神戸・6歳児死亡1年 複雑な家庭環境 「姉に恋愛感情」叔父の嫉妬影響? 誕生月の6月、暴力の標的に 

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 神戸市西区の草むらで、近くに住む穂坂修ちゃん(6)の遺体がスーツケースに入った状態で見つかった事件。後に、療育手帳を持つ家族4人が、暴行を加えて死亡させた罪で起訴された。幼い命が失われ、行政の課題が浮き彫りとなった事件は、22日で発覚から1年になる。一連の経緯を関係者への取材でたどった。

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 ゴールデンウイーク谷間の昨年5月1日。6歳の命を奪った一家の虐待は、ここから激しさを増した。

 この日、一家の自宅近くに住む女性が、修ちゃんが窓から顔を出して「助けて」「部屋から出られない」と泣き叫ぶのを見つけた。

 修ちゃんが通う保育園の保育士の連絡で、西区役所の職員が駆け付け、別の部屋にいた祖母(58)に事情を聴いていると、外出していた家族4人が帰ってきた。

 修ちゃんの母、沙喜被告(35)と叔母で双子の朝美被告(31)、朝華被告(31)。そして、4カ月ほど前に同居を始め、一家の主導権を握っていた叔父の大地被告(33)だった。

 職員に対し、大地被告は「修が家族に暴力を振るうことがある」「手に負えない」と主張し、沙喜被告らも同調。話し合いの末、こども家庭センターが一時保護することでまとまった。

 だが翌日、事態が急変する。修ちゃんを連れてセンターへ向かった祖母に、大地被告から「一時保護はやめる」と連絡が入った。沙喜被告が「修と一緒にいたい」と懇願したという。

 修ちゃんの体には、4月にあざが見つかっていた。虐待が疑われる中で泣き叫ぶ姿が目撃された。家族には知的障害があり、一時保護もすぐに撤回した-。

 市はこうした事情を把握しながら、6月1日を最後に家族と接触せず、警察に連絡することもなかった。

 手をこまねく行政を横目に、一家では大地被告が暴力で家族を服従させる構図を強めていく。5月17日の自身の誕生日を祝ってもらえず「6月は地獄の月にする」と口にした。

 標的となったのが、6月2日に誕生日を迎える修ちゃんだった。その明確な理由は、「4人の供述の中でも大地被告が特に一貫性を欠く」(捜査関係者)ため、明らかになっていない。

 ただ、取り調べで沙喜被告への恋愛感情を打ち明けたことがあったという。大地被告が主導したとされる暴行について、捜査関係者の見立ては一致する。

 「沙喜被告が修ちゃんをかわいがるのを気に食わず、嫉妬していたのだろう」(井上太郎、井沢泰斗、小川 晶)

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