「税金が増えるのだけは勘弁して」手取り19万円・30歳会社員…物価上昇下の〈キツい生活ぶり〉

(※写真はイメージです/PIXTA)

日本に渦巻く老後不安。少子高齢化も進むなか、サラリーマン世代は悲鳴をあげています。厚生労働省『2022年 国民生活基礎調査の概況』などとともにみていきます。

手取り19万円・30歳会社員「税金や社会保険料が高すぎる」

「30歳で手取り19万円」と聞くと、「少ないな」と感じられるでしょうか。しかしこれは決して珍しいことではなく、経済的な厳しさが若年層を中心に広がっています。

厚生労働省『2022年 国民生活基礎調査の概況』によれば、全世帯の平均所得は545万7,000千円ですが、その中央値は423万円であり、実際には多くの家庭が平均所得に達していないことが示されています。この現実は、給与水準の低さや生活費の高騰に加え、経済的な不安が若年層の将来に大きな影響を与えていることを物語っています。

30歳の誕生日を迎えたばかりの田中さん(仮名)の、毎月の手取りは19万円。大きな不満を抱えていると語ります。

長年努力してきましたが収入は期待するほど増えず、将来への不安が募るばかりです。「もう30歳なのに、手取りが20万円に満たないなんて…」と嘆く田中さんのような会社員は、今や少なくありません。

田中さんの給与明細を見ると、基本給は25万円。しかし、社会保険料や所得税、市民税などが差し引かれると、手取りは19万円程度になります。この手取り19万円で家賃、光熱費、食費、交通費、通信費などを賄うと、ほとんど余裕は残りません。彼は「税金や社会保険料が高すぎる」と感じています。

田中さんの月々の支出を見てみましょう。

家賃:7万円

光熱費:1万円

食費:3万円

交通費:1万円

通信費:1万円

その他雑費:2万円

これだけで、既に15万円が消えてしまいます。残りの4万円で貯金や娯楽費、予期せぬ出費に備えなければならないのです。

最近の税制改正で所得税率が上がり、社会保険料も引き上げられたことが田中さんの家計に大きな打撃を与えています。「税金が増えるのだけは勘弁してほしい」と彼は切実に語ります。特に、手取りが少ない中での税負担は、生活の質をさらに低下させています。

さらに、日用品や食料品の価格が上昇していることも、田中さんの生活を圧迫しています。物価上昇は、消費者物価指数(CPI)にも表れており、過去数年間で着実に上昇しているのが現状です。これに対して、給与の上昇は追いついていません。「物価はどんどん上がっているのに、手取りが変わらないのは理不尽だ」と田中さんは不満を漏らします。

「このままでは、結婚や子どもを持つ夢は…」

田中さんの最大の悩みは、将来のことです。彼は結婚を考えているものの、現在の収入では家庭を持つ自信がありません。子どもを育てるには、さらに多くの費用がかかることは明白です。「このままでは、結婚や子どもを持つ夢は実現できないかもしれない」とため息をつきます。

企業側の対応も重要です。田中さんの働く企業では、給与改定の機会は年に一度あるものの、上昇率は微々たるものです。人事部門への訴えも効果がなく、昇進の見込みも薄い状況です。田中さんは、キャリアアップのために資格取得やスキルアップを目指していますが、そのためには結局、時間とお金が必要になります。

田中さんの不満は給与だけに留まりません。職場でのストレスも大きな要因です。仕事量は増えているのに給与は据え置き、上司や同僚との関係にも悩んでいます。特に、上司からのプレッシャーや過剰な業務要求に耐えながら、少ない給料で生活を維持するのは精神的にも厳しいものです。

こうしたケースは決して珍しいものではありません。多くの会社員が、労働環境や給与に対する不満を抱えています。企業側には、労働環境の改善や給与の見直しを求める声が高まっています。田中さんは、「働きがいを感じるためにも、企業は従業員の待遇をもっと考えるべきだ」と強く訴えています。

多くの会社員が、少ない手取りでの生活に苦しみ、将来への不安を抱えています。

厚生労働省『2022年 国民生活基礎調査の概況』によると、1世帯当たりの平均所得は545万7,000円。世帯主の年齢階級別に見ると、30〜39歳の平均所得は377万5,000円です。

また分布図をみてみると、「200万~300万円未満」が14.6%、「100万~200万円未満」が13.0%、「300万~400万円未満」が12.7%と、所得300万円未満の世帯が最も多くなっています。中央値は423万円。平均所得金額(545万7,000円)以下の割合は61.6%と過半数を超えています。

手取りではここから8割弱程度に減ってしまいますから、生活が苦しいのも無理はありません。

さらに生活意識について、51.3%の世帯が「苦しい」(「大変苦しい」または「やや苦しい」)と回答しています。結婚や子どもを持つことに対する心理的障壁が高くなっていると言えるでしょう。

政府や企業には、若年層の経済的負担を軽減し、給与の適正な見直しや税負担の軽減策を講じることが求められます。また、労働環境の改善やキャリアアップの機会を提供することも重要です。これにより、若年層が安心して将来を見据えられる社会を築くことが可能となります。

政府や企業がこの問題に取り組み、給与改善や税負担の軽減を図ることが求められます。サラリーマンたちは「税金が増えるのだけは勘弁してほしい」と強く願いながら、今日も仕事に励んでいます。

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