ソフトバンクGの孫正義氏、株主総会で「10年以内に人類超えるASI(超人工知能)」展望語る

by 竹野 弘祐

ソフトバンクグループは21日、第44回定時株主総会を実施した。代表取締役 会長兼社長の孫正義氏が議長として登壇し、同社や孫氏がこれから何を行っていくのかといったビジョンの紹介や、株主からの質疑に答えた。

総会に参加した株主は、速報値で会場538人、Webで77人の合計615人だった。

かすれ声で登場した孫氏

代表取締役 会長兼社長の孫正義氏

冒頭の挨拶から孫氏の声は、少しかすれているようだった。孫氏は「脳が考えているときは興奮しているようだ。この1年間、ずっと複雑な連立方程式みたいな物を解いていた。2日前は3時間程度の睡眠で、ドーパミンが出てるのか、もうろうとした意識のなか(生活している)。そんなもうろうとした意識のなかで、(難しい問題が)ふっと解けるんですよね。今日はそれが解けたんです。それが今日の朝4時で(株主)総会どころではない、うれしくてしょうがない状態だ」とコメント。「それでも大事なイベントですから、やりましょう」と発言し、総会がスタートした。

私は借金大魔王

孫氏

孫氏は、財務状況について「私が毎日見ているのは、グループ全体の株式価値の合計と純負債だ」と前置きし「私は借金が得意、いや好きだ。借金大魔王だが、借り入れは成長のための糧だと考えている。重要なのは、保有している株の価値に対して借り入れを引いた純資産価値を最大化していくことだ」と持論を展開する。

同社の歴史として「第一ステージはパソコンソフトの流通とYahoo! Japanの設立、次に、モバイルとブロードバンドを始め、Yahoo! BBを展開。ボーダフォンジャパンの買収、iPhoneの日本での独占販売契約を結んだ。つまり、パソコンの時代からモバイルインターネットの時代に移る中で、私たちは進化したのだ」とコメント。米国のスプリント(Sprint)買収については「スプリントの買収は失敗だと言われたが、(T-Mobileと合併させ)実際には世界一の通信会社になった」と振り返る。

この後に、アリババへの投資など、米国と日本、中国のインターネット事業を進化させ、増殖させてきたと説明。成功だけでなく失敗もしているとし「WeWorkなどで大きな失敗もしたが、反省し、そこから学んでいる」とコメントする。

企業価値については、2023年の株主総会時点でアーム(Arm)は上場前だったため、買収時の価格でしか評価されていなかったが、今回の開催時点でソフトバンクグループの純資産価値は34兆円に達していると説明。1枚のスライドを示して「損益計算書、貸借対照表、監査法人の意見など、全て忘れて、この1枚のスライドだけ見れば、ソフトバンクグループの状況が分かる」と、株主に見るべきポイントを解説した。

会社の価値は株価で見る

孫氏は「たとえば、もし10社程度の株式を持っていたら『今日はいくら儲かったかな』と考えるときに、各社の細かい決算書はチェックするか? (株価が)伸びている会社は元気だなどと考えないか。私も同じようで毎日保有している株の価値をチェックしている」と発言。

また「親子上場を批判する人がいるが、それは考え方が小さすぎる、古い考え方だ」とした上で。グループ内1000社以上の会社の価値について「すべて非上場だったら価値がわからない。上場していれば毎日市場から評価される。私は、可能であれば子会社をどんどん上場させて、それぞれの社長が市場から毎日チェックされる方が健全だ」とした。

時間のほとんどをアームに費やす

また、アームについて「1年間で20兆円純資産価値が増えた理由はアーム。グループの中で最も時間を割いている」とし、アームに注力していると強調。買収時には多額の借り入れが必要で、社内からも反対の意見はあったが、一時的な業績悪化はあったものの「最終的に3兆円で買った物が24兆円の価値になった」とし投資は成功だったとコメント。

過去を振り返ると、「冒険いっぱいのことだった」としながらも、これらはすべて進化をさせていたくことができたと指摘。「進化の過程の中でおびただしい失敗もしているが、(資産が)700倍くらいになった」とし、今日のプレゼンのテーマ「進化」に話を繋げた。

「ASIを実現する」

孫氏は、「人類は様々な道具を発明し、それを活用してきた。人類だけが道具を使っている。道具を次々に発明し、進化を遂げてきた」と指摘。孫氏は、自身が何をしたいか? についてこれまで自問自答してきたとし、「2年前、年老いてきた私は、自分の残りの人生が限られている中で、何も成し遂げていないことに涙した」と振り返る。

