言葉によって匂いの感じ方が変化 言語処理と嗅覚情報処理が連動した脳活動を観測

岡本雅子准教授、東原和成教授(共に東大大学院農学生命科学研究科)らの研究グループは、匂いを嗅ぐ際に見ている言葉によって、匂いの感じ方が変化し、嗅覚に関わる脳の活動が変化することを明らかにした。成果は4月24日付で科学誌『Human Brain Mapping』に掲載された。

ヒトは言語によって世界を認識するが、言語化によって思い込みが生じ、匂いなどの情報の認識が変化する場合があると知られている。匂いを表す言葉が嗅覚に影響を及ぼすことはいくつかの脳領域で確認されていたが、匂いの感じ方と密接に関係している一次嗅覚野は小さな領域であるため検証が難しく、一次嗅覚野における影響は明らかになってなかった。

今回の研究では、超高磁場の機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用い、従来の27倍の解像度で一次嗅覚野の活動を検証した。ある匂いに対し、その匂いの名前として違和感のない2種類の言葉を提示し、脳の活動を調べた。例えばメントールの匂いを与えた際は「ミント」または「ユーカリ」の言葉を表示した。

被験者が匂いの感じ方を主観的に評価したところ、同じ匂いでも与えられた言葉が異なると匂いの感じ方が変化することが示された。fMRIによる脳活動の解析では、言葉が異なると一次嗅覚野の活動部位が変化することが示された。さらに、言葉や記憶の処理に関わる脳領域が一次嗅覚野と連携して機能していることが確認された。

今回の研究は、ヒトの匂いの脳内情報処理機構を明らかにする手がかりになると期待される。また、研究で用いられた脳活動の解析技術は、香料がもたらす印象を予測する技術など、産業への応用につながると期待されている。

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