こんなのありなの? 看板ジャックに性的ポスターに「仕事放棄の記者クラブ」…”大炎上”都知事選の幕開けに都民1400万人が悲鳴

7月7日投開票の東京都知事選が6月20日告示された。今回の「首都決戦」は4年前の前回知事選(22人が出馬)を大幅に上回る過去最多の56人が立候補し、メディアの注目度も高まるばかりだ。ただ、新聞社やテレビ局の報道は「公平性」を欠き、一部の候補のみを取り上げるケースが目立つ。経済アナリストの佐藤健太氏は「選挙妨害やポスター掲示板問題、マスコミの公平性、YouTuberの突撃などを見ると、あらゆることが時代遅れになっていると言わざるを得ない」と指摘する。

マスコミのダブルスタンダードに辟易とする

毎日のように新聞やテレビのニュース、ワイドショーで都知事選が報じられているので、告示後の内容を楽しみにしていた。だが、率直に言えば「失望」を隠せない。その理由は、日頃から「政策論争を!」「公平・公正な選挙を!」などと求めているマスコミが政策分析を展開しているとは言えず、また「公平性」も欠いているように映るからだ。

告示日翌日の6月21日付朝刊を見て欲しい。読売新聞は1面トップに現職の小池百合子氏、前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏、元航空幕僚長の田母神俊雄氏、前参院議員の蓮舫氏の4人の写真を並べ、「第一声」を掲載している。

新聞・テレビの報道「これのどこが公平なのか」

朝日新聞は1面記事で「主な候補者」として小池氏、石丸氏、AIエンジニアの安野貴博氏、タレントの清水国明氏、田母神氏、蓮舫氏の6人を紹介。毎日新聞は1面トップで6人の名前を並べつつ、「第一声」の記事では小池氏と蓮舫氏のみ掲載した。

産経新聞も1面トップで扱い、「第一声」は小池、蓮舫両氏のみ。記事中で名前に触れたのは石丸氏と田母神氏を含め4人に限定し、社会面で4人の「第一声」を報じている。東京新聞は1面トップに小池氏、石丸氏、安野氏、清水氏、田母神氏、蓮舫氏の6人の写真を掲載。ただ、「第一声」は小池氏、蓮舫氏、石丸氏、田母神氏の4人に限定し、写真サイズは小池氏と蓮舫氏を大きく扱っている。日経新聞は3面記事で小池氏と蓮舫氏の動きのみを紹介している。

先に触れたが、今回の知事選には過去最多の56人が立候補した。だが、テレビのニュースやワイドショーを見ても、彼らが言うところの「主要候補」の動きしかほどんど報じられない。これのどこが「公平」なのだろう。

新聞は政策を一切分析せず

しかも、何か統一された基準があるわけでもなく、新聞社やテレビ局が独自に扱いを設定しているところにも疑問を感じる。

日頃から「政策論争を期待したい」などとマスコミは言っているので、念のため各紙の記事をチェックした。だが、読売新聞は3面記事で「第一声」に割いた内容の時間の分析、社会面で有識者の見方を掲載。朝日新聞は2面で小池氏と蓮舫氏の戦略、石丸氏や安野氏、清水氏、田母神氏の主張を並べる。

毎日新聞は2面記事で小池氏と蓮舫氏の主な政策に触れているのだが、それに対する分析があるわけではない。半分程度の文量で2人の候補と「政党との距離」が長々と書かれている。産経新聞は3面の「衰退する首都どう導く」と題した記事で少子化問題や首都直下地震対策の重要性を論じているが、こちらも「政党との距離」を大きく報じている。

東京新聞は2面に小池氏、石丸氏、安野氏、清水氏、田母神氏、蓮舫氏の「第一声」を詳しく掲載。社会面でも6人の動きを載せている。日経新聞の3面は小池氏と蓮舫氏の「政党との距離」を扱っているだけだ。

蓮舫も公平性を欠く発言…何のための記者クラブだ

こうした一連の記事は、何かと「知る権利」を掲げ、「なぜ質問に答えないのか」などと追及している記者たちによって書かれているのだろう。もちろん、17日間の選挙期間中には掲載される可能性はあるのだが、「公約発表が遅れてけしからん」「有権者が政策を見て判断できない」と言っているのであれば、政策の分析や実現可能性を早く読者に届ける必要があるのではないか。それでこそ、日頃から取材対象を追いかけるための「記者クラブ」を置く意味があるはずだ。