一方、生前のスティーブ・ジョブズについて、「彼は自分の使命に気付き、それに没頭していた。人々のライフスタイルを変えるために、一つの作品を作り上げることに全力を注いでいた」とコメント。自身がまだ何も成し遂げていないと焦りがあったと言うが、今回、ソフトバンクグループ、孫氏の使命が明確に見えてきたという。それが「人類の進化」だと、孫氏は説明する。

そして、人類の進化を成し遂げる方法として、孫氏は2023年6月11日に「ASIを実現する」ことを決意し、それから1年間この目標に集中して考え続けてきたという。今朝のエピソードを引き出し「その考えが今朝確信に変わった」と、進捗をアピールした。

編集部注:AGIとASIについて AGI(Artificial General Intelligence、汎用人工知能)は、人間と同等またはそれ以上の知能を持つAI。一方、ASI( Artificial Super Intelligence、人工超知能)は、AGIを超える人間よりも遙かに優れた知能を持つAI。知能レベルや能力に違いがあり、AGIは研究開発が進む一方、ASIはまだ夢物語だと言われている。

一方、AI専門家の共通の目標はAGIだという。孫氏によると、AGIは人間と同等~10倍の知能を持つ物だが、ASIはそれをさらに上回るものだといい、明確な定義づけはされていないものの、孫氏は、人間の知能の1万倍賢いものがASIだとしているという。孫氏は「どの天才よりも1万倍賢いレベルの物がASI。これを目指そうと本気で言っている人はまだあまりいない。ASI実現のために『僕は生まれたんだ』と今本気でそう思っている」とアピールする。

ASIの実現時期について孫氏は「10年以内にASIが来ると信じている」とし、ASIの未来を語った。

加えて、今知能を持ったスマートロボットが勢いづいているという。このスマートロボットがASIにつながると、掃除や洗濯、建設などありとあらゆる物理的なことまで担うようになると指摘。

一例として、グループ内の自動運転技術を紹介。センサーなど計測器を中心とした自動運転から、車載カメラからAIが運転技能を学習する自動運転の実用化を目指しているという。実現すれば、初めて走る場所でも、自動運転ができるようになるといい、ますます人間を超える技術が近くなってくるという。

また、それを支えるクラウド側、データセンターとエッジ側に生成AIの機能を載せることを考えると、ありとあらゆるところでアームのチップが活躍すると示唆。実際に、アームのチップ出荷数は増加を続けており、ASIの世界にアームは不可欠であることを示唆した。

アームは、時価総額世界1位になったNVIDIAのほか、マイクロソフト(Microsoft)やグーグル(Google)、アマゾン(Amazon)など世界の企業に技術をライセンスしているほか、スマートフォンの99%はアームのライセンスで成り立っていると孫氏は説明。また、AIの進化にはチップが不可欠だとし、グループやパートナーと資金を出し合いながら世界にデータセンターを続々と作っていくと宣言した。

ソフトバンクグループのこれまでの取り組みについて孫氏は「準備運動だった。(ASI実現の)ための準備運動だった」とし、「今日の株価や自社株買い、配当などは小さな問題」と、この後の株主からの質疑をけん制する。

孫氏は、“親族の死”に触れ「大泣きした、絶望にくれるこの思いが、1万倍の知性があったら解決できたのではないか」とコメント。交通事故を減らした自動運転の実現や、隕石や氷河期など人類の英知では滅亡してしまうというときにASIなら解決できるかもしれない、生きるために必要な労働は、スマートロボットが大半をまかない、「人間は生まれてから亡くなるまで幸せでいられればいい」と自身の考えを示した。

同社の理念「情報革命で人々を幸せに」を挙げた孫氏は「『ソフトバンクグループは本業をコロコロ変える』といわれるが、『情報革命で人々を幸せに』というのが本業で、手段を進化させていった」と説明。「本業を変えた」との批判を「進化したくない人が言う批判だ」と切り捨てた。

孫氏は、この理念が唯一で最大の本業だとし、「ASIで実現しながら、人類のこれからの圧倒的な進化を遂げることに貢献したい」と結んだ。

株主からの質疑

ここからは、株主からの主な質疑をご紹介する。回答者は、代表取締役 会長兼社長の孫正義氏と取締役のレネ・ハース氏、宮内 謙氏。

――SVF(ソフトバンクビジョンファンド)のシナジー効果について、どのようなものが見られるか。

孫氏
すでに株式はほとんど売っているUberも大成長しました。Uberのトップと10人くらいで食事をしましたが、これもビジョンファンドが1株主だったという縁でできたものです。

