郵便局で受診できます 山口県周南市で全国初、無医地域で7月から 週1回対面かオンライン

高瀬郵便局

 山口県周南市は20日、医療機関がない市北西部の和田地区で、郵便局を活用して住民を診療する全国初の取り組みを7月16日に始めると発表した。地区の高瀬郵便局にある相談用の個室を「和田巡回診療所」として運用。約11キロ離れた鹿野診療所(同市鹿野上)の長沼恵滋医師(40)が週1回、対面かオンラインで診る。市は「遠くまで通院していたお年寄りたちの負担軽減や安心感につながる」と説明する。

 診療は毎週火曜日。対面は月1回で、長沼医師と看護師が訪れる。オンライン診療は郵便局と鹿野診療所をつなぎ、パソコンの画面越しにやりとりする。機器の操作などは同局職員がサポートする。

 利用者は受診後、市内の薬局からオンラインで服薬の指導を受ける。処方薬は自宅に届けられる。診療代や薬代は後日支払う。本年度の事業費は約90万円。

 中山間地域の和田地区は人口1037人で高齢化率は57・3%(5月末時点)。長沼医師の祖父の芳季氏が営んだ医院が2016年に閉じ、医療機関のない状態が続いていた。市地域医療課によると、住民は自身の運転や家族の送迎で地区外に通院しているという。市は本年度、地区外も含め約50人の利用を見込む。

 同課によると、新型コロナウイルスワクチン接種の予約や周知などで市内の郵便局と連携。地域医療に関する問題意識を共有し、相談室を設けている高瀬郵便局の協力を得たという。

 藤井律子市長は「郵便局は(地域との)信頼を基にいろいろしてくれている。協力して課題が解決できるのはうれしい」と述べた。初日の7月16日は式典のみとし、23、30日は対面診療を予定している。

© 株式会社中国新聞社