【追悼 ドナルド・サザーランド】出演100作超えのキャリアから今すぐ観られる必見名作を紹介 『マッシュ』『戦略大作戦』『SF/ボディ・スナッチャー』ほか

『戦略大作戦【吹替完全版】ムービープラスオリジナル』

追悼 ドナルド・サザーランド

ドナルド・サザーランドが亡くなってしまった。享年88。遺作は2022年製作のNetflixオリジナル映画『ハリガン氏の電話』か、ローランド・エメリッヒ監督のAmazonオリジナル映画『ムーンフォール』になるだろうか。

1935年カナダ生まれのドナルドは1960年代初頭にTVドラマで俳優活動を開始し、クリストファー・リー主演のスリラー『生きた屍の城』(1963年)で映画デビュー。キャリア初期はスリラーや戦争映画への出演が多く、ロバート・アルドリッチ監督の『特攻大作戦』(1967年)や、アカデミー賞受賞作『M★A★S★H マッシュ』(1970年)、若かりしクリント・イーストウッドと共演した戦争活劇『戦略大作戦』(1970年)など、その長いキャリアで100作以上の映画/ドラマで代えの効かない存在感を示してきた。

もちろん、ドラマ『24 TWENTY FOUR』(2001~2010年)などで知られるキーファー・サザーランドの父親としてもお馴染みで、2011年にはハリウッドの殿堂入りを果たすなど、「この人が出てるなら間違いない」名優として幅広い層の海外ドラマ/映画ファンから支持され、また業界内の信頼も厚かった。

「皮肉」を表現できた稀有な俳優

ドナルド・サザーランドの真骨頂は、“皮肉”を表現できたところにあったように思う。60~70年代の戦争映画はしっかりエンターテインメントでありながら、無益な戦争のバカバカしさを徹底的に揶揄していた。『M★A★S★H マッシュ』や『ジョニーは戦場に行った』(1971年)、ジャック・ヒギンズ原作・ジョン・スタージェス監督・マイケル・ケイン&ロバート・デュヴァル共演の『鷲は舞いおりた』(1976年)といった戦争テーマの映画にサザーランドが起用されたのは、その飄々とした存在感が(逆説的にも)「反戦」の意志表示に不可欠だったのではないだろうか。

初期の名作としては他に、ハリウッド黄金期の内幕もの推理サスペンス『イナゴの日』(1975年)や、名匠フェデリコ・フェリーニの『カサノバ』(1976年)、ロバート・レッドフォードが監督しアカデミー賞で主要4部門を獲得した『普通の人々』(1980年)、謎の政府要人を演じ驚異的な長台詞を披露した『JFK』(1991年)などを挙げる映画ファンが多いだろうか。

そして今こそ観ておきたい作品として、アパルトヘイト体制下の南アにおける心細い正義を描いた『白く渇いた季節』(1989年)がある。人種差別の愚かしさに気づいてしまった白人男性が苦悩し抵抗していく、今この瞬間も世界中で起こっている蛮行への<否>を誠実に描いており、長年ハリウッドの人種差別を批判してきたマーロン・ブランドにアカデミー助演男優賞ノミネートをもたらした。

また、後発に多大な影響を与えた“乗っ取られもの”の名作『SF/ボディ・スナッチャー』(1978年)や、インターネット過渡期に生まれたトンデモSF大作『ヴァイラス』(1998)など、ホラー/スリラー映画史にも楔を打ち込んできたD・サザーランド。彼は脚本に納得できなければ大作であろうと出演を断ったそうで、逆に意欲的な小規模作品にも多く出演している。もちろん、イーストウッドと再び組んだ『スペース カウボーイ』(2000年)も忘れられない。

晩年は『ハンガー・ゲーム』シリーズ(2012年~)など大作をピリリと引き締めるような役どころが多く、息子キーファーの『24』をリアルタイムで知らない若い世代にもお馴染みの存在だったD・サザーランド。彼の逝去は映像界にとって多大な損失だが、その貢献は数々の出演作によって永遠に語られるはずだ。

『戦略大作戦』&『戦略大作戦【吹替完全版】ムービープラスオリジナル』、名作を観ながら副音声で制作の裏側や知られざるトリビアを解説する「戦略大作戦◆副音声でムービー・トーク!◆」は、CS映画専門チャンネル ムービープラス「追悼:ドナルド・サザーランド」で2024年7月放送

© ディスカバリー・ジャパン株式会社