『虎に翼』“家族”として受け入れられた道男 “魔女5”が再集結するも喜べない展開続く

亡くなったはる(石田ゆり子)が骨壷に入って、猪爪家に帰ってきた。『虎に翼』(NHK総合)第60話は、残された未来を生きる者たちの物語。もう一人ではない道男(和田庵)がこれからどう生きていくのかに注目が集まる。

道男が言い寄った花江(森田望智)に頭を下げる。猪爪家の人になりたいという思いから、花江の大事な人の代わりにと申し出たが、道男がなりたいのは直人(琉人)や直治(楠楓馬)、優未(金井晶)のような立場だった。寅子(伊藤沙莉)の「産んであげることはできないけど、もうおおむね同じようなもんよ」という言葉に、花江も「これから先はもっとそうなっていく。それじゃ駄目かな?」と道男に投げかける。言葉に甘えてそのまま猪爪家で暮らしていく選択もあっただろうが、道男は首を横に振った。かつては道男を拒絶していた直人がご飯作りに誘う姿からも、すでに家族として受け入れられていることを感じさせる。

道男の引き取り手は、なんと裁判傍聴でおなじみの笹山(田中要次)に決まった。東京で店を再開するのに、人手がいる。道男を住み込みで雇ってくれることになった。「一人前になったらさ、一番にみんなに寿司ごちそうするよ。特上のやつ」と威勢のいいところは道男らしいが、そんな道男のこともお天道様はちゃんと見てる。これから更生して、独り立ちしていくことが、はるへの親孝行でもあると、道男は思ったのではないだろうか。試験観察の結果、道男は不処分の審判が下った。自分で立ち直ることができると認められたのだ。「愛が理想を超えて奇跡を起こす」と多岐川(滝藤賢一)もすっかり満足そうである。

寅子と花江が、釜戸の火の中にはるの何冊もの手帳をくべていく。日記代わりだった手帳を燃やすことが、はるの遺言だった。唯一見ることが許された最後の日記には、「子供らの将来のために貯蓄・節約」と今後10年の貯蓄計画が書かれており、そこに添えられた「寅子ならこのあたりまでいけるはず」という一文には寅子への期待と母親としての愛情が滲んでいる。寅子の脳裏に蘇る、はるとの思い出。そこにいるのは、常に寅子を思いやる母としての姿だ。「迷惑と心配ばっかりかけて。でも、私のお母さんがお母さんでよかった」と寅子と花江は母親の優しさに包まれながら、はるを弔っていく。涙でぐしゃぐしゃの伊藤沙莉と森田望智の自然な仕草、言葉運びに観ているこちらももらい泣きしそうになってしまう。

道男を引き取るべきなのか悩む寅子に、よね(土居志央梨)は「いつ、いなくなるか分からんやつの言葉は届かない」と一蹴する。「こっちの道には二度と戻ってくるな」と告げ、寅子が地獄の日々に幕を降ろした時、よねは心の底から傷ついていた。影から話を聞いていた轟(戸塚純貴)が「だから怖いんだな、また関わるのが」と代弁する。よねもまた「もう私しかいないんだ」と、かつての寅子が感じていた孤独を内に秘めていたのかもしれない。「生きてりゃ道が離れることもまた交わることもあるさ」と言葉をかける轟に、よねは一点を見つめたままだ。

よねだけでなく、“ヒャンちゃん”こと崔香淑、改め汐見香子(ハ・ヨンス)が再登場するなど、徐々に“魔女5”の面々が姿を見せ始めており、第60話のラストにはついに梅子(平岩紙)が登場。轟の言う通りに「また交わることもある」と言いたいところではあるが、姑の大庭常(鷲尾真知子)が短い時間ながら梅子に厳しく冷たい視線を送っているシーンからは、香子と同様に心から喜び合える再会とはならなそうだ。
(文=リアルサウンド編集部)

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