沖縄戦時の朝日新聞展示 沖縄市の諸見民芸館 戦意高揚の見出し並ぶ

 「沖縄本島に敵上陸」「ロケット弾に乗って敵艦船群に体当り」「敵出血三千八百」―。

 沖縄戦を伝える、当時の朝日新聞を諸見民芸館(沖縄市)の伊禮吉信館長(76)がこのほど入手した。戦果を誇示し戦意高揚を図るような見出しが突出する紙面で、伊禮館長は慰霊の日に合わせて掲示するとして、鑑賞を呼びかけている。

 県内で自衛隊の増強や米軍基地の機能強化が進む中、伊禮館長は「戦争一色の新聞は戦争と平和の問題を考える貴重な資料」と指摘した。

 入手した朝日新聞は1945年4月2日から5月末までの間に発行された9日分。特に5月29日の紙面はほぼ沖縄の戦況一色の紙面。1面には「皇軍独得の新兵器」の見出しの記事に「噴射推進式の人間爆弾」の用語があった。伊禮館長は「戦争は尊い命を物と見ていたのではないのか。人間爆弾に一番衝撃を受けた」と顔を曇らせた。

 紙面中央には沖縄に向かう「神雷特別攻撃隊出撃」と、出発前に訓示を受ける乗組員の大きな写真が配置されている。各紙面には「沖縄決戦に総進撃せん」「共同の敵に共同の力で」などの社説を掲載し、日本軍の戦果を誇示、国民を鼓舞する内容の表現があふれる。ヒトラー総統死去のニュースもある。

 当時、日本軍は物量で圧倒的に不利な戦況だった。伊禮館長は「太平洋戦争、沖縄戦を報道するマスコミの在り方を検証する資料にもなっている。沖縄戦の悲惨な体験から戦争は絶対駄目だ」と語気を強めた。

 (岸本健通信員)

※注:伊禮信吉館長の「禮」はネヘン

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