イワナ、ヤマメ、コロッケ、メンチカツ、ニジマス、そして温泉! 「一日で2つのキャッチ&リリース区間をはしごする釣り&グルメ旅」

川治地区キャッチ&リリース区間。魚影は濃く、大きなニジマスが悠々と泳いでいます(撮影:杉村 航)

関東甲信越もようやく梅雨入りしそうですね。長らく渇水状態が続いていた河川状況でしたが、これで少しは山々にも潤いがもたらされそうです。

2024年春に“フライフィッシング優先区”として設定された栃木県日光市の釣り場、さらにその下流にある「川治地区キャッチ&リリース区間」をはしごして、フライフィッシングとグルメ、温泉を楽しんできました。

■フライフィッシング優先! キャッチ&リリース区間

入山沢の三依地区、キャッチ&リリース区間“フライフィッシング優先区”の流れ

鬼怒川水系の上流部、男鹿(おじか)川。この春より、その支流である入山沢の一部が、キャッチ&リリース区間“フライフィッシング優先区”として設定されています。福島県との県境にほど近い、栃木県日光市の山中です。釣り場のすぐ下流は「三依(みより)渓流つり場」、途中には珍しい「三依地区テンカラ専用キャッチ&リリース区間」もあるエリアです。

道中見える五十里(いかり)湖や支流の様子からわかっていたのですが、異例の高温と小雨によって川の水はすっかり減っており、脛程度の深さの流れになっていました。

それでもキャッチ&リリース区間だけあって魚影は多く、びっくりするくらい浅い瀬からも魚が飛び出してきます。しかし、これだけ渇水していると当然魚たちは警戒心が強く、高水温と相まってなかなかフッキングにはいたりません。ときおり現れる好ポイントにもまとまった数の魚たちが潜んでいますが、そこでも簡単にはフライを咥えようとしてくれませんでした。

山深い森の中の流れですが高温のせいでしょうか、虫や鳥たちの声もあまり聞こえず、せせらぎの音さえも控えめでした。ときおり強く吹く風の音ばかりが目立ちます。魚たちに気配を悟られないよう、いつも以上に用心深くアプローチして慎重にフライを流すと、ようやく流れを割ってイワナが顔を見せてくれました。なんだか、フライフィッシングの基本的なプレゼンテーションをあらためて魚たちにチェックされているようです。途中、ヤマメらしき魚もフライ目指して飛び出してきましたが、直前で見切っているのでしょう、ついにフッキングすることはありませんでした。

■暑い日中は魚もお休み? 釣り人はグルメ旅へ

釣り場の標高は700mほどですが、昼近くになると気温がさらに上がり、木陰から離れるのが億劫になりました。当初は周辺の渓流でも釣りをするつもりでしたが、予定変更です。川から上がって、お昼を食べることにしました。

街道沿いには蕎麦屋が何軒か並んでいます。そのうちの一軒、「そばの宿 まるみの湯」へ入ってみました。注文したのは「まるみそば(税込1,100円)」です。鴨肉やきのこが入った温かいつけ汁に冷たい蕎麦をつけていただくと、出汁の旨みが汗をかいて消耗していた身体にじんわりと沁みました。

食後、五十里のほとりを下り、川治温泉に移動しました。まず訪れたのは、知る人ぞ知る名店、「坂文(さかぶん)精肉店」です。いつのまにか釣り旅がグルメ旅に変わっています(笑)。メンチカツ(税込150円)、コロッケ(税込80円)を2個ずつ購入しました。ジャガイモの値段高騰も含め、何かと物価が上がっているのに値段は上がっていませんでした。儲けはいかほどかと、他人事ながら心配になりつつも感謝して、まずはメンチカツ頬張ります。たっぷり詰まった肉の旨みとキャベツの甘みのマリアージュ! 油が染みた袋からは信じられないほどサッパリした衣の食感! 何個でも食べられそうでコワい……。

もう一つ買えばよかったかな? コロッケが好物らしい「かわじい」の前で、メンチカツを頬張る

■温泉地のキャッチ&リリース区間で良型ニジマスを狙う!

さて、本来の目的を忘れずに川治地区キャッチ&リリース区間へ。「薬師の湯」の前を流れる穏やかな流れ、温泉街の中心も釣り場になっています。上流はゴツゴツとした岸壁に囲まれた渓相へと変わり、渓流の風情となっています。

もわっと湿気を帯びた空気が川岸を包んでいます。水温を測るとかなり高く、19℃台でした。さすがにニジマスたちの反応は鈍く、なかなかフライに反応してくれません。しかし、ヤマブキ色のアルビノニジマスたちだけは活性が高く、フライをしきりに追ってきます。いざフッキングすると小ぶりなものでも引きが強く、ロッドを絞ってくれます。

徐々に日が傾いてきました。ダウンでスイングしたフライが乱暴にひったくられました! 同時にジャンプした魚は首を振りながら激しく抗います。逆回転するリールに手を添えて、走りを最小限に抑えます。直前にティペット(ハリス)を交換したばかりだったので安心してやり取りを続け、じわじわと寄せて無事にネットインしました。サイズこそ40cm少々でしたが、均整のとれたプロポーションの見事なニジマスでした。

釣りを終えたら、急いで「薬師の湯」へ。名物の河原の露天風呂は営業終了が早く、毎度のことながら今回も入れずじまいでした。内湯に浸かってさっぱりすると、夜風がまろやかで心地いいことに気がつきました。そろそろ梅雨入りしそうです。

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