ジ・エンプティ 主催ツーマンイベント“ロマンティックナイト” HERO COMPLEX を迎えた東京編をレポート

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Text:ヤコウリュウジ Photo:Ruriko Inagaki

福岡県久留米市発の青春ロックバンド、ジ・エンプティによるツーマンイベント“ロマンティックナイト”の東京編が6月13日(木)にSpotify O-Crestにて開催された。6月5日(水)には地元である福岡でヤングオオハラと対峙したが、この日ゲストとして招いたのは同じ福岡県を拠点に活動し、先輩でもあり憧れの存在でもあるHERO COMPLEX。九州のバンド同士が東京で真正面から激突するという貴重な機会であり、両バンドの勢いを物語るようにチケットはソールドアウト。スタート前から汗ばむような空気に包まれていた。

「ヒーローが来たぞ!」と三木風太(g/vo)が大声を上げ、「Feel so good」からスタートしたHERO COMPLEXは、とにかく情熱的に前のめりなスタイル。同じ福岡、特別かわいがっている後輩だというジ・エンプティに見せつけるよう、持っているすべてをこのステージに刻み込もうとする姿勢がいい。大汗をかきながら骨太なサウンド感で曲を放ち、観客へ語りかけ、フロアからはシンガロングが止まらない。
ダイバーも続出した「花火」、ひと呼吸入れて少しスイッチを切り替えてからプレイした「そうだった」等を披露していき、「一緒に九州を盛り上げていこうぜ!」とジ・エンプティにエールを贈ってから鳴らした「Remember」は印象的な1曲。この場所にたどり着いたバンドと観客へ向けるように“今日みたいな日があるなら/僕らはまだ死ぬわけには行かないよな”と響かせたフレーズは実に鮮烈だった。

そして、尊敬する先輩が生み出した熱気が充満する中に登場したジ・エンプティは血気盛んな勢いでスタートを切るのかと思いきや、まずは弾き語り調で「神様からの贈物」を歌い上げるという幕開け。ギターのアルペジオに乗せてハルモトヒナ(vo)が言葉を大切に紡ぎながら観客をグッと惹きつけていく。「オレらの青春ど真ん中、北九州HERO COMPLEX。それを今日、倒しに来ました」とヒナがライブ中に宣言したように、中途半端な気持ちで胸を借りるつもりはない。持っているモノすべてを使って勝ちに行くのだ。
そんな絶妙な溜めから「福岡県久留米市、フロムWEST POINT! HERO COMPELXの最高の後輩、ジ・エンプティ始めます!」とヒナが絶叫し、「さよなら涙」が始まるのだからいきなり最高潮とも言えるような盛り上がりとなるが、もちろん安心や満足などしない。カワカミタイキ(ds)は、より一層激しいリズムを叩き出し、トクナガシンノスケ(g)とクガケンノスケ(b)が「こんなもんじゃないだろ」と煽り、「MY SWEETIE」「テイクミーアウト」「君が」とパワフルなナンバーを連投。むき出しの気持ちをこれでもかとぶつけていく。

ここで改めて福岡のバンドによるツーマンが東京でソールドアウトした喜びとHERO COMPELXへの想いを語り、さらに踏み込むべくセレクトしたのが「おやすみレイディ」。ヒナ、シンノスケ、ケンノスケの3人がフロアへ乗り出して観客と一体となって響かせていき、「バチコイ」では新しい武器としてスカアレンジも加えてプレイ。バンドとしてのポテンシャルと貪欲さを見せつけてくれる。

ヒナが「ヤバいシンガロング、聴かせてくれ!」と投げかけた「ラブソング」では文字通りの大合唱が会場全体を包み込み、ステージ上もより白熱。ケンノスケも髪の毛を振り乱しながら弾き倒し、ヒナは何度も汗を拭いながら真摯に言葉を飛ばしていくが、また異なった表情を見せてくれたのがグッドメロディーが沁みる「思い出は甘いままで」と、心浮き立つポップさと軽やかなリズムワークを誇る「Sunday morning」だった。

ガムシャラなパフォーマンスから一転、じっくりと言葉と音を響かせるアプローチ。ヒナも両手を思いっきり広げて歌声を轟かせる。そこから疾走感抜群な「輝き」で緩急をつける流れもまた魅力的だ。
また、「今日みたいな日があるとさ、みんな頑張れるっちゃんね。大事なところだけ切り取って、好きな曲、MCとか。それを誰にもバレんようにポケットに隠して、平日しんどくなったらそれをちょっとずつ出しながら……ライブハウスを知ってる私や僕しか知らない、この小さい宝物、今日持って返ってくれたらうれしいな」、そうヒナが口にして始まった「グッバイ青春」は、彼らがライブを何よりも大切にするスタンスが知れた場面にもなった。きっとあの瞬間をギュッと抱きしめた観客も多かったに違いない。

そして、「福岡県久留米市、フロムWEST POINT」と再びヒナが宣言し、「大好きなHERO COMPLEXとツーマン、目撃してくれてありがとうございました。オレたちの歌、全員の歌!」と叫んでから「空っぽの唄」をスッキリとしながらもズシリと重い演奏で響かせ、甘酸っぱいメロディーが胸を離れない最新シングル「ウルトラロマンティック」を続けてから、本編ラストとして改めてバンドサウンドで「神様からの贈物」をドロップ。溢れる感情を投影したようなショートチューンで駆け抜けていった。
観客のアンコールに応えてステージに姿を現した彼らは「今宵はベイビー」で見事なシンガロングを一瞬で生み出し、締めくくりとして「オレら4人とアンタらの勝負だ!」と「おやすみレイディ」をおもいっきり叩きつける。その勢いに押されてなるものかと無我夢中で歌い叫ぶ観客。激しくもあり美しい関係性がとても素晴らしかった。

<公演情報>
ジ・エンプティ「ロマンティックナイト」-東京編-

2024年6月13日(木)Spotify O-Crest

<HERO COMPLEX セットリスト>01.Feel so good02.SILVER03.GO04.証05.花火06.そうだった07.それでいい08.巡る09.ALL STAR10.Remember11.風12.Picture13.光<ジ・エンプティ セットリスト>01.神様からの贈物02.さよなら涙03.MY SWEETIE04.テイクミーアウト05.君が06.おやすみレイディ07.バチコイ08.ラブソング09.あいつの唄10.思い出は甘いままで11.Sunday morning12.輝き13.グッバイ青春14.空っぽの唄15.ウルトラロマンティック16.神様からの贈物EN1.今宵はベイビーEN2.おやすみレイディ

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