地元の温泉は「入湯税」が150円でしたが、県外だと「50~100円」でした。なぜ温泉に入るのに「税金」がかかるんですか? 地域によっては安い場合もあるのでしょうか?

入湯税はどんな税金なの?

入湯税は、温泉がある市町村それぞれに入湯税を支払う対象者や税金額を決めている「地方税」なので、地域によって入湯税の金額が違います。総務省「令和6年度地方税に関する参考計数資料」によると、令和4年度での入湯税の収入は全国合計で約194億3800万円(令和3年度は約141億900万円)です。

令和6年5月1日現在での日本の人口は約1億2400万人(概算値)で、令和4年度での入湯税収入約194億3800万円を人口で割ると、入湯税を1人あたり約156円負担した試算になります。

入湯税の金額はどのように決められているの?

温泉で入湯する人に対して、総務省が入湯税の標準額を1人1日150円と決めており、これをもとに市町村それぞれに1人50円から500円程度の税額を決めています。日帰り入浴や宿泊を行っている事業者(温泉施設や旅館など)が入湯客から入湯税を集めたうえで、市町村にまとめて納めています。

日帰り温泉入浴の場合は、温泉施設での1回の入湯について入湯税を支払う必要があり、温泉巡りで複数の温泉施設を利用した場合は、その都度入湯税の支払いが必要です。

入湯税が課税されない人は市町村によって対象が異なり、例えば、静岡県熱海市では12歳未満、修学旅行で入浴する学生、利用料金1000円以下の温泉浴場を利用する人などは入湯税が課税されません。

このほかに、宮城県大崎市では、水道水(真水)のみを使っていて温泉(鉱泉)を使っていない施設だと入湯税は課税されません。

令和4年度での入湯税収入が多い市町村トップ3は、1位「箱根温泉郷(神奈川県箱根町)」で約5億5412万円(前年約4億831万円)、2位「別府温泉郷(大分県別府市)」で約4億2691万円(前年約2億5939万円)、3位は「熱海温泉(静岡県熱海市)」で3億5862万円(前年約2億4343万円)でした。

それぞれ前年を上回っており、コロナ禍の収束などによる観光需要の高まりとともに入湯税収入も増えたといえるでしょう。

入湯税はどんなことに使われている?

入湯税は、どんなことに使われているのでしょうか。

例として入湯税収入が全国1位の神奈川県箱根町では、令和6年度での入湯税の使い道として「環境衛生施設の整備」に約4億4333万円(入湯税収入総額の約64.9%)、「観光の振興・観光設備の整備」に約2億876万円(30.6%)、「消防設備などの整備」に約3061万円(4.5%)を充てています。

もっとも支出が多い「環境衛生設備の整備」は、主にゴミ処理施設の維持管理と下水道整備などに、「観光の振興・観光設備の整備」は、主に誘客宣伝と観光街路灯の整備などに使われています。

まとめ

入湯税は温泉がある市町村それぞれに税金額などを決めている「地方税」で、令和4年度の入湯税収入額は全国合計で約194億3800万円でした(人口1人あたり約156円)。

温泉利用者から集めた入湯税収入は主に、安全で快適に温泉入浴を楽しめる環境維持に使われています。入湯税は、将来も長く温泉入浴を楽しめるように使われる税金であるといえるでしょう。

出典

総務省 令和6年度地方税に関する参考計数資料 10 地方税の税目別収入額及びその割合の推移
総務省統計局 人口推計 2023年(令和5年)12月確定値、2024年(令和6年)5月概算値
総務省 入湯税
一般社団法人 日本温泉協会 入湯税収入額が多い市町村ベスト30(2022年度)

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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