夜な夜な安眠破る爆音バイク、「うるさくて眠れない」通報は昨年比1・5倍 検問情報はSNSで「拡散!」

爆音を立てながら広島市西区の県道を走るバイクの集団(画像の一部を修整しています)

 「うるさくて眠れない」など、バイクの走行音に関する110番が広島県で増えている。空吹かしなどの大きなエンジン音が連日響き、沿線住民は困惑する。かつて暴走族問題が深刻化した同県。県警は検問などで取り締まりを強めているが、少人数での走行や交流サイト(SNS)での検問情報の拡散が摘発を難しくしている。

 ブオン、ブオン、バリバリバリバリバリ…。6月上旬の午前0時半。広島市西区観音新町の広島マリーナホップ付近からバイク7台が爆音を響かせながら県道を走り出した。約3キロ北上し、国道2号交差点で2、3台ずつに散らばっていった。

 「窓が開けられない」。県道沿いで暮らすパート男性(69)は嘆く。爆音は平日、週末を問わず、午後8時ごろから未明まで断続的に続くという。寝入りを起こされ、起きていてもテレビの音がかき消される日々に、男性は「遊びのつもりなんだろうが、とにかくうるさい」と吐き捨てるように言った。

 県警少年対策課によると、1~5月の走行音に絡む110番の受理件数は782件。昨年同期(506件)の約1・5倍に増えた。夜間に騒音の苦情や取り締まりを求める内容が目立ち、国道2号など幹線道路沿いからが多い。

 地域別では、広島市とその周辺が496件(前年同期比267件増)で最多。福山市とその周辺171件(同11件増)、呉市とその周辺106件(同5件減)などと続く。

 苦情が寄せられるバイクは2、3台程度での走行が目立つ。かつての暴走族のような組織性はなく、SNSでの呼びかけに、その日に走りたい人が集まって走るケースが多いとする。大きな音を出す一方で、信号無視など音以外で法令に違反する行為はそう多くないという。

 相次ぐ苦情を受けて県警は取り締まりを強めているが、難しい面もあるとする。「少人数だと見失いやすい。110番を受けて現場に行ってもすでにいないことも多い」と交通指導課。排気音量の測定器などを用いた検問中はSNS上で「検問してます!」「拡散!」などと場所も示した投稿が相次ぐ。投稿を見て集合場所を変えたり、走行を取りやめたりしている可能性もある。

 爆音走行を繰り返している市内の男子高校生(17)は言う。「音で目立ちたい。アクセルぶん回し。大きな道は音を出してもいいかなって」。騒音に悩む沿線住民との認識の違いが浮かぶ。県警少年対策課は「住民の平穏を脅かす爆音は、由々しき問題。徹底的に取り締まる」としている。

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