【鎌倉 イベントレポ】テキサス-鎌倉国際交流展2024ー 素朴でユニークなテキサスアートの魅力を紹介

アメリカのテキサス州ヒューストンと神奈川県鎌倉市との文化芸術交流を促進する展覧会が6月5日~10日まで鎌倉芸術館で開催されました。

企画団体の「NPO日米国際作家交流展」は2015年、2016年、2019年にも同様の展覧会を開催、その活動は在ヒューストン日本領事館も支持しています。

ヒューストン近郊で活動するアーティスト5名、日本のアーティスト2名、計7名の作品と、6月8日のアーティストトークイベントで披露された、作家本人による作品解説をご紹介します。

マイケル・ロケ・コリンズ「パスポートフラワー」 2018.2019年

画像出典:湘南人

マイケル・ロケ・コリンズさんはヒューストン生まれで、現在もヒューストンで活動する作家です。アメリカを始め、ヨーロッパ、南米など世界各地で活躍。

現在はヒューストン・クリスチャン大学美術学部で特別教授を務めています。

「『パスポート』というのは、皆さんが思っている物ではなく、アフリカの、象の膝骨から作られた仮面のことです。神の象徴のような物で、花瓶に仮面を入れると花束のように見えるのでパスポートフラワーという題名を付けました。

仮面は祖母の死を、光は未来への希望を表現しています。1987年以来、絵のテーマを人生に紐づけ、闇と光や生と死など、二つの相反するものを表現してきました」

シャロン・コプリバ「闇と光の交錯」 2024年

画像出典:湘南人

シャロン・コプリバさんはテキサスとアイダホを拠点に活動する作家です。ペルーの先コロンバス文化や、アメリカ太平洋沿岸北西部にある「精霊の森」、コロナ禍を経験した現在は、変わりゆく世界情勢のバランスなどさまざまなテーマを探究し、作品に取り入れています。

「これは卵の形を使った作品です。コロナ禍で世界が混沌としていた時期に、絵でバランスを取り戻し、希望を持つために描きました。

卵は人生の大きな流れと「陰と陽」の調和を表し、太陽(日食)と月(月食)を過去と未来に対する希望として描いています。鳥は人間と、全ての生命体を表しています」

シェリー・オーエンズ「大草原の宝石Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ」 2024年

画像出典:テキサス-鎌倉国際交流展

シェリー・オーエンズさんはテキサス州ダラスを拠点に、米国南西部で活動する作家です。「大草原の宝石」は、3つのピースでワンセットのインスタレーション。左からⅠ、Ⅲ、Ⅱの順番に並んでいます。

「8000年前の大草原を再現した立体作品です。かつてアメリカ大陸は40%が草原でしたが、現在はわずか1%以下に減少しています。そうした環境問題についての作品になっています。

サルスベリの木を手で加工して、3種類のワイルドフラワー(野生の花)を表現したものです」

画像出典:テキサス-鎌倉国際交流展

アーティストトークに訪れた人たちは、熱心に説明に聞き入っていました。

大森まり「茶室」 2004年

画像出典:湘南人

大森まりさんは、アメリカ在住の作家です。現在はテキサス州ローンスター短期大学キングウッド校で美術家教授をされています。

「私は簡単に言うとリサイクルアーティストなんです。これは20年前に制作した、使用済みのティーバッグで制作したコラージュ作品です。

中に入って外界と孤立した自分を味わっていただけたらいいと思います」

保江素子(やすえ・もとこ)「オクラスに思いを馳せる」 2024年

画像出典:湘南人

保江素子さんはヒューストンを拠点に活動する作家です。幼い頃に見た、鎌倉の明月院の丸窓から得たインスピレーションをテーマに作品を制作しています。

「私は計画性を持たず、絵の具をざっくり塗ったり垂らしたりして、偶然できた形の中に木や人などを見出しながら絵を完成させます。

偶然できる形を人生と捉えて、制限の中で何かを創り上げる。そこに人生観を反映したい。

明月院には子供の頃に父と訪れた思い出があり、円窓を通して100年前の人々と対話する感覚を絵で表現できたらいいなと考えています」

飯田秀夫「ヒマラヤの想い出」 2024年

画像出典:テキサス-鎌倉国際交流展

飯田秀夫さんは東京在住で、東京のギャラリー檜や日辰画廊などのギャラリーやグループ展で数多くの展覧会歴を持ち、抽象絵画で評価の高い作家です。2019年に「第1回横浜-テキサス国際交流展2019」を企画、2023年にヒューストンで交流展を開催しています。

「この絵は2019年にネパールで個展を開いた際に訪れた、ヒマラヤの風景を描いたものです。草木も生えない殺伐とした景色や8000メーター級の山は、人間が考える以上の世界でした。

当初は抽象的な表現を模索していたのですが、いろいろなことを頭で考えるよりも見えた物をそのまま描こうと思い、最終的に見たままを描きました」

田辺いづみ「青く光る」 2024年

画像出典:湘南人

田辺いづみさんは、鎌倉在住の作家です。アメリカやネパールなど、海外でも国際交流展を複数開催、積極的に芸術交流に取り組んでいます。

「私は三重県の海辺で大家族と共に育ち、封建的な環境で明治・大正・昭和時代の女性たちと深く関わってきました。

彼女たちの置かれた厳しい環境に心を寄せ、その優しさと悲しさを次の世代に伝えたいと考えています。

過去の女性たちの努力が現在の女性の地位を築いたと私は思うので、それを作品に残すことを目指しています。自然の木々や光で、凛と立つ女性の姿を表現することが私のテーマです」

「テキサスの人たちは、スケールが大きくて温かいんです」代表の田辺いづみさん

画像出典:テキサス-鎌倉国際交流展

本展実行委員代表の田辺いづみさんに、テキサスのアートの魅力についてお聞きしました。

「テキサスって、本当に魅力的な場所なんです。人々がとても素朴で、情が深い。ギャラリーのオーナーたちも気さくで、とても温かいんですよ。

テキサスアートの特徴は、長い歴史と独自の文化を背負った作品が多い点です。メキシコとの国境問題や移民受け入れ、宗教などですね。

素朴で、人を温かく迎え入れる土地柄と、広大な荒野の景色を敬愛している感じがするところも魅力的です。

現代アートの流行に飛びつかず、自分たちの価値観を大事にしているのもいいところだと思っています」

本展の参加メンバーをご紹介

画像出典:テキサス-鎌倉国際交流展

前列右から田辺いづみさん、保江素子さん、シャロン・コプリバさん、シェリー・オーエンズさん、大森まりさん。後列右から飯田秀夫さん、マイケル・ロケ・コリンズさん。次回開催も楽しみです!

詳細

日付:6月5日~10日
時間:10:00 〜 18:00
場所:鎌倉芸術館ギャラリー
主催:クロスカレント テキサス-鎌倉国際交流展(企画:日米国際作家交流展)
後援:鎌倉市、神奈川文化プログラム認証
問い合わせ先:qq6869bd@bridge.ocn.ne.jp(テキサス-鎌倉国際交流展実行委員会事務局)

地図

郵便番号:〒247-0056
住所:神奈川県鎌倉市大船6-1-2
電話番号:0467-48-5500

アクセス

JR大船駅より徒歩約10分

駐車場有

関連リンク

テキサスー鎌倉 国際交流展2024

鎌倉芸術館ホームページ

マイケル・ロケ・コリンズ|ホームページ

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