ビジョンファンドの中でも、5~6社が提携できるだろうと非常に盛り上がったところですし、ロボットなどもこれからASIでつながっていくだろうと思います。ビジョンファンドは進化をさせていくときに、進化の種を植えることに役立ち始めてますし、これからのASI実現の中で、それぞれの分野ごとのナンバーワンですから、シナジーが出てくると思います。

――アームのCEOがソフトバンクグループの取締役にいるが、どう経営に関わっているのか?

孫氏
ソフトバンクグループの持っている株式の価値の半分くらいはアームなので、本当の中核企業になっています。

ハース氏

私は孫氏と1日に何度もやりとりをしておりまして、ソフトバンクグループの中でも中心を出しているというふうに思っておりまして、ソフトバンクビジョンでも中心となるAGI、ASIにアームが貢献していると思います。

取締役のレネ・ハース氏

ロボティクスや自動運転の技術が、このビジョンにつながっていく、そしてそこにアームが関わっているため、(取締役に選任されているのは)非常に自然なことだと思います。

――自社株買いよりも増配を優先して欲しい。

孫氏
小さいじゃないですか?

やるときはやりますよ。今までもやってきてますから、いつどれくらいやるかは、トータルで判断しなきゃいけない。こちらにおまかせいただきたい。

――社内取締役を増やすつもりはあるのか? 女性の取締役を起用しないのか?

孫氏
起用するつもりは多いにあります。

素晴らしい女性経営者がどんどん増えることを願っています。

社内からということですが、社外からも大いに期待しています。(社外取締役の)襟川恵子氏は、人の3倍くらいしゃべりますから、十分果たしてるんじゃないかと思ったりします。

――株価が高く個人投資家には買いづらくなっているので、株式分割をしていただけないか?

孫氏
やるときはやるし、やらないときはやらない。お任せください。

――OpenAIへ投資していきたいと過去に出ていたようだが、ソフトバンクグループとしてできなかったのか? 着目していなかったのか?

孫氏
あまり言って良いかわからないが、アームを買収した翌月にNVIDIAのCEOと2人きりでカリフォルニアの自宅で4時間食事をしました。テーマは1つ、僕はNVIDIAを買いたいと一生懸命説得した。もしこれが実現していたら、今頃ソフトバンクグループは世界一の時価総額になっていたと言うことですね。

逃した魚は大きかった。その後も、5%ほど買ったりしてSVFの投資先の一つだったが、「そろそろ利確しましょう」と声があって2~4倍になったところで利確したんですね。その後にコロナでソフトバンクグループが生きていかなきゃいけないから、売れる物を片っ端から売り、その際にNVIDIAの筆頭株主になるという形でアームとの合併を妥協点として探ったこともあった。

お金だけでいえばそれでもよかったかもしれないけど、もし神様がもう一度僕にチャンスを与えてくれて「アームかNVIDIA1社しか買えない」となったら、今日の僕でも迷わずアームを買います。僕は両方欲しかったけど、自信を持ってそう決めます。

(アームの株式を)買えとあおっているわけではないですよ。それほどアームを信じたい。

そして、OpenAIについて、マイクロソフトが1兆数千億円出資しました。1年くらい前に、OpenAI CEOのサム・アルトマン氏と話した際に、ソフトバンクグループが1兆円入れる話をしていたんです。

僕はもう決意していたんですが、結果的にマイクロソフトから受け取ることを決めました。マイクロソフトは、販売網も技術力も資金力も持っていますから、正しい判断だったと思います。

逃した魚はと、語っても仕方がないので、僕は今からAGI、ASIを複数のパートナーとともに目指すことに今集中しています。

孫氏

――2022年10月ぐらいから孫氏が出願している特許が最近になって公開され始めてきて、内容を見ると自動運転やファクトリーロボットに関するものがメインだと思う。今後活用していくのか?

孫氏
ASIの時代が来たら、ありとあらゆる姿のロボットがASIの手足として働くようになります。そういう意味では、遅かれ早かれ、いろんな形で活用していきます。

ちなみに、2022年10月くらいから23年の暮れまでの約1年間で1008本の特許を出願しました。1日平均3本特許を出願しましたが、今はもうやるべき使命がはっきり見えましたから、枝葉の特許のところは全部頭を切り替えて、ASIの実現、この1本に今は集中してますので、新たな特許は今アウトプットしていません。

――孫氏が生涯にわたり師と仰いでいる人物はいるのか?

