った。

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 阪神の交流戦は7勝11敗と負け越してしまいましたが、打線が苦しむ中で踏ん張った印象です。セ・リーグでは首位・広島と2.5ゲーム差の2位につけています。18日・日本ハム戦でサヨナラ勝ちして貯金2に戻したことも大きいですね。

 交流戦の終盤、ソフトバンク3連戦から本来の攻撃を取り戻しつつあるように感じています。初戦で近本選手が11試合ぶりの盗塁を決めると、翌日も初回に二盗を成功させました。この2戦目から近本選手、中野選手の1、2番コンビが復活。3戦目には中野選手が初回1死一塁から二盗。ソフトバンクバッテリーを揺さぶり、前川選手の満塁弾を呼び込みました。

 ここまでチーム盗塁数21はリーグ6位とのことですが、仕方ない部分もあると思います。開幕から打線が低調で、5月以降はテル、ノイジー選手、大山選手と主力が相次いで、2軍降格となりました。何とか点を取るために近本選手を4番に入れるなど、ベンチのやりくりは大変だったと思います。近本選手も本来のトップバッターから役割が変わり、難しさもあったと思います。

 僕も経験がありますが、盗塁というのは簡単ではありません。近本選手のように何度も盗塁王になっている選手に対して相手バッテリーの警戒が強くなりますし、走りづらくもなります。体への負担、ケガのリスクも負って勇気を持ってスタートをきっているのです。

 近本選手、中野選手の2人には“あ・うん”の呼吸もあるでしょう。先制を許した試合は9連敗中だそうですが、1軍に合流した大山選手、テル、森下選手が本調子になれば役割も明確になります。初回から1、2番の足を生かした“速攻撃”に期待できそうです。

 そういう意味では足のスペシャリストもキーマンと言えそうです。ここまで植田選手は盗塁0、熊谷選手も1個にとどまっています。試合終盤、勝負どころの盗塁はムードをグッと高めてくれますし、攻撃のバリエーションが広がることで逆転勝ちにもつながっていくはずです。僕も現役の頃、守備と同じくらい走塁を大事にしてきました。走塁は盗塁だけではありません。一つ先の塁を狙う姿勢も大切な要素です。日本ハム戦ではミスもありましたが、阪神はもともと走塁への意識が高いチームです。ミスの怖さを痛感すると同時に、再確認できる機会になったのではないでしょうか。躍動感たっぷりに塁上をかき回す、“虎の足”に注目しましょう!

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