「あまりのおいしさに戻って来た」観光客もリピーターに…“駿河湾の宝石”サクラエビ漁に復活の兆し【静岡発】

2018年から不漁だった駿河湾の宝石「サクラエビ」。ただ、このところは水揚げ量も増え、回復傾向にあるようだ。サクラエビ料理のおいしさに魅了されリピーターになった観光客もいる。

回復の兆し実感…サクラエビ漁

2024年4月25 日午後6時頃、84隻の船が静岡県の由比港を出発した。この日、目指したのは港から比較的近い漁場だ。

30分ほど走り魚群探知機を見ながら漁のポイントを決めると、船長の掛け声で網を海に入れていく。

「よ~し、いくぞ!」

船内に漁を始める声が響いた。

モニターに映る反応はまずまずのようだ。

網を引き揚げていくと、次々とサクラエビがケースに水揚げされていく。

神栄丸船長の石原有一郎さんに獲れた量をたずねると「箱だと40箱くらい」と返ってきた。漁協によると、この日、由比港に水揚げされたのは23トン。3月の漁解禁から5月24日までの水揚げ量は前年の春漁を上回る337トンになった。

県桜えび漁業組合の實石正則 組合長は「ここ3~4年のどん底の不漁を過ぎて、ようやく明るい兆しが見えてきた。去年春はすごく質の良いエビが獲れたが、今年も質の良いエビが獲れているので(サクラエビ)資源は回復していると思う」と確かな手応えを感じている様子だ。

不漁で漁打ち切りのピンチを経て

2018年。網をかけても獲れないという状況が続き、サクラエビの秋漁を打ち切る事態となった。そして、その後も不漁は続いた。

不漁の原因は何だったのか…。

サクラエビの調査や研究をする静岡県水産・海洋技術研究所の門奈憲弘 主任研究員は「獲りすぎや水温、海の流れ、黒潮大蛇行、いろいろな要因が複雑に絡み合っているので、どれが原因なのか特定までは難しい」と言う。

一方で水揚げ量は2020年を底に増加傾向にあり、その要因について門奈さんは「操業する船の数やサクラエビを獲る網を引く回数、引く時間を自主規制という形で制限しながらやってきたことが資源の回復傾向につながっている」と自主規制の効果を指摘する。

サクラエビが町を活気づける

2024年5月。由比港にあるサクラエビ料理を提供する店にはたくさんの人が訪れ、行列を作っていた。

水揚げ量の増加は飲食店への来客数の増加にもつながっており、取材した日はゴールデンウイーク後の平日にも関わらず、県内外からたくさんの人が訪れサクラエビ料理を堪能していた。サクラエビを食べた観光客は「甘くておいしいです」「神奈川からです。ゴールデンウイーク前に来て、その時初めてだったけど、あまりのおいしさに戻ってきた」と話す。

浜のかきあげや・スタッフ:
うちの店だけでなく、よその店も活気が違うので、市外からのお客様があちこちの店に寄って由比の町を回って見てくれれば、それがありがたいと思う

サクラエビと共に発展してきた静岡市清水区由比町。これからもサクラエビは町の誇る大切な特産品であり続けていく。

(テレビ静岡)

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