作州で相次ぐクマ出没 人的被害も 県、対策会議で再発防止策確認

津山市上高倉の山中で捕獲され、麻酔で眠らされたツキノワグマ=12日(読者提供)

 作州地域でツキノワグマの出没が相次いでいる。岡山県によると本年度、捕獲数が既に8頭と前年度(15頭)の半数を超えた。中でも前年度の捕獲がゼロだった津山市では、8日に登山客が襲われ軽傷を負ったほか、12日までの2週間に3頭が立て続けに捕獲された。県内での人的被害は2018年以来6年ぶりで、同市内では初めてになる。生態に異変が起きているのか。県などは警戒を強め、21日に同市で開いた対策会議で人的被害の防止徹底を確認した。

 ツキノワグマによる人的被害が起きたのは、津山市奥津川の広戸仙(1115メートル)へ登る声ケ乢(こえがたわ)登山口付近。8日朝に入山した50代男性=岡山市=が成獣とみられる個体に遭遇し右腕をかまれ、クマは山中に逃げた。

 クマと一緒に斜面を20メートルほど滑り落ちた男性は足にも4針縫うけがを負った。手当てを受け、14日午後に岡山県に情報提供したという。

 津山市内では他に、5月30日(同市奥津川)▽6月8日(同加茂町桑原)▽同12日(同上高倉)―と3頭を捕獲。いずれも成獣で、市鳥獣被害対策実施隊員が設置したイノシシ・シカ用のくくりわなにかかっていた。

 上高倉の捕獲現場では暴れたクマによって木がえぐられ、折れた枝が散乱。目撃した同実施隊東部1班の神田直人班長(53)は「足にわながかかったまま木に登り逃げようとしていた。もしわなが外れていたら…」と恐怖を語る。

 県自然環境課によると、本年度の県内のクマ出没数は29件(15日現在)で、うち捕獲は8頭。津山の3頭は全て山中の生息域内で捕まり、過去に捕獲歴がなく人的被害の可能性も低いとして、個体識別用のタグを付け、県の管理計画に従い放獣された。

 ツキノワグマは一般に、人里にカキなどの餌が増える秋に出没が多いとされるが、今年はそうした理由がない春夏の時期から遭遇や捕獲が相次ぐ。異例の事態に同課は「山に入る際は活動が活発な朝夕を避け、鈴やラジオで大きな音を出して人の存在をクマに知らせて」と呼びかける。

 県は21日、津山市でツキノワグマ人身被害対策会議を開き、県北11市町村や警察、地元猟友会と対応を協議。主な登山口に注意看板の設置を拡充し、登山者が立ち寄る店舗、施設に注意を促すチラシを置くなどの再発防止策を確認した。出席者からは「(生息域内で)捕獲した時点で殺処分できないか」「被害があった場所にクマ専用のわなを設置してほしい」といった意見が出た。

 クマの生態に詳しい野生鳥獣対策連携センター岡山支社(赤磐市桜が丘東)の阿部豪支社長は、相次ぐ出没に「個体数が増えていると考えるのが自然」と指摘。今秋はさらに出没が多くなる可能性があるとし「遭遇すると他の動物より危険度が高い。状況によっては個体数を減らす取り組みを強化するべきだ」と強調する。

ツキノワグマの人的被害を受け再発防止策を確認した対策会議

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