イスラエル軍報道官、ハマス壊滅は不可能と発言 ネタニヤフ氏との亀裂拡大

イスラエル国防軍(IDF)のハガリ報道官/Gil Cohen-Magen/AFP/Getty Images

(CNN) イスラエル国防軍(IDF)のハガリ報道官はこのほど、パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスを「消滅」させることはできないと述べ、政府の戦闘目標であるハマス壊滅を達成することが可能なのか疑問を投げかけた。これに対し、イスラエルのネタニヤフ首相からは厳しい叱責(しっせき)の言葉が寄せられた。

ハガリ報道官は19日、イスラエルのテレビ局「チャンネル13」とのインタビューで、「ハマスを壊滅、消滅させることができるという考えは、国民の目に砂をかけるようなものだ」と発言した。

ハガリ氏の発言に対し、イスラエル首相府からは鋭い反応が寄せられた。首相府は、イスラエルの安全保障内閣は「ハマスの軍事・統治能力の破壊を(ガザでの戦闘の目的の一つとして)定義している」と説明。「当然ながら、IDFはこれに注力している」と述べた。

IDFはその後、ハガリ氏の発言について説明を試み、軍は政府の戦争目標に注力していると確認。ハガリ氏は単に「一つの思想、一つの概念」としてのハマスに言及しただけだと主張した。

IDFはハガリ氏の発言を和らげようと試みているものの、イスラエル政府と軍の間では亀裂が深まっているように見える。ネタニヤフ氏に対しては、政権内や米国を含む同盟国から、イスラエル軍の激しい爆撃を受けるガザ地区の戦後統治に向けた戦略を考案するよう圧力が強まっている。

ハマスの戦闘員が1200人以上を殺害し、約250人を人質に取った昨年10月7日の攻撃を受け、イスラエルはガザでの戦闘を開始。戦闘の主な目標として、人質奪還とハマスのガザ統治能力の破壊、ガザからの攻撃の再発防止を挙げた。

しかし戦闘開始から8カ月経った今、戦闘はさらに長期化する見通しだ。ハガリ氏の発言は、イスラエルの軍事作戦ではこうした目標を達成できないかもしれず、ハマスが強力な思想勢力として残存する可能性があるとの懸念の深まりに呼応している。

© 朝日インタラクティブ株式会社