『ふたごのユーとミー』ふたご姉妹監督にインタビュー 是枝裕和監督など日本からの影響も

ふたご姉妹監督が手がけたふたご姉妹の映画『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』が6月28日より公開される。本作は、Y2K問題で世界が終わると大騒ぎしていた1999年を舞台に、シェアすることのできない“初恋”という感情に揺れるふたご姉妹ユーとミーの“忘れられない夏”を描いた青春映画だ。本作で長編監督デビューを果たした“ふたご監督”、ワンウェーウ・ホンウィワット&ウェーウワン・ホンウィワットにインタビューを行い、映画の舞台裏について話を聞いた。

ーーまずはこの作品を手がけることになった背景を教えてください。

ワンウェーウ・ホンウィワット(以下、ワンウェーウ):以前からいくつか脚本は書いていたんですが、監督としてそろそろ自分たちの映画を作りたいと思うようになったんです。それがこの『ふたごのユーとミー』を作るきっかけでした。私たちはふたごなので、ふたごのことは非常によくわかっている。細かいところまで描写できると思ったので、自分たちと同じふたごを主人公にしました。時代設定に関しても、自分たちにとって自我が芽生えて、目覚ましく成長する時代だったという理由で、1999年にしました。Y2K問題(2000年問題)で世の中的にも大きな変化があった年にふたごが初恋を経験することによって、ずっと一緒だった彼女たちにそれぞれ違う部分が出てくるということを描きたかったんです。

ーー2人の作業の役割はどう分担したんですか?

ウェーウワン・ホンウィワット(以下、ウェーウワン):脚本は一緒に書きましたが、撮影をするときはそれぞれ担当を決めて別々に行いました。前半と後半でパートを分けていくようなイメージですね。ストーリーやシーンごとにどういう進め方をするのかは事前にお互い話し合って、撮影後にそれぞれフィードバックし合いながら仕上げていく感じでした。

ーーミーとユーのキャラクター設定には、ワンウェーウさんとウェーウワンさんの要素が反映されているんですか?

ワンウェーウ:私たちの要素を100%投影しているわけではありません。ですが、私たちの要素の一部を用いて作り上げてはいます。あとは、自分たち以外のふたごの方々に取材をして、そこで聞いたエピソードも作品の中にたくさんちりばめています。なので、ユーとミーとマークの三角関係に関しても、私たちが実際に経験した話ということではなく、フィクションとして作り上げたものです。

ーー劇中ではミーとユーがお互いになりすます描写もありましたが、お2人は実際にそういうことをやった経験はありますか?

ウェーウワン:やったことはあります。でも、本当に些細なことだけです。私たちは得意な科目が数学と英語でそれぞれ違ったので、お互いになりすまして試験を受けたいと思ったことはありましたが、さすがにやる勇気はありませんでした(笑)。

ーーミーとユーを1人2役で演じたティティヤー・“バイポー”・ジラポーンシンはこれが初演技とは思えない素晴らしい演じ分けでした。演出はどのように行ったんですか?

ワンウェーウ:撮影前に約1カ月間ワークショップを実施して、お芝居の基礎から教えていきました。特に二人が入れ替わる部分などはスピード感も大事だったので、かなり練習してもらいましたね。ミーとユーが一緒にいるときの化学反応みたいなものが必要だったので、二人が本当に一緒にいるように見えるように工夫しました。私たちもバイポーと一緒にいる時間が長かったので、彼女は私たちを参考にして、ふたごの関係性だったりアイコンタクトなどを習得してくれました。

ウェーウワン:私たちやバイポー、マーク役のトニー(アントニー・“トニー”・ブィサレー)をはじめ、この作品に参加したほとんどのスタッフ・キャストにとってこの作品は初めての映画だったんです。それぞれにとっての“デビュー作”になるので、いいものにしようと、みんなで協力しながら一生懸命作っていく空気感がありました。

ーー『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』や『プアン/友だちと呼ばせて』などを世に送り出したタイの映画会社「GDH」がこの作品の製作・配給を行っていますが、『女神の継承』などの監督、バンジョン・ピサンタナクーンがプロデューサーを務めているのも大きなポイントですね。

ワンウェーウ:私たちが書いた脚本をGDHに送って、「面白そうだから映画にしましょう」ということになったのですが、その流れでGDHの方からバンジョン・ピサンタナクーンさんを紹介してもらったんです。そして、この作品にプロデューサーとして参加してくれることになりました。彼がこのような作品をプロデュースするのは初めてだったのですが、私たちにいろいろとアドバイスをしてくれました。彼が参加してくれたおかげで、この作品はきっといいものになるという確信が持てました。というのも、彼は海外ではホラー映画の監督として有名なようなのですが、タイ国内ではラブストーリーの名手として知られているんです。そういった背景もあって、私たちの映画にとても興味を示してくれました。それと、彼の存在はメンタル面でもとても支えになりました。編集作業のときも、一緒に編集室にこもって常にそばにいてくれたので、本当に頼りになるお兄さんのような存在でした。

ーーちなみにお二人はどういった作品から影響を受けたんですか?

ウェーウワン:私たち2人が共通して一番好きな作品が、是枝裕和監督の『怪物』です。あとはイー・ツーイェン監督の『藍色夏恋』も大好きです。ハリウッドやヨーロッパの映画よりも、アジアの映画が好きで、そういった作品から影響を受けていると思います。

ーー最後に、作品を楽しみにしている日本の観客に向けてメッセージをお願いします。

ワンウェーウ:日本のみなさんにこの映画を観ていただけるのが非常に嬉しいです。タイの文化がたくさんちりばめられていますし、タイの美しい自然の風景や伝統的な楽器を使った音楽も出てきます。おそらく日本のみなさまには気に入っていただけると思います。

ウェーウワン:私たちも日本の映画をたくさん観て影響を受けてきたので、日本のみなさんが観て感動したり、気に入ってもらえるようなポイントがいくつも入っていると思います。ぜひご覧いただけたら嬉しいです。

(取材・文=宮川翔)

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