日ハム・万波中正の着用も話題 灼熱の日本「サングラスの常識」に迫る 「子どもは使用しないほうがよい」ワケも

目元に注目 ※画像は日本ハムファイターズ公式X『@FightersPR』より

6月8日のプロ野球セ・パ交流戦で、日本ハムファイターズの万波中正外野手(24)がおしゃれな丸型のサングラスを着用し、話題になった。この日は本塁打を含む3安打と大暴れした万波外野手。X(旧ツイッター)では「万波のサングラス」というワードもトレンド入りし、 ホームランを“マングラス弾”と讃える書き込みも飛び交うなど、大盛り上がりだった。

「メジャーリーグではサングラスを着用する選手も多いですが、日本のプロ野球界では、まだまだ少数派。万波選手はお父さんがコンゴ共和国出身で身長も190センチ超と外国人顔負けの抜群のスタイルで似合いますが、日本人選手に浸透しないのは似合う選手が少ないのと、照れもあるのかもしれません。個人的には、真夏のデーゲームで人工芝の照り返しに何時間もさらされるプロ野球選手の目にはサングラスが必須だと思いますが」(スポーツ紙記者)

気候変動によって異常な日差しが降り注ぎ、厳しい暑さも長く続くようになった日本では、紫外線が目に与えるダメージも深刻になってきているはずだ。

そこで弊サイトは、紫外線が人の目に与える影響について、『スマホ失明』(かんき出版)などの著書で知られる眼科医の川本晃司氏に詳しく話を聞いた。

──万波選手のサングラス姿をどのようにご覧になりましたか。

「万波選手はファッションとしての意識で着用なさっていたのかもしれませんが、ふちアリのおしゃれサングラスは体の接触を伴う激しいスポーツには向かない。私も野球部でしたが、野球は体の接触をほとんど伴わないスポーツですので、そういう競技であれば差し支えないかなとは思います」

──スポーツに適したサングラスはどのようなタイプの物があるのでしょうか。

「サイドもカバーしてくれて、下からの反射も少なくなるように設計してあるスポーツ用がお勧めです」

そう言って川本医師が取り出したのは、世界のトップアスリートが愛用するサングラスブランド『オークリー』のスポーツモデル。かけるとウルトラマンの目のように見えるタイプだ。

「このタイプですと、頬からの光の反射も抑えてくれますし、UV(紫外線)カット率も100%プロテクションですので安心です」

──サングラスを選ぶときは、形状とUV(紫外線)カット率が重要なんですね。

「商品には、よく“UV400”とか“UV420”という表記があります。前者は紫外線A波、後者は紫外線B波をカットしてくれます。両方書いてあれば、UVカット率100%プロテクションの商品ということです。先ほどお見せしたスポーツ用も、このタイプです」

──100円ショップなどの商品は、どれほど効果があるものでしょうか。

「通常、サングラスをかけることのデメリットはあまりないと思うのですが、目の前が暗くなりますので、瞳が開くんですね。これを散瞳状態と言いますが、このときにサングラスの間から入って瞳の奥に届く光が増えてくる可能性があるので、注意が必要です。100均などの商品は、レンズの色は濃いのにUVカット率はほとんどないものもありますので、これは逆効果になります」

■実は子どもには不要なサングラス

──サングラスには、UVカット以外の効果もありますか。

「光が目に入ってくるときには、単に目玉が上下左右するといったこととは “別の動き”、瞳が閉じたり開いたりするような動きが激しくなってきます。そういうときにサングラスをかけることによって、こうした動きが少し抑えられたり目の緊張もとってくれるので、目の疲れといったものも低減されると思いますね」

──それでも、日本でサングラスは、かつての不良のようなガラの良くないようなイメージもあって、なかなか浸透していないですよね。サングラスに対するイメージの転換が必要になってきますね。

「良くないイメージ以外にも、日本でサングラスの文化が根付かない理由があると思われます。それは、日本人のノンバーバル(非言語)なコミュニケーションが関係しています。つまり言葉以外でのコミュニケーションの主役が、日本では目なんですよね。欧米の方に比べて、日本人は目でコミュニケーションを取る。

“目は口ほどに物を言う”とか“目は心の窓”といった言葉も多いように、目が大きい役割を果たしている文化なんです。コロナのとき、欧米の方はすぐにマスクを外しましたよね。彼らは口元が見えないとコミュニケーションがうまくいかない。目だけでは、うまくコミュニケーションが取れない国民性があるんだろうと思われます。

その一方、私たちは口元が少々見えなくても、目でコミュニケーションを取れる。そういう能力を持った民族なんだろうと思われますね。そこに目が見えないサングラスをかけると、なかなか受け入れがたいというところがあるんじゃないかと思われます」

──子どもたちもサングラスで目を保護したほうがいいんでしょうか。

「子どもの場合、目の成長・発育にブルーライトが非常に重要だということがわかってきていまして、この成長段階でブルーライトカットのレンズは使用しないほうがいいんじゃないか、というのが一般的になってきています」

──ブルーライトは目に悪いものだと思っていました。

「そうなんですよね。一時は悪者扱いされてブルーライトカットが流行っていましたが、子どもの目の成長には大事な光なんです。ブルーといっても紫に近い色ですね。あと最近は赤色も目の成長にとっては重要なものだといった認識も出てきています。

子どもの目の成長には幅広い波長の光が必要だということですので、子どもの目の成長が落ち着く15歳から18歳ぐらいまではサングラスは積極的に使用しないほうがいいんじゃないかと考えられています」

──子どもがゲームやスマホ、タブレットなどを使用するときにはブルーライトカットのメガネを使わせていた親も多いと思うのですが、それも必要がないのでしょうか。

「そうですね。ないほうがいいです」

子どもの目の成長のためには必要はないというサングラスだが、大人の目のためには積極的に使用するのが良さそうだ。

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