鮮烈な印象を世界に与えてから約1年。苦境を乗り越えた宮澤ひなたが、トップスピードに乗って敵陣を切り裂く姿が待ち遠しい【パリ五輪の選ばれし18人】

パリ五輪開幕まで約1か月となった。ここでは12年ぶりのメダル獲得を目ざす日本女子代表の選ばれし18人を紹介。今回はMF宮澤ひなただ。

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世界を驚かせたスピードスターが完全復活へ。なでしこジャパンが出場するパリ五輪のメンバー18人に、昨年の女子ワールドカップで大ブレイクした宮澤ひなたも名を連ねた。

宮澤といえば、何といっても昨年の女子W杯で得点王に輝いたことが記憶に新しい。特にグループステージのスペイン戦で見せた高速カウンターで敵陣を切り裂いていく姿は、強烈なデモンストレーションになった。

5得点を挙げた宮澤は、大会後にイングランド・ウィメンズ・スーパーリーグのマンチェスター・ユナイテッドへ移籍。サッカーファンなら誰もが知る赤いユニホームに身を包み、大きなステップアップを遂げた。

しかし昨年12月、なでしこジャパンのブラジル遠征中に相手選手との接触プレーで、苦悶の表情でピッチに倒れ込んだ。右足を押さえて交代となった宮澤への診断は、足首骨折という重傷。年が明けて2月のパリ五輪アジア最終予選への出場は絶望となり、パリ五輪までの復帰も危ぶまれた。

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それでも宮澤は3月末にクラブでの試合でピッチに立つと、なでしこジャパンのパリ五輪メンバー発表前の最終活動となったスペイン遠征で代表復帰。ニュージーランドとの2試合で、第1戦は約60分、第2戦は約75分プレーして回復をアピールした。パフォーマンスは昨年の好調時には及ばなかったが、トップフォームを取り戻す時間は残されている。

宮澤は神奈川県の星槎国際高校から2018年に日テレ・ベレーザに加入。21年秋のWEリーグ開幕前にはマイナビ仙台レディースに移籍した。世代別代表では2016年のU-17女子W杯で準優勝、18年のU-20女子W杯では優勝を経験した。この時のメンバーでは長野風花ら多くの選手が今回の五輪メンバーに選出され、中核世代になっている。

宮澤の持ち味はスピードを活かしたドリブル突破で、3バック採用時は2シャドーの一角が主戦場になる。特に左のシャドーに入り、中へのカットインを相手に意識させながら縦に突破していくプレーは際立つものだ。超攻撃的な布陣を取るならウイングバックでの起用も選択肢になるだろう。4バックの場合は左ウイングでプレーすることが予想される。

鮮烈な印象を世界に与えてから約1年、大きな苦境を乗り越えてきた宮澤の前には、昨年の女子W杯で自らの名前を世界にアピールしたスペインとの再戦もある。期待されるのは、トップスピードに乗って相手の守備陣を切り裂いていく姿。その復活劇が、なでしこジャパンを悲願の金メダルへと導いていく。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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