子どもの水分補給。衛生面ではスポーツドリンクより麦茶が要注意?! 暑い季節に衛生的に持ち歩く3つのコツとは?【専門家監修】

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暑い季節は、熱中症対策のために大人も子どももこまめな水分補給が重要です。外出時には水筒やペットボトル飲料を持ち歩くことが多いでしょう。ただ、じめじめする梅雨や、気温が高くなる夏は持ち歩く飲み物の衛生管理も気になるところです。飲みかけの水筒やペットボトル内で雑菌が増殖する実態と注意点について、食品微生物センター検査事業部の管理栄養士・矢部織衣さんに聞きました。

飲みかけの飲料を常温で保管すると、雑菌が増殖する恐れが

口をつけて飲んだ飲み物を30度の環境で保管したときの雑菌個数の変化(食品微生物センター調べ) 画像作成/たまひよONLINE編集部

お出かけ時に持ち歩く飲み物。子どもの場合、直飲みやストロータイプの水筒を使うことが多いでしょう。ペットボトル飲料の場合も、そのまま口をつけて飲むことがよくあります。

――口をつけて飲むと、飲料内で雑菌が増殖するというのは本当でしょうか?

矢部さん(以下敬称略) 水筒やペットボトルに口をつけて飲んだり、ストローで飲んだりすると、口腔内の雑菌が飲料内に逆流します。雑菌は20~40度くらいの温度を好むので、梅雨~夏の時期に口をつけた飲料を常温で保管すると雑菌が増殖する恐れがあります。食品微生物センターが調査したところ、ペットボトル飲料の麦茶に口をつけて飲んだあと、30度の環境で保管したところ、10時間で雑菌が約3倍に増えていました。

――飲み物の種類によって、雑菌が増殖しやすい・しにくいという差はあるのでしょうか。

矢部 意外かもしれませんが、注意が必要なのが麦茶。麦茶には炭水化物などの栄養素が含まれるため、比較的雑菌が増えやすい傾向があるんです。

オレンジジュースやスポーツドリンクは、麦茶に比べて雑菌の増殖が抑えられる傾向がありました。これは酸性度が高いためだと考えられます。酸性度が高いものには、雑菌の増殖を抑え、食品を長持ちさせる働きがあります。たとえば、梅干しや酢なども酸性度が高い食べ物です。

――麦茶は雑菌が増えやすい傾向があると聞くと、水分補給のために麦茶を持ち歩くことが不安になるママ・パパもいそうです。

矢部 日常の水分補給には、麦茶や水が基本です。雑菌の増殖が少ない傾向のオレンジジュースやスポーツドリンクで日常の水分補給するのは糖分の過剰摂取が気になります。麦茶を持ち歩くことを過度に心配したり、控えたりする必要はありません。

雑菌が増殖した食べ物・飲み物は、腹痛や下痢などの体調不良を引き起こすことがありますが、一度口をつけて常温で10時間保管した麦茶を飲んでも、ただちに健康被害が起こるとは考えにくいです。神経質になりすぎる必要はありませんが、梅雨~夏はとくに早めに飲みきることを心がけるなど、衛生面に配慮するといいでしょう。
3歳ごろまでの小さな子どもの場合は、3時間くらいを目安に飲みきることを心がけましょう。大人の場合も、5~6時間を目安に飲みきるのが理想です。遅くともその日には飲みきるか、早めに冷蔵庫に入れるといいでしょう。

暑い季節に衛生的に麦茶を持ち歩く3つのコツとは?

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意外にも糖分が多いオレンジジュースやスポーツドリンクよりも雑菌が増殖しやすいという麦茶。暑い季節に子どもの水分補給のために麦茶を持ち歩くことはよくあります。

――衛生的に麦茶を持ち歩くためにはどんなところに気をつけるといいのでしょうか?