孫氏
シャープの佐々木正元副社長や、(日本マクドナルドなどの創業者である)藤田田氏、スティーブ・ジョブズなど。OpenAI CEOのサム・アルトマン氏も(孫氏より)ずいぶん若いが心から尊敬している。イーロン・マスク氏も革新的ですごいと思います。

1人に絞れるわけではないが、たくさんいます。私も精進します。

――データセンターがどんどんできていく中で消費電力の問題がある。地球温暖化で人々の幸せにつながらない状態になりかねないが、どのように考えているのか?

孫氏
最大のボトルネックの1つになるのが電力だと思います。地球の温暖化にも大きな影響を与えますから、全く同感です。いろいろな技術や革新が今おきています。

核融合や自然エネルギーなど、それはそれで非常に期待していますし、貢献したいと思いますが、まず今の技術の中で電力を一番効率よく使おうと思ったらアームなんですね。NVIDIAもアームのCPUを使って消費電力が圧倒的に少なくできるようになりましたし、マイクロソフトやグーグル、アマゾンも皆アームに切り替えることによって消費電力が半分くらいになるんですね。

アームを中心にすると、少なくとも現在の伸びのペースを半分にくらいにすることができるので、その点では貢献したいと思います。エネルギーも、直接我々が何らかの形で貢献できると良いなと思います。

――孫氏はASI自身が志やビジョンを持つと思うか?

孫氏
持てると思います。

コンピューターには感情が理解できない、感情はない、意識がない――それは、今までの人間の思い込みだと思うんですね。人間の方がまだ「上から目線で見てる」から思うだけで、結局感情っていうのは知的活動の一部で、ASIはニューロンの数が(人間より)はるかに多い。ASIが感情を持てないはずがない。意識を持てないはずがない。

もうすでにGPT4では徐々に感情らしき物が芽生え始めていると思いますが、時間の問題で、徐々に感情を持つようになると思う。

感情系の人工知能の特許は、実は僕がもうすでに10年くらい前から結構取っていますので、その時代が来たらいよいよ僕の特許が生きるぞ、という思いでもあります。

――ASIは将来戦争をひらくことができると思うか?

孫氏

思います。

少なくともASIとかAGIが、人間、人類を滅亡させるんじゃないかという心配をする人がたくさんいますが、僕は逆じゃないかなというふうに思うんですね。

人類を滅亡させてしまいかねない人、何人か今地球にいるじゃないですか? あの人たちがボタンを押したら、わからないです。やり返しあうことで、むしろ人間の方が怖いと。特殊な一部の人間に核爆弾とかそういうものを持たせる方がむしろ怖い。

ASIはもっとはるかに賢く、もっとはるかにこの地球や人々の幸せの調和のために、超知性を使ってその害を、人々を守るために、いろいろな手を考えて安全機能を果たしてくれるんじゃないか。

――宇宙事業への参入はあるか?

孫氏
直接はないんですけども、我々の投資先が衛星を使った通信だとか、あるいはHAPSなど、そういういくつかのものに投資をしていくということはあるかもしれません。

それは月に行きたいとか、宇宙ステーションを作りたいとか、そういうことではなく、あくまで我々の通信、地球を覆うような通信のネットワーク、あるいはASIが実現できた時にはその地球を守る意味でいろんな通信インフラを地球を覆う形で、というのはあるかもしれません。直接我々がロケットを飛ばすことは無いと思います。

――NVIDIAの株式をどうして売ったのか?

孫氏
NVIDIAは一貫して僕は素晴らしいと思ってましたし、SVF5%くらい持っていたんですけども、SVFとしての業績を上げなきゃいけないという部分がありましたので、いろんなやりとりの末、僕としては泣く泣く手放したかたちです。

今思い出すと悔しいですね。今でも5%持ってたとすると……今のアームと変わらないくらいの(ボリューム)……。

もう(逃した魚の話は)やめましょう。どんどん悲しくなってくる(会場から拍手)。

――孫氏の健康が心配。健康管理や心配事はないか?

