【博多ストーカー殺人】「禁止命令」が出されていた男 2人の出会いから事件当日の時系列 検察の冒頭陳述を詳しく 福岡地裁

【画像】博多ストーカー殺人「禁止命令」が出されていた男 2人の出会いから事件当日の時系列 検察の冒頭陳述を詳しく 福岡地裁

JR博多駅近くで元交際相手の女性をストーカー行為の末、包丁で何度も刺し殺害した罪に問われた男の裁判員裁判が17日から、福岡地裁で続いています。検察の冒頭陳述を詳しく見ていきます。

検察は17日の冒頭陳述で、まず、争点を2つ挙げました。

1つめはストーカー規制法違反が成り立つかどうか、2つめは量刑です。

その上で、2人の関係からひもといていきました。

検察の冒頭陳述によりますと、殺害された川野美樹さん(当時38)は2020年10月ごろ、平日は会社員として働き、週末は接客の仕事をしていました。

2021年12月ごろ、寺内進被告(32)が川野さんが働く店の系列店で働き始め、2022年4月ごろ、この店を訪れた川野さんと知り合い交際が始まりました。

その後、寺内被告は川野さんの浮気を疑い、行動を束縛するようになります。このため川野さんは嫌気が差し、交際の解消を望むようになりました。

2022年10月21日から23日にかけて、寺内被告は川野さんの浮気を疑い携帯電話を取り上げたり、待ち伏せしたりしました。また、川野さんの携帯電話に川野さんのプライバシーを侵害するものを含む写真や動画を大量に送信しました。

川野さんは愛想を尽かして交際関係は破綻し、2022年10月24日、警察に相談しました。警察はその日のうちにストーカー規制法に基づき、つきまといをしないよう寺内被告に警告しました。

2022年11月10日から21日にかけて、寺内被告は川野さんが勤務する会社で待ち伏せしたり、居酒屋で復縁を求めたりしましたが拒まれ、川野さんが週末に働く店にも押しかけました。

そして2022年11月23日、午前4時すぎに3回にわたり、川野さんに携帯電話に電話をかけます。川野さんは着信拒否をしていました。

さらにこの日、午前2時半ごろから午前4時すぎにかけて、川野さんにLINEメッセージを5通、送信しました。

「おばはん、警察に何言うた」

「おどれ何年掛かってでも恨んだるから覚えとれや」

「お前今家の近くの喫茶店おるから6時に来いや」

「おばはんあんま舐めてると後悔すんぞ わしはしつこいからの」

この日の午前9時半ごろ、寺内被告は、川野さんの勤務先の会社に電話をかけます。従業員に対し「川野係長おる。あの女は人の人生めちゃくちゃにして謝罪なしか。あの舐めた女に言っとけ」と話しました。

2022年11月26日、従業員から話を聞いた川野さんは警察に相談しました。警察はこの日のうちに、ストーカー規制法に基づき、繰り返してつきまといをしてならないとする禁止命令を寺内被告に出しました。

検察は、川野さんから2度にわたりストーカーとして警察に被害申告されたことに寺内被告が立腹し、川野さんに対するいらだちを募らせ、会って文句を言い、謝罪させたい、返答いかんによっては殺すかもしれないなどと考えたと指摘しました。

そして、事件当日の2023年1月16日。寺内被告は手提げバッグに包丁を入れ、自宅を出ました。

午後6時1分、川野さんは勤務先の会社を出て、家族にこれからJRで帰宅する旨のLINEメッセージを送信しました。

午後6時3分、寺内被告は福岡市博多区の歩道で立ち止まり、川野さんを待ち伏せします。

午後6時6分、帰宅途中の川野さんを発見して近づき、川野さんの傘に自分の傘をぶつけ「おい」などと声をかけました。この様子は近くのホテルの警備員が目撃していたといいます。

そして、博多駅に向かって歩いていた川野さんに173メートルにわたりついていきました。その間、警察に被害申告したことへの文句を言い、謝罪を求めるなどしました。

午後6時13分、川野さんから「離して、しつこい。警察で話そう」と言われ激高し、殺意を持ってバッグから包丁を取り出しました。正面に立っていた川野さんに対し、逆手に持った包丁を振り下ろして胸を突き刺し転倒させ、うつ伏せの頭、首、背中などを少なくとも17回突き刺しました。

これを通行人が一部、目撃していました。

川野さんは多数刺切創による失血で、その場で死亡が確認されました。

寺内被告は包丁をバッグに入れ、その場から逃走しました。

以上は、検察による冒頭陳述の内容です。

その上で、検察は2つの争点について次のような主張を展開しました。

1つめは、ストーカー規制法違反が成り立つかどうかについてです。

寺内被告が川野さん殺害の直前に職場近くの路上に立ち止まり、その後、博多駅に向かって歩く川野さんについていったことが「待ち伏せ」や「つきまとい」に該当するかどうか。

弁護人は寺内被告が川野さんと接触したのは偶然だったと主張するが、果たしてそうか。川野さんと会えると予想・期待していたのではないかとして、以下の要素に着目してほしいと指摘しました。

▽立ち止まっていた時間の長さや場所、時間帯

▽川野さんとの関係や、これまでの経緯

▽川野さんについていった距離

▽川野さんに対する言動

そして、2つめの争点の量刑については、川野さんがストーカー規制法に基づき最大限の措置をとったのに、寺内被告がそれを逆恨みしたもので、川野さんにはこれ以上どうすることもできなかった、法治国家に対する信頼を損ないかねない、法治国家に対する挑戦というべき重大な類型の事件であると強調しました。

そして、

▽悪質性が極めて高い

▽結果が極めて重大である

▽動機に酌量すべき事情がないとして、

厳しい非難に値するとしました。

さらに、2022年8月に、川野さんに声をかけた男性の顔を殴り顔の骨を折るなど7か月の大ケガをさせた傷害事件で、寺内被告が有罪になったとして、これを加えて量刑を判断することを求めました。

寺内被告は法廷で、殺害については認めた一方、「待ち伏せと言われるのは違う」とストーカー行為については否認しています。

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