移民の急増は経済を押し上げ、赤字を減らす。アメリカ議会予算局が予測

アメリカ連邦議会議事堂

移民の急増は、アメリカの経済を押し上げることになるだろう――。

米連邦議会予算局(CBO)は6月18日、2月に発表した「予算および経済見通しの年次報告」の更新版で、移民が経済に与える影響についての予測を発表した。

「予算および経済見通し」は、今後10年間の経済・予算見通しを示す年次報告書だ。

CBOは更新版で「その他の外国人」に分類している移民の数が近年急増していると解説。その結果、労働人口が増えて経済を押し上げるだろうという見通しを示している。

「その他の外国人」には、滞在許可を得ずに入国した人や、在留期間切れの非正規滞在者も含まれる。

CBOは従来「その他の外国人」の数を毎年約20万人と予測していたものの、その数は2022年には190万人、2023年は240万人に急増したという。

2024年も240万人と予測されているが、2025年以降は減少し、2026年には以前のレベルまで減少する見通しだ。ただし、CBOは予測には不確実性が伴うとしている。

この移民急増が経済にどのような影響を与えるのか。CBOは分析するために2024年〜2034年までの移民の数が従来通り年20万人だった場合と、急増数を考慮に入れた場合を比較して、経済の先行きと予算を予測した。

その結果、両者の差は8.9兆ドルで、GDP(国内総生産)が2.4%増加する計算になったという。

このうち大部分を占める7.8兆ドルは人口増加によって生じるもので、労働人口の割合と生産性の増加も経済にわずかなプラスとなると考えられている。

一方、CBOは移民の増加が低賃金の雇用増加にもつながると予想している。この理由について、次のように説明している。

「労働者の増加により、特に学歴が12年以下の労働者の賃金が押し下げられる。この傾向は米国市民などに比べて、雇用主との交渉において立場が弱い急増する移民に顕著に表れる」

ケンタッキー州の農場で働くメキシコ出身の契約労働者フェルナンド・オソリオ・ロヤさん(左)とミゲル・アンヘルさん(右)(2024年3月12日)

労働者の増加は税収増につながると指摘

移民問題は、2024年アメリカ大統領選挙の争点の一つだ。

バイデン大統領は6月、南部メキシコとの国境管理を強化した一方で、米国市民と結婚している非正規滞在の配偶者らが永住権を取得できるようにする政策を発表した。

これに対し、共和党は移民に寛容なバイデン氏の政策が非正規移民の流入防止を妨げていると非難している。

新型コロナ感染症が拡大した後、アメリカは長期金利を引き上げながらも不景気に陥っていない。経済学者たちはこの理由を解明する鍵として、移民に注目するようになっている。

CBOのフィリップ・スウェーゲル所長は、「2033年の労働力人口は520万人に増加するが、そのほとんどは移民によるものである。労働者の増加は生産量の増加を意味し、ひいては税収増につながる」と2月の報告書で述べている。

CBOは、移民増加で経済規模が拡大すれば、連邦政府予算が改善される一方で、州や地方自治体は収入より支出が増え、財政が圧迫される可能性があるとも予測している。

CBOの試算では、移民の増加により連邦政府は10年間の赤字を約9000億ドル削減できる。これは大きな額ではあるが、CBOが予測している今後10年間に連邦政府が抱える20兆ドル以上の負債に比べればわずかな金額だ。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

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