知事選の告示日前日にあたる6月19日には、日本記者クラブ主催の討論会が開かれた。だが、登壇したのは小池氏、石丸氏、田母神氏、蓮舫氏の4人だけ。他の候補者の参加は見られなかった。蓮舫氏が候補者同士の討論会を求めたのは良いのだが、「今日、ここで4人でやっている。1つのスタンダードができている」とも語った。率直にその点はどうなのかと思う。

もし「主要候補」側が誰を扱うのか指定してしまったら、それは公平性を欠き、恣意的に利用されかねないからだ。これからも討論会は予定されている。やはり「公平性」の担保は重視されるべきだろう。

“常識”を超える行為に、国会でも公職選挙法改正の必要性

新聞社はイデオロギー的要素がみられ、テレビ局は視聴率至上主義が抜けていないように感じる。「活動家」を思わせるような特定の立場・信条に寄り添う記者・ジャーナリストも目立つのはたしかだ。「公平性を求めるといっても、56人も紹介しきれない」という反論もあるだろう。しかし、もはや国民の多くはマスメディアだけではなく、ネットで情報をいち早く入手する時代に入っている。

新聞の紙幅や放送枠を理由にあげるのであれば、少なくともネット記事には全候補者の主張を掲載できるのではないか。最近は「ネットファースト」を掲げ、新聞掲載よりも速くネット記事をアップする社は多いはずだ。再生回数の上昇を見込み、立候補者への「突撃」を繰り返しているYouTuberやフリージャーナリストとは異なり、記者クラブに在籍する記者たちは取材機会も情報も多い。公平性をうたうのであれば、可能な限り多くの候補者をインタビュー取材し、それぞれの主張を掲載してもらいたい。

4月の衆院東京15区補選では、政治団体「つばさの党」が他候補を妨害したとして代表者らが公職選挙法違反(自由妨害)容疑で逮捕された。それまでの“常識”を超える行為で、国会でも公職選挙法改正の必要性が説かれている。

報道も法令も時代遅れであるのは間違いない

今回の知事選では政治団体「NHKから国民を守る党」から大量の立候補者がみられ、東京都内に約1万4000カ所ある選挙ポスター掲示板を“占拠”したことが話題になっている。ほぼ全裸状態の女性ポスターを貼った候補者は警視庁から都迷惑防止条例違反の疑いで警告を出されたが、掲示板の“占拠”そのものは「想定外」とはいえ、合法とされている。

今回の立候補者数は、事前に用意された48人分の掲示枠をオーバーし、東京都選挙管理委員会は候補者にアクリル板などを渡し、既設の掲示板に「継ぎ足し」する形式を採用した。だが、現在の法令で合法である以上、立候補する人がこれから100人、200人となったらどう対応するのか。公平性の観点からも「想定外」で済ませるわけにはいかなくなる。

マスメディアの公平性、「ジャーナリスト」を名乗る人物やYouTuberの“突撃”と選挙活動のあり方、選挙妨害の範囲、大勢の立候補者が届け出た場合の対応・・・。もはや報道も法令も時代遅れであるのは間違いない。

マスコミの公平性、報道しない自由に疑問

今回の都知事選によって、そうした新たな問題を整理・解決していく機会が訪れたように見える。

さて、テレビ局の政治記者によれば、今回都知事選報道について「これからも実績や知名度、各種調査結果などを総合的に判断して報じる」といい、告示後も主要候補のみをメインに報じる予定だという。ある新聞社の編集幹部も「世論(情勢)調査などの結果も踏まえながら候補者の取り扱いを決めることになる」と語る。やっぱりこの報道のあり方には「不公平」と感じる人は少なくないはずだ。

新聞社やテレビ局といったマスコミは、そうした声にどのように答えるのか。単純に候補者が多いということが理由ならば、報道のあり方を再検討したら良いだろう。あらゆる情報がスムーズに入手できるネット時代、その「公平性」に厳しい視線が送られている。

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