矢部 雑菌の増殖を抑え、衛生的に麦茶を持ち歩くコツは三つあります。一つ目は冷やすことです。

ある程度冷たい飲み物を飲める年齢であれば、水筒に氷を入れたり、ペットボトルに保冷剤をあてたりすることで低温をキープし、雑菌の増殖を抑えることができます。外出先に冷蔵庫があれば冷蔵庫で保存するのがおすすめです。暑い時期に屋外で持ち歩くときは、なるべく外気温の影響を受けないようにするのがポイント。保冷機能つきの水筒を使う、ペットボトルには保冷カバーをつける、保冷バッグに入れるなどするといいでしょう。

「夏は、ペットボトル飲料を冷凍庫で凍らせてから持ち歩く」という人もいると思います。でも、中身が膨張してペットボトルが破損する恐れがありますし、なかなか溶けずに飲みたいときに飲めないというデメリットがあります。おすすめなのは、ペットボトル飲料の中身を半分別の清潔な容器に移し替えてから、冷凍庫で凍らせる方法。別の容器に移し替えたものは冷蔵庫に保管します。外出前に、凍ったペットボトル飲料の中に、別の容器に移し替えたものをたして持ち歩きます。この方法なら、ペットボトルが破損する心配がなく、冷たい飲料をすぐに飲むことができ、持ち歩いている間も低温をキープしやすいです。

一方で、冷房の影響などによる過度な体の冷えを防ぐために「大人用に温かい麦茶を持ち歩きたい」ということもあるでしょう。保温機能つきの水筒を使うなどしてできるだけ60度以上の温度をキープすることで雑菌の増殖を抑制することができます。

――冷やす以外に、衛生的に麦茶を持ち歩くには、どんな方法があるのでしょうか。

矢部 二つ目のコツは、雑菌が増殖する前に飲みきるか、口をつけてからある程度時間がたったら、新しいものに取り替えること。

とくに0~2歳ごろの子はストローマグを持ち歩くことが多いと思います。長時間のお出かけの場合は、ストローマグを2つ以上持ち歩き、3時間を目安に新しいものに取り替えられるといいと思います。
または、ストローマグと水筒を用意し、どちらにも麦茶を入れておく方法もあります。ストローマグには短時間で飲みきれる量を入れましょう。水筒には口をつけないようにし、ストローマグの中身を飲みきるか、飲み始めて3時間程度たったらストローマグの中身を一度捨て、水筒の麦茶をストローマグに移して、中身をフレッシュな状態にします。そのときにストローマグを一度洗えるといいですが、外出先では難しいことも。中身を入れ替えるだけでも、効果はあります。

――三つ目のコツは何でしょうか?

矢部 水筒でもペットボトル飲料の麦茶でも、口をつけないことです。外出先でも、水筒やペットボトル飲料の麦茶をコップに移し替えて飲むことで、口腔内の雑菌の逆流を防ぐことができます。

水筒選びやお手入れも重要なポイント

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――ペットボトル飲料の麦茶と、水筒に入れた麦茶。衛生面を考えるとどちらがいいのでしょう。それぞれのメリット・デメリットを教えてください。

矢部 市販のペットボトル飲料は無菌状態で製造されています。開封前であれば常温で保管していても問題ありませんし、軽くて持ち歩きしやすい点も便利です。ただし、開封して一度口をつけてしまうと無菌状態ではなくなりますし、保冷機能つきの水筒に比べて温度が変わりやすいというデメリットがあるので注意しましょう。

保冷機能つきの水筒は、冷やした状態をキープしやすいというメリットがあります。また、コップつきの水筒を選び、口をつけて飲まずにコップに移し替えて飲むのもいいでしょう。保冷機能のついていない水筒の場合、ペットボトル同様中身の温度は変わりやすいですが、ペットボトルより洗いやすい形状のものが一般的。ペットボトルを水筒代わりに繰り返し使うよりは、お手入れしやすい形の水筒のほうが清潔な状態を保ちやすいでしょう。
どんなタイプの水筒を使う場合も、しっかりお手入れして、普段から清潔な状態をキープすることが大切です。水筒自体が汚れていると、口をつける前から雑菌が増殖してしまう恐れもあります。お手入れしやすいという観点では、パーツが少なく、洗いやすいものを選ぶのがおすすめです。

お話・監修/矢部織衣さん(食品微生物センター・管理栄養士) 取材・文/大部陽子、たまひよONLINE編集部

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夏は熱中症対策の観点から、多くの保育園・幼稚園や小学校で水筒持参が推奨されています。麦茶はノンカフェインで水分補給にぴったり。飲みかけの水筒やペットボトル飲料の雑菌の増殖を気にしすぎて、水分補給を避けるのは本末転倒です。衛生面に気をつけながら、麦茶などの飲み物を持ち歩き、こまめな水分補給を心がけるといいでしょう。

矢部織衣さん

PROFILE
食品の品質管理や、衛生管理コンサルティングなどを行う食品微生物センターの検査事業部勤務。管理栄養士。

食品微生物センター

●記事の内容は2024年6月の情報であり、現在と異なる場合があります。

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