4度募集しても集まらず…土木職員の確保へ 自治体があの手この手 試験内容の見直しや採用年齢拡大も

土木職員の採用に工夫を凝らす広島県呉市役所

 中国地方の自治体が土木職員の採用に苦労している。災害復旧やインフラ点検を指揮する専門職員の不足がもたらす地域への影響は計り知れない。試験内容の見直しや採用年齢の拡大など、人材の確保に向け工夫を凝らす自治体が増えている。

 「人口が減る中、少ない人材を官民で取り合っている。選んでもらえるよう知恵を絞りたい」。昨年度、9人募集し2人しか採用できなかった広島県呉市の担当者は危機感をにじませた。4度募集しても人数は集まらなかった。同市は本年度、経験者採用の対象年齢を25歳以上から20歳以上に引き下げ、職務経験の条件も5年から2年に縮めた。

 本年度は採用に向けた受験条件の見直しが他の自治体でも相次ぐ。山口市は試験区分を「大学卒業程度」から「大学・短大卒業程度」に変更して間口を広げる。広島県福山市は経験者採用の受験資格の上限を45歳から60歳まで引き上げた。

 民間企業をライバルとみて対策を取る動きも。山口県は、より早く合否を出す「やまぐち型試験」で、民間企業の試験で使われる適性検査を導入し、専門知識を問う試験の実施をやめた。都合の良い時間や場所を選んで受験できる方式も導入。辞退者を減らすため、内定者や保護者との交流会も開いている。

 岡山県倉敷市などは仕事内容をイメージしやすいよう、動画や交流サイト(SNS)での紹介に注力。広島市は今夏のインターンから、土木職志望の学生が実務に近い業務を体験できるメニューを導入する。岡山市は若手の待遇改善のための初任給調整手当として、入庁5年目まで毎月2500円を支給する。

 若者の就業意識に詳しい広島経済大の江成穣助教(地域経済学)は「行政の土木職は業務の具体像がイメージしにくい面もある。やりがいや社会的な意義を発信しイメージアップにつなげる努力が必要だ」と指摘する。

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