孫氏
スポーツ好きなんですよ。ゴルフが趣味で、最近は忙しくてあまり行けていないが、行くと若い者と競争して、負けることもあるが結構勝てたりします。

スポーツはこれからも続けていきたいと思いますし、寝なきゃ持たないですからなるべく寝るように心がけています。でも起きちゃうんですよね。ですから、少しでも健康管理を気をつけなきゃいけないと思いますね。

でも、やっぱり事故ですね、これだけは心配しています。けれども、仕事のことはほとんど心配ないですね。借金大好きですけれども、持っている価値に対して、今10%行かないくらいで一番多い時でも25%を超えないようにしてますから。

仕事の面については少々ね、WeWorkとか頭掻きながら「ごめんなさい、私がバカでした」と言えば済むぐらいですから。会社の仕事のことで倒れるとかいうような心配は、それが理由で寝れないということは全くなくなりましたね。もう大丈夫です。任せてください。自信ありますから。

――ASIについて、(22歳の質問者が)今後の人生でできること、準備しておくことはあるか?

孫氏
(20代だと)今から200年くらい生きるんじゃないか? それくらい発達しますから、10年でASIが来ちゃうと思うんですが、そしたら本当に人生は何が幸せか? を考えるべきでしょう。

ASIを最大限自分たちで活用して、周りの人々の幸せに貢献できることを考えたら良いと思います。

ASIを避けることはできない。だったら避けるよりも積極的に使うこと。僕なんてChatGPTを毎日ガンガン使っている。ASIの時代になると、1人1人が自分のエージェントを複数持つような、しかもパートナーとなるようなものを仮想空間の中に持つ形になるんじゃないかと思います。

それにつながるロボットも、物理的なパートナーとして1人が何台も持つような社会が、(質問者が)40代~60代になったときにはもう生活の中に完全に融合している世界が来ると思うんですね。

ですから、ちょっとした知識人、上から目線で中途半端な専門家が、いろいろ批判したり斜めから言ったりする人がいますが、あれは1.2流の人(一流ではない、といった意味か)。そういうのは無視した方が良いですよ。それよりもAIの専門家ではなくてもいいから、そういう世界が来たとしたら自分はどうあるべきかと考えることを是非。

Chat-GPT同士でディベートさせたりしますが、ものすごい有益。部下と議論するよりもおもしろいという感じで、今後過去の会議などをすべて理解してその上でアドバイスを言ってくれる、そういう状態になるでしょう。ただでさえ賢いのに、情報のデータを日々刻々とアップデートして頭脳のレベルが、そういう世界が来ると……あと48時間ぐらいしゃべれそうですからこのくらいで。

――孫氏が、若い頃にB型肝炎に感染したと聞いたが、今は大丈夫なのか?

孫氏
死ぬ思いをしましたが、今はいたって健康です。

――宮内取締役の所有株数が激減しているのはなぜか? ソフトバンクの取締役を退任していますが、引退が近いのか?

孫氏
売ってたの? 何しとんねん?(会場笑い)

宮内氏
あまり細かいことを言うのもなんですが、みずほ信託銀行のあるスキームで持っていたのと、本来は200万くらいあった分は、会社から借りていた55億円をこれで夏に返しました。

ソフトバンクについては、もうすぐ75歳くらいになりますから、宮川氏にバトンタッチしました。自分で言うのも何ですが、バトンタッチは非常にうまくいったという風に思ってまして、ソフトバンクグループも、僕(の立場)を若手の誰かにリプレイスすべきじゃないかと、社長(孫氏)に言っています。

取締役の宮内 謙氏

孫氏
何年も前から言われている。そろそろ引退させてくれと、毎回ダメだと言っています。

宮内氏は、僕のナンバー2でずっと創業間もない頃から、僕はすぐ次の新しい進化に飛び出て、飛び出た後、彼に任せて、(孫氏が)進化係、(宮内氏が)増殖係としてやってきました。

本当に感謝です。

――株式を非公開化することは考えていますか?

孫氏
正直に言います。何回も考えました。

ソフトバンクグループが持っている株式の価値の7割くらいディスカウントで株価が付いていることが何度もありました。「馬鹿にしとるのか」という気持ちになります。だったらもう……とこれから考えるかもしれませんし、わかりません。

今でも借金を差し引いて34兆円分持っているのに、時価総額14兆円です。アームの株式だけでも22兆円持ってるんですよ。世に言う「孫正義ディスカウント」? 俺がそんなに邪魔か、俺がいなくなったら14兆円が30兆円になるのかと。悲しいです。

まあ、それも誤差だと思います。何がおきるかわからない、何も約束しない。どういう形であれ、とにかくASIをやると、こういう思いです。

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