都知事選ポスターに“異常事態”が…パンダやカピバラ、子どもの手描きイラストも?「表現の自由を悪い解釈でやっている」

史上最多となる56人が立候補した、東京都知事選挙。
各所に設置された選挙ポスターに“異常事態”が起きている。

動物の絵に…無関係のQRコードも

20日に告示された都知事選ポスター掲示板に貼られているのは、立候補者と無関係の人物。
今、都内のいたるところで見られる異様な光景が物議を醸している。

女性A:
許せないですよね。こんなことで使うなんて、無駄金ですね。

男性A:
ちゃんと規制していない方も悪いのかなっていう…。

新宿区の交番の横に設置された選挙ポスターの掲示板には、猫のポスターが24枚。
この掲示板からわずか50メートル先の掲示板には、犬の写真が24枚貼られている。
ポスターにあるQRコードを読み取ると、候補者とは関係のない公式アカウントが表示された。

新小岩駅の掲示板には、パンダやカピバラ、トラや牛など、文字の一切書かれていない動物のイラストのみが並んでいる。

秋葉原駅付近にあるポスターは、立候補していない格闘家の女性のポスターが24枚並ぶ。
掲載されたQRコードを読み込んでみると、女性の公式YouTubeチャンネルが表示された。

大田区に貼られた青い選挙ポスターには、特定の人に宛てたメッセージのようなものが書かれている。
また中には、幼い子どもが書いたような手描きのイラストも…。

ポスターを見た人からは、戸惑いの声が上がった。

女性B:
何なんですか?この絵は。

イット!スタッフ:
選挙ポスターなんです。

女性B:
あっ、これが?ええー。(写真)がないからこれを貼ってるってこと?

「デモクラシーの危機を感じる」との苦言も

東京都のトップを決める首都決戦で今、何が起きているのだろうか。

推薦を含め24人を擁立した政治団体は、団体に寄付した人に「自由なポスターを掲示板に掲載できる権利」を与えている。
そのため、都内のいたるところに候補者とは関係のないポスターが貼られる事態となったのだ。

掲示板を見た人からは、「注目するきっかけになる」との声もあった一方で、否定的な意見が相次いでいる。

男性B:
やっぱり法改正しないとダメですね。お金を出せばいいって問題じゃないと思うんだよね。

男性C:
表現の自由なのかな。それを悪い解釈でやってしまっているのかなという感じがする。

さらにネット上で始まったのが、「都知事選掲示板ジャックに反対します」と題した署名活動。
21日午後3時の時点では、2万8000以上の署名が集まっている。

批判の声は、自治体の長からも上がっている。

岩手県・達増拓也知事のSNSより:
東京都知事選の公営ポスター掲示板に、ひどいポスターが貼られるのを見て、デモクラシーの危機を感じます。「なんでもあり」は亡国への道。

林官房長官:
選挙運動用ポスターは、候補者自身の選挙運動用ポスターを掲示するために設置されるものであることから、候補者以外の方が使用できるものではない。

選挙制度にくわしい、早稲田大学の日野愛郎教授は、「選挙に関係のないことを訴えないという暗黙のルールが通用しなくなっている」、「公職選挙法で定めていないところに今の問題がある」と指摘している。

また、今後の対策としては、「事前審査で確認したものだけを貼る」、「候補者のポスターをデータで集めて、1枚の印刷物として掲示する」などの対応を考える時期に来ているとも話している。

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
選挙の意義をはき違えてますよね。明らかにこれは売名行為と言われても仕方がないところで、だからといって、立候補できる資格審査のようなものを、ハードルを高くしてしまうのも難しい問題があります。

でも言われてみると、われわれ有権者が問われているのかな、こういう選挙でいいのかどうかってことを問われている気がしますよ。
(「イット!」6月21日放送分より)

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