手取川サケ釣り中止 資源保護へ決断

サーモンフィッシングを楽しむ釣り人=2023年10月28日、白山市湊町

  ●昨秋の捕獲101匹、過去最少

 秋の風物詩である手取川を遡上(そじょう)するサケ、それを追う釣り人の姿が今年は見られなくなりそうだ。白山市美川地域の手取川河口域で毎秋に一般開放されているサーモンフィッシングの中止が21日までに決まった。昨年の捕獲数が過去最少となり、石川県や白山市、商工会でつくる実行委員会が資源保護が必要と判断した。中止は開始から25年目で初。県内で唯一サケ釣りができる場所で、美川で宿泊、飲食する人も多いだけに、地元関係者からは「来年はたくさん戻ってきてほしい」と回復を願う声が上がっている。

 手取川のサーモンフィッシングは2000年、サケの有効な利用法を調査するために始まり、本州では初めてサケ釣りを一般開放したとして注目された。例年10~11月を期間とし、多くの釣り人が訪れるイベントとして定着してきた。

 白山市によると、県水産総合センター美川事業所とフィッシングを合わせた手取川全体のサケ捕獲数は、15年の2万8833匹がピーク。しかし、ここ5年では20年の6104匹が最も多く、23年は過去最少の299匹に大きく減った。フィッシングだけの捕獲数も15年の4880匹から、23年は101匹にまで落ち込んだ。

  ●美川に1500人訪れ

 県水産総合センターはサケ減少の要因について、秋になっても海水温が高いままで、北からの回帰が妨げられたとみている。今年も遡上数が回復する見込みが立たないことから、フィッシングは取りやめることにした。美川事業所での採卵は継続する。

 美川商工会の中恵二郎事務局長によると、フィッシングのために年間1500人を超える釣り客が美川を訪れたこともあった。「常連さんは美川で宿泊、飲食する人が多い。サケが戻ってきて、釣りが再開できるように願っている」と近年の不漁を残念がる。

 白山市水産振興課の登出泰史課長は、美川のサケはユネスコの世界ジオパークに認定された白山手取川ジオの構成要素となっていることから「保全のためには中止が必要。今年の調査結果次第で来年の再開を検討する」と話している。

 ★手取川のサケ 遡上するのは国内産の代表格とされるシロザケ。古くから食用とされたが、戦後、遡上数が大幅に減り、石川県が1978年から稚魚の放流事業を開始。79年に完成した県水産総合センター美川事業所に手取川支流の熊田川を引き込み、サケを捕獲して採卵、稚魚をふ化させて放流し、資源回復を図ってきた。その後、サケが増えてきたことから、サーモンフィッシングが始まった。美川商工会は2022年に「はくさ~もん」の愛称を付けて特産品化し、小中学校の給食に提供するなどの取り組みを進めている。

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