自民議連が目指す郵政民営化改正案の“真の狙い”…郵便料金30年ぶり値上げの先にあるもの(小林佳樹)

日本郵便が公開した新料金の普通切手とはがき(C)共同通信社

【経済ニュースの核心】

日本郵便は10月1日から、はがきの料金を63円から85円に、定形郵便の手紙は25グラム以下の場合、84円から110円に引き上げ、レターパックや速達料金も値上げすると発表した。郵便料金の値上げは、消費税増税による値上げを除くと、1994年以来、実に30年ぶりとなる。

郵便料金の値上げを政府が容認したのは、日本郵便の惨状によるためだ。郵便物の数はピーク時と比べて4割以上減少。日本郵便は赤字を垂れ流している。このままでは日本郵政グループ全体が沈没しかねない。

しかし、日本郵政には全国津々浦々で郵便・金融サービスを維持するユニバーサルサービスが法律で義務付けられている。郵便事業の赤字をゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の利益で補填しなければ生きていけない。

自民党の議員連盟「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」(山口俊一会長)が、今国会で郵政民営化法の改正を目指しているのもそのためだ。

議連が目指す改正は、日本郵政と日本郵便を合併させ、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の金融2社の株式を日本郵政が一定割合(3分の1超)で持ち続ける案が柱となっている。

郵便局網維持のための基金をつくり、従来は成長投資にあててきた2社株の売却益の一部を積み立てる。維持コストが足りない場合の財政支援措置の規定も盛り込む。

また、行政窓口などの公共サービスを郵便局が受託しやすくなるよう本業の一部に位置づけ、日本郵政への外資規制も検討している。

全国の郵便局網には年1兆円超の費用が投じられている。そのうち7000億円超は金融2社からの手数料などが元手。金融2社が日本郵便に永遠にミルク補給できるようにするのが法改正の真の狙いだ。

■再値上げは不可避

2022年度に211億円だった日本郵便の営業赤字は28年度に3439億円にまで膨らむ。郵便料金を一挙に3割も値上げする案はまさに苦肉の策だが、根本問題の解決には程遠い。試算によれば、今回の値上げによって郵便・物流事業は、25年度に黒字化するが、26年度には再び赤字に転落し、28年度には1232億円まで赤字幅が拡大すると見込まれている。

値上げ効果は長続きせず、再度の値上げは避けられそうにない。

(小林佳樹/金融ジャーナリスト)

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